電気使いは今日もノリで生きる

歩海

ダンジョンでの戦い方

???


「敵は何体?」
「ちょっと集団になってるね・・・最弱のが4、その一個上が2、んでおそらく最上級のが1」


何回か敵と戦闘してわかったのが敵の強さはおおよそ3段階に分けられる。一番弱いのは10体ぐらいまでなら圧倒できるくらい、真ん中の強さのやつなら一人1体ならなんとか勝てる。そして最も強い個体は二人掛かりで戦ったとしても勝つのが厳しい。一度一体だからものは試しとして戦ってみたはいいけど危うく死にかけたんだよな。あの時は休憩場所の近くでいつでも逃げ込めるようにしたからなんとかなったんだけどね


もっと種類がいるのかと思ったけどそうでもなかったな。まあこれから階層が進んでいくにつれてもっと多様化していく感じなのかな。最後に力を注ぎすぎた可能性がある「それは僕も思った」あんまり言葉に出していくとイフリートにどやされそうだからここら辺で自重しておこう


「どうする?」
「まあ・・・逃げが安定かな?」


僕もクレアに賛成だな、このまま戦っても勝ち目なんてないし安全地帯までまだ距離がある。このまま突っ込むのはさすがに危険だ。


「よし、逃げるか」
「そうだ・・・まって!」
「!」


危ない。クレアの声がなかったら多分今の避けることができなかったよ。向こうに僕らの存在を知られてしまったみたいだ。クレアの感知もそこまで万能じゃなくてある程度近くまで寄る必要があるから当然向こうにも気付かれる可能性がある。まあ奇襲を受けないという一点においてかなりありがたいことだと思うけどね


「後退しよう、クレア安全地帯までの道のりは?」
「わかるけどただ走るのはちょっときついな」
「攻撃しながら撤退だね『放電thunder』」


遠距離攻撃を行って距離を詰められないように動こう。後ろ向きの移動と前方向への移動だと後者が圧倒的に移動速度が速いけれども背中ががら空きになるよりはマシだ


「『炎の壁』」


クレアが通路を塞ぐように炎の壁を出現させる。普通なら怯んだりするところだけどさすがというべきか


「やっぱり目くらましにもならないか」
「やべえな」


手にした刀で炎を切り裂いてくる。クレア曰く出現している炎は炎そのものであるのでめちゃくちゃ速い速度で刀を振って風を巻き起こしたりすれば普通に消えるのだとか。多分切った影響であの辺りが一時的に真空になっているから火が消えるのだと思うけどね。つまり敵の強さは僕らの今の魔法では足止めがほとんど不可能であることがわかる。


「とにかく数を減らさないとね」
「そうだね・・・!」


弓をもったスケルトンが矢を射ってくる。最弱のだけだと考えなしに突っ込んできたりするんだけど群れているとそれなりの知性を持つみたいだ


「ミライ!10秒だけ敵を足止めするから『火の領域fire・field』」
「わかった!」


クレアが『領域』を使って矢をすべて吹き飛ばしてくれる。10秒だけと制限がつくのはここがダンジョン、つまり精霊イフリートの領域であるみたいだから僕ら程度の実力では上塗りで自分の『領域』を組み立てることができない。たとえ発動したとしてもすぐに解除されてしまう


今みたいに敵が複数いる時にはまずは数を減らすことを考える。数が多すぎるとその分死角からの攻撃が増える可能性が高まっていく。集中砲火を受けると一体だけに集中するわけにもいかないからどこかで集中力が切れて攻撃が当たってしまう。だからまずは数を減らしてダメージソースを明確にしていく


「『電気鎧armor第3形態third』」


今は出し惜しみなんてしていられない。足を強化して一気に相手の懐に潜り込む。強いスケルトンのところに突っ込むなんて無謀もいいところだけど大丈夫、クレアが10秒持たせるといったからには絶対に大丈夫だ。


「『炎の舞』」


ほら、最弱の個体を除く三体を渦で閉じ込めた。一応『領域』が発動しているから出せる渦の数も増えるみたいだ。で、もちろん僕はこの隙を逃すわけにはいかない


「『放電thunder』」


両手から電気を放出させ、スケルトンたちを屠っていく。薄々気がついていたけどダンジョン内の地面ってなんか特殊な材質をしているというか魔法による干渉を受けないというかとにかく僕の『領域』や『創造creat』を使っても砂鉄を引きずり出すことができない。僕の使える魔法は一部制限されている状態だ。今この時だって『爆発dynamite』が使えればもっと安全に行動することだってできたはずなのに。


