電気使いは今日もノリで生きる

歩海

テント組み立て開始

水無月5周目風曜日


「「ごちそうさまでした」」
「うん、お粗末さまでした」


食事を終えてゆっくりする。リンナ先輩が見張りの準備をしている間ゆっくりさせていただくことになった。そういえば昼間のうちに一ノ瀬の話題が出てから気になっていたことがあるから今のうちに聞いておこう


「そういえばさ」
「なに?」
「一ノ瀬との再戦っていつ頃あるの?」


あれ一応戦いの最中に『黒龍』が乱入してきたから一時中断という扱いになっているんだよね。つまりいつか再開試合が組まれることになるということ。いつ組まれるのかわからないけど組まれた時に出れなかったら僕失格になるんじゃないかな?


「うーん、わからないなぁ。リンナ先輩の方が詳しいんじゃないか?」
「それもそうか」


あとで聞いてみるか。まあどうせ一週間ぐらいだろうから土曜日とみたらいいのかな・・・ん?


「まって今何曜日だったっけ?」
「は?風だろ。なに言ってるんだ」


土曜日って明日じゃないか。うっわ。最悪。こんな展開ありかよ。いや、まだだ。まだ希望がある。日曜日の可能性もあるじゃないか。この夜のうちに事件解決して明日帰って明後日試合。かなり過密なスケジュールになることになるけどきっと大丈夫。なんとかなるはずだ。一ノ瀬がめちゃくちゃ強くなっていない限り次の試合も絶対に勝てる


「どうしたの?ミライくん百面相なんてして」
「あ、先輩少し聞きたいことがあるのですが」


去年同じように中断という事態になったのかはわからないけど聞いてみる。まあ去年なくても一昨年にシオン先輩が絶対にやらかしてくれているはずなのでその例が残っているはずだろう


「あー多分日曜日には次の試合が控えてあるはずだから多分土曜日なんじゃない?」
「まじですか」


終わった。まさかの試合放棄で負けることになるなんて予想していなかったよ。負けるとしたらクレアか天衣あたりだと思っていたのにまさか一ノ瀬に・・・イケメンに負けたことになるなんて


「でもなんで気にするの?ミライくん確かもう敗退したはずよね?」
「え?」
「違うの?てっきりそうかと思ってた」


なんで?そうなっているんだ?え?まってこれどういうこと?


「イチノセくんをボコボコにしすぎて注意されて判定負けって聞いたけど?クスノキくんのときもやらかしたからそれを踏まえて負けたって噂聞いたけど?」
「負けてません。確かにボコボコにはする予定だったけど!その前に『黒龍』が来たんですよ」
「ちょっと待って。ボコる前提?」
「ええ、まあ」
「失格になって当然よね」


なんてことをいうんですか。さすがの僕でも傷つきますよ「ここまで綺麗なブーメランは見たことない」イケメンを撲滅することは一定の支持は得られると思うんだけどな


「お前みたいなやつしかこねえよ」
「僕みたいなのがたくさんいるわけないだろ」
「それもそうだな!」
「納得するなぁ」
「そこで即突っ込むあたりどこで同意したかよくわかっているじゃないか」


こんのやろう。完全におちょくってやがる。大体が事実だからなにも反論できないと思い込んでやがる。いつか絶対に下剋上してやる


「それ今は負けてるって宣言してるものじゃない」
「あ・・・」
「大丈夫か?」
「大丈夫だよ!それにもう新人戦は諦めました!」
「それは・・・ごめんなさい。終わったから連れてきても問題ないかと思ってた」
「一応配慮してくれたんですね」


もう少しリサーチとか頑張って欲しかったなぁ。もういいけどさ。そりゃ勝ちたくないのかといえば嘘になるけどもう過ぎたことだしうじうじするのもアレだしね。それに今ぐちぐち言っているけど帰ったら実はまだ試合組まれていませんでしたーっていう展開とか割とありそうだしね。


「よし、じゃあ向かいましょ」
「そうですね」


リンナ先輩の後について森の方へ向かう。明かりとか全くないからよく見えないなぁ。月が出ていればもう少し見えるのだろうけど全く夜目が利かない。


「感知魔法使いたいなぁ」
「気持ちはわかるけど今は余計な魔力を使わないでね」
「それもそうですね」


というか使ったところで障害物を避けることができるのかっていえば全くできないからな。感知できるのって一応人間だけ?かな。電気を発しているものならばわかるけどそれが何かなんてわからないし。動物やモンスターの細かい違いなんて覚えていられるか!感知魔法の使い手たちはこの問題をどうやって克服して行ったんだろう。


「そこらへん適当だと思うよ。僕のも似たようなものだし」
「そういうものなのかな」


もう少し進化させたいなぁ。まあこれ要は僕が動物たちの電気信号を覚えてしまえばいいだけなんだろうけどな。記憶力がそんなにいい方ではないからなぁ


「ここら辺でいいかしら?テントを張るわ。あなたたち手伝って」
「わかりました・・・ミライ?」


いやね、返事したいのは山々だよ?でもさ、すごく申し訳ない話になるんだけど


「一度もキャンプしたことがないのでわからないです」
「そうなの・・・」
「あ!『!火《fire》』」


急に声をあげるから何事かと思ったら宙に火の玉が浮かんでいる。なんか怖い・・・って!


「早く気づいて!」
「ごめん今気がついた」


火っていう闇に強いスキル持っているのに・・・ここで使わなかったらほんと宝の持ち腐れだったぞ。


「まあゆっくりするつもりだったしミライくんに教えながら組み立てましょうか」
「すみません」


リンナ先輩に色々とアドバイスをもらいながら組み立て作業を始める。テントってこういう風に組み立てるんだなぁ。まあそんな経験なんてないから知らなくても当然だよね。クラスメートの中には長期休暇中に家族と旅行に行ったー!っていうキラキラした生活を送っていてこういう知識を持っているやつもいるけど生憎僕はそんなにウェイウェイしているような人ではない。


「悲しい生活を送ってたんだな」
「ん?ミライくん記憶がないんじゃなかった?」
「「あ」」


やっべそんな設定にしてたっけ。気を抜きすぎて気がつかなかった


「なんかちょいちょい怪しいとは思っていたけどもしかして・・・」


これはバレたな。できれば隠しておきたかったけど半ば自分から話してしまったようなものだししょうがないな


「まあその、いわゆる転移者です」
「やっぱりね。その異常なまでの魔力と妙に欠落してる知識。はあということはイチノセくんとかクスノキくんも」
「あまり言わないで欲しいですけど」
「そうね。まあ予測している人もいるでしょうしシオン先輩を始めなんであの人たちが絡むのかと思ったら・・・いや、違うわねごめんなさい。あなたたちだから絡んだそれだけね」
「あ、クレアは違いますよ」
「まあそうでしょうね二人の髪の毛とか違いすぎるもの」


それもそうですよねー。誰もつっこんでくれないけど黒髪って結構人目をひくからね。よく今まで噂にならなかったなとは思うけど


「それは・・・ね?」
「ミライ、今は組み立てに集中しよう」


お前らのその反応でわかったよ。どうせ悪い噂だけが先行して流れていたから転移者の方向は何も言われなかったっていうんだろ。僕の評判ぐらいはわかっているつもりだったけどそこまでとは


「本音をいえばイチノセくんとかは疑っていたけどミライくんは完全に予想外だったわ」
「そうなんですね」


次があるなら・・ってないけど、あるならもう少し評判に気をつけよ・・・ん?別にいいか。いいカモフラージュになるし


「「そういう性格が問題なんだろ(なのよ)」」


はい、すみません

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