電気使いは今日もノリで生きる

歩海

先輩たちがくれたもの

???


「これは・・?」


落ちたものを見てみる。それは、見覚えのあるもの。このダンジョンに入ってから見たものじゃない。このダンジョンに入る前にシェミン先輩から渡されたもの、謎の薬だった。なんでこれが今僕の手元にあるんだ?確かユンさんに取り上げられたはずなんだけどなんで今ここにあるんだ?


「それはなに?」
「ああ、シェミン先輩からもらった物だ緊急回復薬だって・・・!」
「それは・・・!」


そういえばユンさんはこの薬について知っていたみたいだし当然効果も把握しているはず。つまりここにあるということは僕に”使え”と言っているっていうことか?


「来るよ!」
「くっ」


もう時間がない。よくわからないけどあるのなら使わせてもらおう。そういえば最初に見た時には2個あったはずなんだけど僕の手元には一つのみ。もう一個どこに行った?まあいいか。とりあえず薬を口に含み、そのまま飲み込む。


「うっぐう」


結構ギリギリだった・・・。あれ結構大きかったもんな。危うく喉に詰まらせて死んでしまうところだったよ。


「あ・・・う、ぐ、ぐう・・・」


飲み込んだ瞬間から体が熱くなった。焼けるように熱い。よく漫画とかアニメとかでよく聞く言葉だけどイメージできなくて「そんなことあるのか」って思っていたけどまさしくこれだよ。幸いというべきか痛みはあんまり感じない。どれだけの時間苦しんでいたのかわからないーでもそんなに長くなかったと思う。クイーンの攻撃が来なかったしーけれどついにその苦しみが無くなった。


「はあ・・・はあ・・・」


なんだったんだ?疑問に思いながらもこちらに向かってくるクイーンをみる。クレアが先に足止めに向かって行ってくれたようで火の玉を出して応戦してくれている。僕も一緒に戦わないとね。あ、クイーンがまた酸を吐いた。クレアはそれに気がついていない。


「『放電thunder』」


両手・・を使って電撃を放ち酸を吹き飛ばす・・・ちょっと待て。今僕両手使わなかったか?自分の腕を見てみると確かに腕が生えていた。ん?生えていたって表現であっているのかな。ドラゴンに喰われる前の状態に戻っているって行ったほうが正しいのかもしれないけど・・・てかシェミン先輩すげー。こんな回復薬作れるのか。


「なにやってるのミライ!手伝って・・・く、れ?」


あ、クレアを助けに行かないと。そしてそのクレアだけど僕のほうを向いて固まってしまっている。おいおいそんなんじゃ後ろから攻撃を受けてしまうぞ・・・あ、『領域』で弾いた


「ミライ・・・う、腕・・」
「あー何か生えてきた」
「なんで?」
「シェミン先輩の薬」
「あの人そんなの作れるのかよ・・」


うん、それは僕も考えていた。一体あの人何者なんだろう。謎が深まるばかりだ。失われた人の体の一部を蘇らせるってかなりやばいよな。でも今はそれがありがたい。


「『電気の領域field』」


全開の『領域』で一旦クイーンを吹き飛ばし体勢を整える。さて、これからどうするか・・・


「そっか、すごいな」
「え?どういうこと?」


いきなり意味深なことを言わないでくれ。僕は今何が何やらよくわかっていないんだ


「ユンさんの行動だよ。あの人、僕らに生きる道を与えてくれているんだ」
「え?・・・あ!」


そっか。そういうことか。このまま進んでいけばいつかユンさんたちは僕らを殺さなければならなかった。だから僕らを生き延びらせるにはどこかのタイミングで僕らを手放す必要があった。今まではまだ先があるから慎重に考えて一緒に行動していたけど・・・


「それってことはイフリートの仕業ってことか?」
「少なくともそれを予測していたよね」


だから今回の階層だけ最初に扉が開いていて先に進むことができるようになっていた。どうりでそれを見た瞬間ユンさんがドヤ顔をしたんだよ「お前先輩に容赦ねえな」だってそういう顔に見えたんだもん仕方ないよ


「ま、久々に聞いたなミライの神をも恐れぬ物言い」
「人を不遜みたいに言わないでくれよ」
「だってそうでしょ」
「えぇ・・・」


なんて言われようだよ。ま、推理の続きを考えよう。そして僕らだけを残して先に行く。しかもうまい具合に囮に使って。これでユンさんたちは僕たちを最大限に使った・・・・・・・ことになる。国から追及されたとしてもなんとでも言い訳が立つ。そしてこそっと僕に緊急回復薬を、多分効果を知っていたであろうシェミン先輩の回復薬を僕に渡して。これによって僕は腕が回復し・・・おまけに魔力も回復しているっぽいな。つまりほぼ全快に近い状態になった。これでクイーンを倒せとそう言っているんだ


「先輩たちがくれたチャンス、ちゃんと生かさないとね」
「そうだね。じゃ、ミライ作戦どうする?」
「あー・・・同じでいいよ」
「いいの?」


まあせっかく腕が戻ったから使ってみたいって気持ちもあるけどさ、それよりも倒すほうが先決。それに両腕があればしっかりと戦うことができるはずだ。例えば・・・


「『電気鎧armor第三形態third』」


またしても高く飛ぶ。そして・・・「『放電thunder』」うん、両手があることによってブレがほとんどないし威力もさっきよりも向上している。


「ギチギチィ」
「さっきとは大違いでしょ」


空中においてもちゃんとバランスをとることができる。そしてそのまま落下していく。あ、こいつの足が一本振り下ろされそうにしているんだけど、このままではかわせない


「『炎の舞』」
「ナイス!」


あえて攻撃するのではなく僕を守るような魔法を選択する。それによってクイーンは驚いて後ろにさがる。


「『電気の領域field』からの『創造creat』」


距離ができたことをいいことに僕は砂鉄を集めてクイーンに振りかける。クレアならきっと理解してくれるはず


「『放電thunder』」


またしても酸を吐きかけようとしていたのでそれは電撃で相殺する。


「『火の玉』!」


やっぱりクレアならわかってくれた。粉塵爆発が巻き起こりクイーンを吹き飛ばす。お、さっきのクレアの『炎の舞』が効いているのか足が一本だけちょっと黒焦げになっていないか?


「キシャアアア」
「まじか」


脱皮?というのかな急に皮を剥ぎ取りそしてその下からダメージを負っていない状態のものが現れるいや脱皮とか蛇かよ


「単にダメージを与えたことで再生したんだと思う」
「あっそっか」


言われてみたらそうだな。でもさっきのでかなりダメージを与えたはずだから・・・押し切るぞ


「もう一度粉塵爆発するか?」
「うーん、難しそう」
「おっけ。じゃあ・・・クレアが作戦考えてくれ、僕今不調だから」


なんかユンさんの策に乗っているだけのがすんごい楽だったな。自分で考えようとしても思うように浮かばないしそれにさっきから他の人間の考えがまったくわからないいわゆる知能が落ちている状態だからな。この状態で指揮官を与えられても多分無理だ。クレアに任そう


「おっけ。こいつには多分長期戦だと厳しいから短期決戦だ」
「了解」


さあ、一気に決着をつけるとしますかね。てかこのクイーン薄々感じていたんだけど弱くないか?さっきのドラゴンのほうが強かったと思うんだけどね

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