電気使いは今日もノリで生きる

歩海

先輩たちの評価

水無月5周目風曜日


「そろそろ日も暮れるし今日は終わろうか」


あ、もうこんな時間か。ずっと集中していたから時間の感覚がなくなっていたよ。というかリンナ先輩が休憩の声をかけてくれないとずっとぶっ通しで魔法を使い続けていたしな


「なにも収穫がありませんでしたね」
「このあたりは誰もいないと思います」
「ミライ途中からずっと走り回っていたもんね」


まあ、クレアの魔法で少しインスピレーションを得たからそれを実践したかったっていうのもあるんだけどね。それに場所を移動しないとこの森全体を網羅することなんて出来そうにないし。というか出来なかったし。広すぎるんだけど『電気鎧armor』を使って足の負荷を軽減させてても結構きつい。魔力が切れるまでずっと走り続けようかと思ったけど途中でなんかヤバそうな生物がいたから引き返してきた。なにあの超巨大スライムは。景色に擬態していて気がつかなかったからかなり危なかった。近くにいたゴブリンが喰われなかったら僕が喰われていたよ


「この森も結構きついモンスター多いからね。喰われなくてよかったよ」
「せめて先に情報を教えてほしかったです」
「だってそこそこ奥に行かないと出くわさないし・・・ってなに倒れてるのよ。魔力の使いすぎね」
「違いますよ。はあ、ミライまた無茶したろ」
「はいすみません」


電気鎧armor第三形態third』を使って走りました。結果としていま足が限界を迎えております。ある程度制御の練習をしておかないとまた暴走するからね「いや使うなって言われてただろ」ごもっともです。


「そんなに危険な魔法なの?」
「要は体の限界を超えさせる魔法なので」


僕自身のスペックがかなり低いからちょっと優れた人程度で済んでいるけど、これをグレン先輩とかみたいにハイスペック持ちが使うと大変なことになるんだよね。人の枠を超えるというか。グレン先輩は半分超えてるようなものだから関係ないけど。


「グレン先輩と知り合いなんだ。あの人の魔法も頭おかしいよね」
「腕を高速で振ることで周りの温度を下げて凍りつかせるって人間業じゃないですから・・・」
「でも原理は全部それよ?高速で振って摩擦熱で発火したり静電気を発生させて電気を身にまとったり」
「「もはや人間じゃねぇ」」


電気鎧armor第三形態third』状態でもできないんだけど。腕に力を集中して振り回しても熱なんて発生しないし周りも凍らないし。


「まあ上も見てもキリがないから自分にできることで力をつけていけばいいのよ『回復heel』。はいおっけーよ」
「ありがとうございます」


目をつぶっているなぁと思っていたら回復してくれていたのか。少し楽になった。てか先輩回復魔法使えるのなら昨日馬車内で使ってくれてもいいのに。あ、もしかしてカモフラージュとかかな?


「いまちょっとスキャンしたけど骨とか筋肉とかがかなり傷んでいるわ。乱発は気をつけなさい。一番はもう使わないほうがいいのだけど」
「まあ言うだけ言っておいてください。かなりの人から言われているので」
「まあ気をつけるよ」


僕だって好きで自分の体を痛めつけたくないし。でもこれをしないとあのジグってみたいな奴が出てきたときに戦えないからしょうがないんだ。もっと強くならないと。強い技を身につけられればいいんだけど。それか基礎力を上げるとかかな。全体的に力を底上げしていく的な。


「どのみちもっと強くなる必要があるのは事実だよね」
「そうだな」
「あなたたちはすでに大分強いでしょ。実際二人が同じグループだったから予選で潰しあってたけど違ってたらきっと結果変わってたわよ」
「予選も実質僕が勝ちですけどね」
「は?なに言ってるんだよ僕のが強い」
「なんだと」
「はいはい、喧嘩しない」


このパターンやけに多いな。まあそれだけリンナ先輩に心を許しているってことなんだろうけど。うん、我ながらちょろいな。誤解だったとはいえ誘拐みたいなのされたっていうのに