無い物ねだりをしても仕方がない。『電気鎧armor第3形態third』でさらに足の筋肉を強化して無理やり体を回転させていく。こうすることで連続的にスケルトンに電撃を浴びせることができる。この間ずっと放電を続けなければいけないけど、細かい敵の位置なんて把握できないしこうして吹き飛ばそう


クレアが宣言した10秒以内になんとか目的は達成することができた。で、問題は今僕は敵のど真ん中にいるわけなんだけど・・・


「ナイス、ミライ!『火の玉』」
「うわっ」


おい、もう少しましな手段はなかったのかよ。まあ結果的に助かったから良かったけどさ。クレアが僕にしたことは純粋にクレアが作り出した火の玉を僕の近くで・・・・・ぶつけてその爆風で僕をクレアのところまで飛ばすというものだ。確かに『電気鎧armor』の効果で多少は頑丈になっているけどそれでもダメージは負うんだからね。


それでもまだ僕はクレアのところまで到着していない。あくまで敵の中心から脱出することができただけだ。あまりにも強い爆風を起こしてしまうと僕がダメージを受けすぎて次の攻撃に移れない可能性があるからあんまり強くできなかったみたいだ


「『放電thunder』」


反動で足は動かないー爆風から身を守るために一時的に『第3形態third』から通常の『電気鎧armor』に変更していたからその反動がきているのだ、これもまた『第3形態third』の弱点とも言える、全体を強化しようとすると凄まじい反動がくるので一部しかできずそのために他の場所が手薄になってしまうのだーから地面に電気を放出してその反動を利用して少しでも距離を稼ぐ。


「『火剣乱舞』」


クレアの援護もあってなんとかクレアの元までたどり着くことができた「『電気鎧armor第3形態third』」そしてすぐさま魔法を発動させる。動かない足を動かすためにはこうして魔法を重ねがけるしかない。なんだか危ない薬みたいだけど(実際似てる)動けない足を動かすためにその原因の魔法を使うってね


「動けるかい?」
「多分ね・・・でもこれで解除ができなくなった、く『放電thunder』」
「それはやばいな、『火の玉』」


スケルトンたちが接近しようときているから牽制の魔法を放つ。でも、大分近づかれてしまった。もう5メートルぐらいしかない。解除すればその分の反動が襲ってくるから、てか休憩を挟まずに連続して使うの初めてだからどうなるのか全くわからないんだけど、どうなるんだろう


「僕もさっきので魔力を使いすぎた・・・こうしてミライと交互に牽制を放つのも限界が近づいてきている」
「まじかよ」


そもそも僕らは完全に回復している状態で戦いを始めたわけではないし魔力が切れてしまうのもしょうがない。いくら回復が早いといってもそれはそれで限りというものがある


「・・・」


絶体絶命のピンチではあるけれども、僕は一つだけこの状況から脱出できる方法を知っている。でも、それは決してしてはいけない・・・・・・・・・・方法だ。だから考えよう、どうすればいいのかを


「ミライ」
「なに?まさかもうおしまいか?まだできるだろ?っと『電気の領域field』」


牽制を放つのはいいんだけどあいつら弓と矢を拾ってそれで攻撃をしてきやがった。さすがにそれを電撃や火の玉で迎撃はできないからね『領域』でなんとかするしかない。さすがに3つの魔法を同時に使おうとすると魔力消費が凄まじいな。クレアが限界を感じるのもうなづける


「ああ、まだできる・・・でも多分、このままだと持たない」
「持たないじゃなくて持たせるんだろ?ほら、しっかり足を動かそうよ」


否定的なことはあんまり口に出さないでほしいな士気が下がるし、言霊って言われるし言葉には力があるんだからね


「でも計算したけど安全地帯にたどり着くまでにきっとスケルトンに追いつかれる。それに今の残り魔力量から考えてこのペースでの牽制はあと1分が限度だ。そしてそれが終われば、あいつらはすぐに近づいてくる」
「1分あるからその間に考えない?」


多分、クレアも気がついたんだろう、だからこうして正論を重ねていく、その選択を僕が選びやすいように


「だからさ・・・」
「クレア!」


だから、決してそれを言わせない。二人で・・・逃げなければ意味がないから


「僕が囮になるからミライ、君一人で逃げて、君なら・・・そのまま『電気鎧armor第3形態third』を使い続ければきっと逃げられるから」

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