電気使いは今日もノリで生きる

歩海

黒龍戦一応の決着

水無月4周目日曜日


「それで?作戦は?」
「考えてません」
「おい待て」


まあなんとかなるだろう。こちらは炎と電気。人類が進化してきた過程で与えられたというか発見してきたものの二大文明の英知だぞ。何言っているのかわからなくなってきたけど要は、人類は神々から火を与えられたことで(確か神話ではプロメテウスですが諸説ありというやつです)進化することができ電気を発見したことで人々は夜でも活動することができるようになった。つまり大物を倒すために進化するって言う意味じゃぴったりのスキルなんだよな


「ごめん意味がわからない」
「それはごめん・・・」


わからないか、残念。クレアも僕と同じ域に達することができなかったか「多分誰も無理だと思う」なんか釈然としないんだけど


「まあまあ、それでどうしよっか?」


今の状況を整理しよう。僕とクレアの使える魔法、周りの状況、ここから使える手段をどうすれば黒龍に攻撃を当てることができるのかをしっかりと考えよう。当てるために必要なのは一瞬で間を詰める瞬発力や速さ、もしくは水素爆発並みの陽動。どうする?それにさっき勢いに任せて『電気鎧armor第三形態third』使っちゃったからモタモタしてしまうと魔力が切れてしまう。もう少し考えて行動するべきだった。


「なあ、黒龍の姿が少しぶれてないか?」
「え?」


言われてみればなんか見えずらい。ちょっと揺らめいてる・・?まるで蜃気楼みたいだ・・・あ!蜃気楼の発生条件ってどんなだっけ?学校の理科の教科書のコラムに載っていたような気がするけど。でも夏の暑い日に景色が揺らめいてる風に見えることがあるから熱せればいいのか?


「クレア!地面をめちゃくちゃ熱してくれ」
「どれくらい?」
「もう本気で!魔力のほとんどを使ってもいいから」
「わかったよ・・・『炎の壁』」


壁が地面からではなく、地面に沿って火が展開されている。こんな使い方もすることができるのか。やっぱ器用だな


「なんか黒龍がまた見えにくくなったんだけど」
「それでいいんだ!僕の姿を撹乱させる」
「それでうまくいくといいけど・・・はい!できたよ」
「あとは少しでも牽制したいから火の玉を撃って欲しい」
「無茶言ってくれるね」


クレアが火の玉を生み出し、それを黒龍に向かって走って突っ込んでいく。あ、これ地面が暑すぎて呼吸が苦しい。『電気鎧armor第三形態third』は少なくとも『電気鎧armor』の効果があるから口にも当然電気が張られてるから多少は防ぐことができる。ゆっくりできない理由がまた一つ追加されたな。


『その程度で我を欺けると思ったか「火炎弾」』


火の玉が飛んでくる。でもそれらは僕に命中することがない。蜃気楼は僕の姿を見えにくくする。光の屈折の関係だから魔法ではない。先ほどの水素爆発でわかったけど自然災害ならば黒龍にダメージを与えることはできないけど黒龍の力に影響されることもない。だから今黒龍の目には僕の姿が揺らめいて見えてるし、さっきシオン先輩が水を凍らせたことによってそれが全て水蒸気へと変わっているので視界もかなり悪くなっている。だから僕に攻撃が当たることがない


「さあ、こいつを喰らえ!」


全ての電気を腕の筋肉と表面に集中させて殴る。今僕にできる最大最強の攻撃。これでダメなら仕方がない。お手上げだ


『貴様、何かしたか?』


やっぱり攻撃が通らなかったか。これは僕の力がまだ足りなかったとでもいうのだろうか。


『作戦は悪くなかったぞ。自然は唯一我が何もできない領域だからな。だが・・・緩い』


ああ、そうだな。僕の力では足りない。でもそんなことは決まっていたことだろ。そして黒龍。お前は僕に集中しすぎたな。ここには僕以外にも・・・いや、僕なんてそもそも気にしてはいけないのに


