電気使いは今日もノリで生きる

歩海

ダンジョンの戦い、決着

???


お互いに睨み合った状態が続く。防御能力が相手の攻撃力を上回っているのならカウンター狙いになるのは至極当然の事。だから迂闊に攻撃を仕掛けようとしない。せいぜい遠距離魔法を使うだけ。クレアはそれでも問題ないのだけど僕の方は少し厳しいかな。それでも防御に重点をおけば崩される心配はない。


「これどーすんの?」
「いや、そんな事言われてもね」


緊張感のかけらもない会話が僕らの間にかかる。だってずっと睨み合って牽制し合っているからね。優れた者が戦う時に勝負は一瞬で決まるとかよく聞くしお互いに攻められないんだけどさ。


ちょっと後ろ向きな考えになるんだけど次で一気に決めるとするか。それで決まれなかったら仕方がない的な。逆に言えば次で決め切る。そのためにはどんな手段でどんな道筋で攻撃を仕掛けていけばいいんだろうか。


「『電気鎧armor第二形態Second』」
「砂鉄を身にまとった?」


考えがまとまりきっていないけどやるしかない。僕が動いたと同時にクレアも動き出す。僕の動きを見てというよりは向こうも考えがまとまったからだろうと思うけど。


「『放電thunder』」
「『火の玉』」


お互いに遠距離魔法を放っていくが今度は先ほどとは違う。僕は距離を詰めるためでクレアは距離を取るため。明らかに勝負を決めようとする動きだ。


「『metamorphose』」
「ここで?」


自分の一部どころじゃなく、体全体を全てを電気に変化させる。そして直前に放った電撃の軌道に沿って移動する・・・ってことをしようとしたんだけど。無理だった。


「何がしたかったの?」
「いやー体全部を電気にすれば超高速で動けたんじゃないかなって」
「それ無理あるだろ・・・」


ま、それは今後の訓練ってことで。それになんの考えもなしに『metamorphose』の最後の一回を使ったわけではない。もちろん体全部を・・・ってのは考えていたけどそれは賭けに負けたってことで。もう一つの方は成功したしいいかな。そう、電気に変換できるのならついでに傷を癒してしまえという暴論だ。幸い、怪我したところはそこまでひどくなかったのでこっちの方は成功した。まあ意味あるのかと言われたら・・・気持ち的にね?結構な切り札切っちゃったし。防御能力がかなり落ちちゃったしね。


「『感知feel』」
「『火の領域fire・field』」


僕はまたクレアが蜃気楼を使って幻を作って本体を見失うことがないように、クレアはおそらく反射能力の向上かな?そのための魔法を選択する。虚をつくことができたからお互いの距離はかなり縮まっている。


「『火の玉』」
「にゃ、ろ!」


またしても牽制でクレアが火の玉をこっちに放ってくるが、それは『電気鎧armor』の耐久に任せてそのまま受ける。もちろん躱すことができるのなら当然そうしたいがそんなことに意識を割きすぎてしまえばまたしても距離が離れてしまう。だから急所とか明らかに避けた方がいいと僕がとっさに判断した時だけ避けるようにしている。


「クレアの『火の玉』は何回かは受けることができるんだよ」
「そういえばそうだったね『火の領域fire・field』」


ついに近くまで接近することができたけどクレアも『領域』を使って僕を弾き飛ばそうとする。でも、それを待っていたんだ!なんのために機動力を落としてでも『電気鎧armor第二形態Second』を使ったのか。それはこの時のためだ。


「『創造creat』」
「足に砂鉄を・・・!無理やり耐えるつもりか」


足に砂鉄を集めて地面と固定する。もともと『領域』は吹き飛ばすといっても目的はあくまで魔法の無力化。吹き飛ばしはあくまでおまけ。そこまで距離が稼げるわけじゃないから地面に固定すればある程度は耐えれるのではないだろうか?と推測する。


「耐えられた・・・!」
「完全には無理だったけどね」


まったく移動しないっていうのは無理だったけどそれでも充分に許容内だ。すぐさま最接近して、拳で殴る。『領域』発動後は少しだけ隙ができるからこの拳はギリギリ届く・・・!


「ぐっ」
「入った!」


右ほほを殴ることに成功!ついでにもう一発・・・はさすがに防がれたか。対象箇所を炎に変えられて攻撃を無効化されてしまう。


「『炎の舞』」
「そんな使い方もあるのか・・・てかあっつ」


炎の渦をクレア自身の周りに展開された。そのおかげで殴っていた両手が巻き込まれてしまった。幸いやけどはしていないけど接近することができない。


「じゃあそれこそ吹き飛ばしてやるよ『電気の領域field』」
「くっ」


今度は僕が『領域』を発動させ炎の渦を吹き飛ばす。クレアは吹き飛ばなかったから打ち分けができるみたいだしやっぱり便利な魔法だよなぁ。


「もう一発!」
「させるか『炎の壁』」


今度は壁を作り防御するわけか、でもそれは遅い僕とクレアの距離が近すぎるからね。それは大して意味ないよ。


「『電気鎧armor第三形態third』」
「ここで・・・!」


電気鎧armor第三形態third』にすれば一気に機動力が向上する。それによってクレアの背後を取ることができた。回り込んだときに発生した体の回転をそのまま利用して足で蹴る。


「三回目!」
「まじかよ」


これでクレアも・・・僕と同じような魔法ならば体を炎に変換させる魔法は使えなくなった。『領域』もさっき使ったばっかりだから再使用できるまでの時間は回復していない。つまり今クレアは防御魔法がほとんど使えない状態なわけだ。


「これで、終わりだぁ!」
「『LIFE』」


僕の殴った拳に合わせるようにクレアの拳が当てられる・・・これは、青い炎?そしてそれを体にまとっている。『炎の鎧』の進化系なのだろうか。って痛っ。痛みを感じてぶつかった拳を見てみれば僕の方だけ出血している。なんで僕だけ・・・?


