電気使いは今日もノリで生きる

歩海

束の間の休息

???


「ミライ!おい、ミライ!」
「あ・・・う、うぅ」


頭が痛い・・・それに体がかなり重い。てか動かん。この声は・・・クレア?


「起きた!よかった〜目を覚ました」
「クレア?ここは・・・」


体を起こそうにも力が出ない・・・そうだ!龍!『流星』、あれからどうなった?てかどれだけ時間が経過したっていうんだ?


「落ち着け、無事に倒したよ。今は先に進む前に少しの間の休息」
「そっか」
「それからミライは丸1日寝てたよ。そしてもうすぐ夜つまりはダンジョン二日目の夜だ」


なるほどね。まだ1日経っていなかったのか。そういえば夜とかなかった気がするな。記憶が飛んでいるのかそこらへんが曖昧だけど。もう何日も戦っているような気分だよ。てかクレア、僕まともに体が動かないんだけど、これまた魔力切れの反動?


「それもあるけど、てかミライ『電気鎧armor第三形態third』使いすぎ。体もボロボロで死ぬところだったんだよ?」
「そっか」
「クレアさんも変わりませんけどね。なんですか自分の生命力をあんなに使用するなんて・・・あなたたちはここに死にに来てるのですか?」


あ、ユリさんだ。二人の表情を見る限りでは特に酷い怪我を負った人とか最悪、死んでしまった人とかいないみたいだ。ひとまずよかった。身近な人間が死んでしまうのは悲しいから。てかクレアも人のこと言えないのかよ。お前も相当無茶したんだな


「それはミライにだけは一番言われたくないな」
「なんだよそれ」
「ふふっ」
「はははっ」


二人で笑いあう。とにかく窮地をしのぎ切ったんだ。今はその喜びに浸ろう。このあとまだ先があることはひとまず置いといて、だ。


「おう、お前らも目が覚めたか。これで全員だな。ユリ、いつごろ出発できる?」
「そうですね・・・出発できるまで回復するのはまあ今すぐにでもできますが、安全をとって一晩ゆっくりしたほうがいいと思います。特にこの先も同じような敵が現れるなら万全を取るべきかと」
「それもそうだな、というわけだ。クレア具材の調理を手伝ってくれミライは」
「まだ、無理です」
「わかった。まっとけ」


そんな、僕も手伝います「動かない体でされても迷惑です」はい。『電気鎧armor第三形態third』を使えばきっともう大丈夫だと思うのですけど


「そんなことをすればあなたの体は死にますよ」
「え?」


なんかかなり衝撃的なことを言われたんですけど。え?僕死ぬの?まだ17・・・いや18?わからないけどとにかくまだ二十歳になっていないのに?お酒も飲んでいないのに?ついでに彼女も一人もできずに


「あなたが気を失っている間に調べさせてもらったのですがあなたの体は度重なる無茶によってボロボロです。特に細胞」
「ああ・・」


確か細胞って分裂回数が決まっているんだっけ?で、それができなくなると死んでしまう?僕は生物選択じゃないから詳しくは習っていないんだよな。体を無理やり動かしたツケってことか。1日にあれだけ死にかけたのだから仕方がないと言われれば仕方がないけどさ。


「まあ一度しっかり休めばある程度は持ち直します。まあそれでも酷使すれば死期が早まるのは否めなませんが」
「応急措置ってことですか?」
「いえ、要は使えば反動で確実に死ぬ状態から脱するだけです」


それだけ僕の体が酷い状態であるということか。


「その魔法はおそらくですが体にダメージを負えば負うほど使用時の負担が大きいのでしょう。負傷した組織を健全な状態と同じように使っていますので」
「だから一旦体を休めるようにと」
「ええ、幸い私がいますのでもうしばらくすれば完全に回復することができますよ。ただ、それでも失われた細胞は無理ですが」
「いえ、大丈夫です」


言われてみれば僕は『電気鎧armor第三形態third』をずっと使い続けていたように思う。反動が痛いからそれをなくすためにもう一度使用して・・・ってのを繰り返していたように思う。まるで麻薬中毒者じゃないか。運がいいな。死ぬ前に気がつくことができて。


「おーい、できたぞ!ミライは体を起こせそうか?」
「まあなんとか」


まだ重たくて思うように動かすことができないけどまだなんとかなる。どれだけ気を失っていたのかわからないけどユリさんが回復をずっとしていてくれたのかな


「まったく、あなたたちのおかげで私はほとんど魔力を回復していないんですからね」
「それは・・すみません」
「クレアさんもですよ。それに、ツキ、ヤマトさんあなたたちも」
「面目無い」
「それはすまなかったな」


なんだよ。みんな似た者同士だったのか。「「「「それはミライだけには言われたくない」」」」みんなしてひどくないですか?


「まあまあ、これもみんな生きているからこそこうして軽口が言えるわけだしさ」
「ハルさん」
「は〜まったく憂鬱だよ。今年こそは優勝したかったのにこんな手強いのがいるなんてな」
「生きていれば、の話ですけどね」
「でも君たち普通に生きてそうで怖いんだよね」
「ははは」


笑ってごまかすしかない。てか僕とクレアの生き残る道がもうほぼないんですけど。これどうするの?


「ま、それはその時だ。俺たちがこいつを殺すのは変わりないが、それまでは戦友だ。いや、殺す時も戦友だな」
「ユンさんそれ笑えないです」
「事実だからな」
「はい」


でもそれはつまり、最期まで僕たちを戦友として扱ってくれるってことの裏返しだよね。なんやかんやでユンさんって優しいな


「さて、一息ついたしみんな寝ろ」
「警護とかしなくてもいいんですか?」
「あーまあそうだな。一応しておくか三人交代で大丈夫かな?まずは女子三人頼む」
「了解です」


さっきまで僕寝てたから大丈夫だけど・・・やっぱり疲れなんて1日では取れなかったみたいだな。ユリさんのおかげで大分回復したのだろうけどそれでもまだまだ厳しいな。


だからだろう。僕はまたしても気を失うようにしてすぐに眠ってしまった。次に気がついたときにはもうすでに朝日が昇っていた


「え?」
「おー起きたかミライおはよう」
「おはようございますってあの、見張りは・・・」
「大丈夫大丈夫心配すんなって」


いや心配するなって言われましてもね「ダメだよミライ。どうやらこの人たち僕とミライとハルさんの学生組を起こさずに見張りをやりきったみたいだから」ええ、なんで起こしてくれなかったんだよ


「お前ら慣れてないだろ?これは年上の意地だよ。気にすんな。若いもんはありがたく受け取っとけ。その分しっかり働いてもらうからな」
「はい!ありがとうございます」


ユンさんたちの好意を無下にするわけにはいかない。おかげさまで体がかなり完全に近い状態で回復しているし。次の階層も頑張ろう!


「よし、飯食えーそして食べ終えたら・・・出発だ!」
「はい!」


さあて、残すところあと階層は二つ!精一杯頑張るか

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