「今です!『精霊召喚・フェンリル』」
「おうよ!『氷の拳』連弾」
「『氷結』」
「『冷凍フリーズ』」
『しまった!』


油断していた上に攻撃が一点に集中している。これではさすがにかなりのダメージを受けるだろう。てか今サリア先輩ナチュラルに精神を召喚してますよね。


フェンリルは姿形を一言でいうならばそれは狼の姿そのものだ。でも少しサイズが小さい気がする。狼の子供かな。でもその毛並みは雪のように純白で綺麗だ。さすが精霊。身だしなみも一流だ。そのフェンリルが口を開けてそこからブリザードを放っている。おかげで黒龍の翼が半分以上凍りついた。最初から出してほしかったな


「なかなか難しいんですよ。魔力の消費も大きいし」
「そういうものなんですね」


確かに精霊の使役なんて魔力をかなり消費しそうだしなによりこんなのあんまり見せたくないよね。できれば秘密にしておきたいと思うのが自然な反応だ。


他の先輩たちの攻撃が一段落ついた。さあ、問題はここからだ。黒龍が怒って攻撃をしてきたら多分僕は死んでしまうだろう。でももし認めてくれて帰ってくれたらなんとか生き延びることができるかな


『・・・』


何も反応せず、ただ僕の方をじっと見つめてくるんだけど・・・。それが逆に怖い。どうやって僕を殺そうかとか考えているのかと思ってしまう


『ふむ、まだ弱いがしかし機転はきくしよく戦況を見ておる。これはなかなか身につくことではない。普段から周りの人を観察してなければな』


うるさい、確かに僕は普段から周りの人を観察してたよ。だってあんまり僕に話しかけに来なかったからね。角先は話しかけてくれたけど座席が遠くなったらなかなか難しいし。だから自分から話しかけに行かないといけなかったんだよ。そして話しかけに行ってもいいかよく観察していたんだよ。僕みたいな人間は話題に失敗すると本当に何も話すことができないからねってなにを言わせるんだお前は


『途中から自分から話してたぞ』
「ミライ、無理しないでね」


誰が高校デビューしようとして無理してるんだよ。違うんだよ。いったろ?地球にいた時は僕は誰にも見向きされなかったって。周りのすごいやつらを前にして霞んでしまっていただけだって。そして今先輩たちは僕を見てくれているそれだけの話。だからちゃんとコミュニケーション能力だってそれなりにある「「「それはない」」」まって、ちょっとひどくないですか?


「少なくともあちらこちらに喧嘩を売っているようではコミュニケーション能力が高いとは言えないですね。せめて口先ひとつで乗り切ってください」
「それ別の能力な気がするのですが」
『ははははは。なるほど、貴様面白いな。いいだろう。諸々足りていないが成長を加味して及第点をやろう』
「じゃあ!」
『ああ、ミライとクレア。貴様らを認めよう・・・だが、今回は周りの人に助けられておる。だからひとつ課題を出す。それができなければそうだな、国をひとつ滅ぼそう』


なんか国命運を背負わされたんだけど。それも無理やり。


「その課題とは?」
『簡単だ。近いうちに「天災の獣」が目を覚ます。それを退治すればいい』
「そ、それはつまり『天災の獣』が目覚めるということですか?」
『そうだフェンリルの契約者よ。これは我から貴様らに送る予言だと思ってくれていい』


なんか急に親切になったんだけど。最初は殺してやるって感じだったのに


『貴様らがいなかったら当然皆殺しよ。命拾いしたな』


あ、やっぱりか。というかその『天災の獣』・・・また新しい言葉が出てきたな。クレアもわからないっぽいから有名ではないのだろう。それを退治すればいいのね。でも今の実力では到底勝ち目がない。だからもっと強くならなくちゃ


『次会う時は我も本気で相手しよう。だから貴様らも当然本気でこい・・・制約など気にせずな』
「・・・ああ、そうだな」


気になる言葉があったけど、それを追求する前に黒龍は翼を広げ、飛び去っていった。

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