「まあ近くにいるのがあのシオン先輩とかでしょ?そりゃハードルも高くなるわね」
「「いえ、目標はサリア先輩です」」
「え?副会長なの。逆になんで」


あ、クレアもか。お前はシオン先輩についていけばいいだろ「それならミライはシェミン先輩な」いやだってさ、サリア先輩以外ってさ、性格が・・・あ、シズク先輩でもいいけどあの人の実力あんまし知らないから


「いや性格で決めちゃうの」
「だってあんないい加減なのを見習いたくないし」
「みんな真面目で人気高いんだけどな〜シオン先輩とかうちの学年でファンクラブとかあるし」
「「先輩の代の女子大丈夫ですか」」
「そこまで言っちゃう?君らお世話になっているよね?」
「「それとこれとは話が別です」」


だってお守りのシズク先輩がいないとポンコツそのものだし。朝起きてくるのは遅くていつも起こされているしシズク先輩は手伝ってくれる食事作りも一切手伝ってくれないしおまけにイケメンだし


「最後のは明らかに私怨よね。でもそうなんだ〜意外ね」
「対外的なあの人の評価わかります?」


確かにこれは気になるな。僕たちの前では非常時以外はなにも頼りにならない先輩だけど「へえ、ちゃんと認めるところは認めてるんだ」悔しいけど僕らよりもかなり強い。多分二人掛かりでも勝てない。勝てないのはどの先輩についてもだけど。こないだの『黒龍』との戦いでわかった。僕とクレアは魔力をかなり消耗して、いや、使い切ってバテテいたのに先輩たちはまだ余力を残していた。それでいて僕らの最高の魔法と同じかそれ以上の魔法を使い続けていた。まだまだ差がありすぎる。多分根本的な経験さえもが違うのだろう。あの人たち軽い気持ちでキング系狩っているし


「キングを片手間にって・・・噂では聞いていたけど本当なのね」
「だから勝ちたいんですよ」
「なるほどね〜。あ、先輩の評価ね?確か。真面目で優秀で格好良くて理想の王子様だって言ってたな」
「「速やかに目の治療を勧めてください」」
「だからさっきから酷すぎない?まあ尊敬しているのが伝わってくるからいいけどさ」


だってシオン先輩だし。


「ま、いいわ、とにかく夕ご飯にいったん戻りましょ」
「そのあとはどうします?もしかしたら僕らに気がついて夜に動く可能性が」
「そうねぇ。じゃあ食べた後テントだけ持って野宿しましょうか」
「わかりました」


いったんリンナ先輩の家に戻る。戻る際にあのおじいさんがいた。なにやら小言を言いに来たのかな


「(気持ちはわかるけど今は黙っててね)」


それぐらいわかっているって。向こうから仕掛け来ない限りはこちらから手を出さないって


「リンナ、なぜこの者たちから手錠を外したんだ」


あ、そういえば僕らって罪人扱いになっていたんだっけ。これどういう風に言い訳するんだろう。


「探すのに魔法を使うからってことで外したのよ。すぐにつけるから大丈夫。おじいさまは心配しすぎ」
「お前それはこいつらが罪人だということを忘れていないか!この者たちは森を放火した者だぞ」
「今はなにもしてないわよ」
「それは我々の監視があったからだ」


いや誰も来てないですよ。僕の感知にも引っかかっていないし、クレアも見てないって言っているから。まあリンナ先輩の目があったから監視があったっていうのは間違いないな。


「それで?なにしに来たの?これから夕飯なんだけど」
「ああ、お前だけでは辛いだろうからわしが面倒を見ようと思ってな」
「おじいさまが?」
「どうじゃ?楽じゃろ」


この態度は逆に怪しいんだけど。ここまで協力的になるなんてな。昨日はあれだけ反対していたのに


「大丈夫よ。ありがとう。それにこれから夜の見張りなの。それじゃああなたたち夕飯にしましょ」
「「はーい」」


夕飯なにかなー。なんか胃袋を掴まれてしまっているような気がしなくもないけど大丈夫だよね?






「お告げの通りじゃったか。つまりわしのするべきことは・・・」

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