電気使いは今日もノリで生きる

歩海

クレア戦再び

水無月二週目風曜日


「準備はいいかな?」
「大丈夫」


僕とクレアがお互いに向かい合い、構える。ついにきた、戦いの時、たいそうな言い回しだけどもやることなんてたかだか学校の一行事のそれも誰にも知られない小さな戦い。でもこれば僕たちにとってはとても大切な戦いでもある。お互いに自分の本心を語り合って、目標ができた。その目標を達成するためにもこの戦いは負けるわけにはいかない


「おーはじまるみたいだぜ。間に合ったぁ」
「グレン、遅いですよ」
「わりぃわりぃ」


そしてなぜかこんな戦いに観戦者が。いや聞いたことないんですけど予選で観戦に来る人が来るって。普通こういうのって本線からじゃないの?


「じゃあ審判は僕が取るね」


あ、久しぶりのシオン先輩。おねがいします。最近出番なかったもんなぁ


「なんか悪口言われてる気がするけど・・・まあいいや、それじゃあミライvsクレア、試合開始!」


何度目の対戦かはわからない。それでもお互いにお互いの戦いの手札はわかりきっている。つまり勝つために必要なのは鳴村と戦った時と同じように奇想天外な動き、自分の持っている手札からクレアの知らない攻撃パターンを作り出すことが必要になってくる。でも、それだけでなく、きちんと気をつけておかないと普通に負けてしまう


それがお互いに理解していること、だからこそ、知恵と力を総動員して戦わなければならない。なんでいきなりラスボスみたいな感じになっているんだか。


「『電気鎧armor』」「『火剣乱舞』」


初手に選択したのは『電気鎧armor』。これで一気に近づいて倒そうとしたんだけど読まれていたか・・・ここはお互いに『領域』から入るところなんだけど、近接戦闘・・・・において僕が圧倒的に分があるからそれに持ち込みたいし逆にクレアは遠距離戦闘・・・・・で終わらせたい。だから『領域』読みで突っ込んで行ったんだけどクレアにそれを読まれてしまって火の剣を飛ばされてしまう。


あ、これの対応しなきゃ。まずい初手は完全に読まれて負けじゃないか。ここから立て直さないと・・・って危な、いま少し掠ったよ。


「『火の領域fire・field』」


もたもたしていたらその隙に展開されちゃったよ。これはかなりまずいな。しかも火の剣があと、5本飛んでくる。とりあえず足に『電気鎧armor』の電気を集中させて逃げ回っているけど・・・追尾機能あるのかよ。


「少しなら僕の意思で操作できるからね」
「それ聞いてねぇよ」
「隠し球だよ」


なるほど。この戦いに確実に勝ちたかったから僕が知らない攻撃手段を用意していたと。まあ定石っていうか勝ちたいから仕方がないよね。非難したいところだけど逆に言えば隠し球を持っていた状態で鳴村と麺山に買ったってことだからね。相性があるとはいえ僕が全てを出し尽くしてしまってのが悪い。


でも僕だってまだ教えていない魔法なんてあるからね


「『簡易版mini領域field』」
「?何がしたいの?すぐに消えちゃったけど」


僕が使ったのは簡易版の『領域』。一瞬しか発動しない代わりにパッと使うことができる。まあ用は


「『創造creat』」
「ああ、なるほど。まだそれだけで使えないんだね」


うるさい。まだ上手にイメージをつかめていないから『創造creat』だけだと普通に失敗するんだよ。サリア先輩曰く電力が足りていないというか、電力のコントロールが相当苦手だからとからしいんだけどさ。ま、それでも簡単に使うために考えたのが一瞬だけ『領域』を発動させる手段。


「でもそんなことして意味あるの?」
「解除」


わざわざ集めた砂鉄を解除させる。そうすることで辺り一面に砂鉄の粉が散らばっていく。


「ああ、粉塵爆発だっけ?それをしようっていうの?」
「まあ、そうだね」


狙い通り火の剣が向かってきたからそれが発火剤となり爆発する。今回の狙いは爆発によって砂煙を引き起こすこと。それによって視界を埋め尽くされることで一旦体制を立て直そうと思う


「・・・ってまじかよ」


砂煙の中から自分に向かって剣が飛んできた。・・・僕の位置をきちんと把握しているのか。ああ『感知』か。クレアも使うことができたっけ。まあ、僕も使っていつから向こうの位置もわかるしお互い様か・・・


じゃあ僕の行動はなんだっていうんだろう。完全に意味なかったじゃん。まって開始からあんまり時間経っていないけど一方的になっていないか。下手したら鳴村よりも苦戦している気がするんだけど。


「『電気鎧armor』」


それでも唯一の利点といえば姿は見えないことでお互いの次の一手がわからなくなっているってことかな。うん。僕もわからないから、なんとも言えないんだけど。


やっぱりまずはクレアに近づいていくための作戦を考えないといけないな。でもあいつは優れた感知能力と遠距離がかなり得意だからね。それを崩すのは難しい。おまけにこの砂煙によって距離がさらに離れてしまったからな。最初が一気に距離をつめるチャンスだったんだよね。


「「放電thunder」」


向こうに位置がわかっているからとりあえず電撃を飛ばしてみる。ついでに砂煙を吹き飛ばすのもいいかもね。


「まじかよ・・」


目の前にそびえ立つ炎の壁。どうやらクレアのやつこいつを設置したらしいな。面倒だな。クレアに直接攻撃を叩き込むためにはこの壁をどうにかしないといけないのか。ちなみにさっきの電撃もこいつで防がれたっぽいな


「!『電気の領域field』」


ギリギリで間に合ったから『領域』によって飛んできた火の剣を吹き飛ばす。最初にもこれをしたらいいって話だけど『領域』を発動させると少しだけ硬直というか次の魔法発動に一瞬だけロスが生じるんだよね。つまり


「くそっ」


一瞬遅れて飛んできた火の剣を弾くことができずに腕を切られてしまう。時間差で攻撃されると2撃目を防ぐことができないんだよね。


このデメリットがあるから実は実戦ではなかなか使うことができないんだよね。うまく使わないと相手に攻撃をさせる隙を生んでしまうから。だからこういう模擬戦においては最初の一手目に使うか余裕のある時でないと。おまけに防御に使ってしまうとすぐに消えてしまう。普通に発動した時は結構長い時間展開されているんだけどね


切れた箇所を確認。少し血が出ているけど戦闘は継続できそうだな。・・・でもさっきの攻撃は僕を狙ったわけではないというか『感知』を使っていなかったのかな。結構的外れな場所に飛んできてたぞ。まあさっき僕の位置を特定していたから魔力温存のために一旦解除したのかな。


「・・・『電気鎧armor』」


先程と同様に足に集中させる。でも違う点はそれでも体にある程度の電気を残しているという点だ。いま僕の魔法でこの壁を打ち破る手段は持っていない。ならばとるべき手段は一つ。


この壁は単なる炎だからそのまま突っ込んでなんとかする!


向こうからどんどん火の玉が飛んできているけどまだクレアが舐めているようで『感知』を使っていないのか直接当たることはない。だから避けることはそこまで難しくはない・・・動きが読めないからずっと集中した状態を保っていないといけないんだけどね。まとにかくそのまま僕は炎の壁に突っ込んで行った。

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