「『LIFE』・・この魔法は僕の命を燃やす魔法。だからミライよりも、強い想いで発動している」
「命を・・・ってまじかよ」


クレア・・・ここまでの覚悟でこの戦いに臨んでいるのか。それだと勝ったとしても寿命が・・・いや、そんなことを気にしている時点で負けだ。僕も、これからのことなんて気にしないで全力を出そう。


「想いの強さなら・・・僕だって負けてない」


電気を負傷した腕の方に少しだけ集中させて機能を低下させないようにする。クレアも僕も体術に関して言いえばほぼ互角。『電気鎧armor第三形態third』によって僕の方が身体能力がわずかに高いが一方でクレアの方が経験豊富だ。何といっても僕はまだ本格的な戦闘訓練を始めて半年も経っていない。だから今まで戦いながら生きてきたクレアにかなうはずがない。そこを無理やり身体能力向上でカバーしているにすぎない。


お互いに殴り、蹴る。互角の戦いが続く。接近戦闘なら僕の方に分があると思っていたけどクレアも『炎の鎧』とかで身体能力を向上させることができるのならば条件は全く変わる。まあ僕も遠距離魔法を幾つか習得したし当然といえば当然か。


どれぐらい殴り合っていたのだろうか?わからないけどお互いに動きが鈍くなることもなく戦いが続いている。僕の方は常に全開を維持できる魔法だけどクレアの方はどうなんだろう?命を燃やしているって言っていたしアドレナリン?がかなり放出されているから平気だったりするのかな?どのみちこれなら僕の方が有利だ。どんな人間だって疲れないはずがない。その疲れさえ消すことができる僕の方が有利だ


「とっりゃあ!」
「にゃっろ」


それぞれの拳がそれぞれの顔面に命中して互いに吹き飛ぶ。久しぶりに距離が生まれた気がするな。・・・!


「『魂の火剣fire・soul』」
「やばっ!『電気の領域field』」


至近距離での攻撃でもそれは僕の『領域』によって弾かれる。


「その魔法を選んだことは失敗だね!」


魂の火剣fire・soul』は使えばしばらくの間他の火魔法が使えなくなるという。だから今のクレアは無防備だ。僕の拳を防ぐことなんて、できるはずがない!疲れで判断力が鈍ったな。


「僕の勝ちだ!」
「まだ決めつけるのは早いよ『火の領域fire・field』」
「な!」


なんで、なんで発動できるんだ。完全に予想外だったクレアの『領域』によって今度こそ吹き飛ばされてしまう。


「『LIFE』使用中は『魂の火剣fire・soul』のデメリットである他の魔法使用不可もなくなる。また、『領域』も連続使用が可能になった!」
「まじかよ」


命を燃やした炎を使っているから平気なのだろうか。てかこの状況僕もやばいな。『領域』をとっさに使ってしまったから防御手段がない。でも連続で『魂の火剣fire・soul』を使われたら・・・いやギリギリ大丈夫かな?


「『全力full・魂の火剣《fire・soul』」
「そっちか!」


クレアの全力魔法。全てを注ぎ込んだ魔法。まさか命も全て注ぎ込んでるわけじゃないだろうな?


「心配しなくても『LIFE』は解除したよ・・・だからこれが僕の最後の魔法だ!」
「ならば・・・僕も最後だね『全力放電burst』」


きっと一度避けてから攻撃をすれば僕は勝つことができるだろう。全力の魔法だからクレアはもう魔法を使うことができない。だから電気をまとった僕の攻撃を防ぐことができないだろうし。でも、でも、それじゃあ意味がないよな!そんな形で勝ったとしても僕は全くもって嬉しくない。僕も全力を出してクレアに勝ったと言いたい


僕の全てを注ぎ込んだ電気とクレアが全てを注ぎ込んだ炎の剣がぶつかり合う。これに、勝った方がこの戦いの勝者だ。今までの流れなんて関係ない。最終的に立っていた方が勝者だ


「うおおおおおおおおおお!」
「負けるかあああああああ!」


互いに死力を尽くしあい戦った。お互いの実力はほぼ互角。戦闘経験はクレアの方が上だが、魔法の応用性は美頼の方が上。だからなかなか決着がつくことがなかったがどんな戦いにも決着は必ず訪れる。二人の全てをこめた一撃は拮抗していたが片方がもう片方を上回りそして・・・










目の前を見てみれば二人が向き合うように立っている。お互いに魔力を全て出し合ったのだ。そして・・・片方が地面に倒れこむ。最後に立っていたのは一人。それが勝者なのだろう


『おめでとう。あなたたちの戦いしっかり見させてもらったわ。じゃああなたが私と契約するのね






                                 クレア』

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