電気使いは今日もノリで生きる

歩海

このタイミングで弟子入りです

水無月2週目水曜日


鳴村との戦いを終えた次の日、僕はいつものようにクレアと山の中を走っていた。授業は普通にあるからね。


「『熱感知』・・・あたりに鬼はいないみたいだね」
「よかった」


近くに誰もいないからとゆっくり歩く。鬼ごっこで逃げるコツはずっと走り続けないことだと学習した。走り続けてもいいがそれだとすぐに体力が尽きてしまう。最初の頃は最後まで走り続ける体力をつくるかと走り回ったんだけどまあそんな体力なんてすぐにつくはずがないよね。毎回毎回そんなんじゃ疲れはてるからってことで僕らは体力を温存するという意味で歩くというのを覚えた・・・考えたらすぐに当たり前な話だけどね。今までは『感知feel』を使っちゃうとすぐに位置がバレるから即ダッシュしてたんだよね。


毎回音がなってしまうのは嫌なのでユンさんにこのリストバンドを二つ貸してもらって音が鳴らない範囲というのを研究した。これは一定の魔力以上の魔力を感知したら音がなる仕様のようなので、そのラインを探した。まだ長時間仕様は無理だけど一瞬なら音が鳴らないまでは使いこなすことができるようになった。まだたまに失敗するし、完全には感知できない、つまり見逃しが多いんだけどなんとかまあ及第点ってことかな。


「にしても、サリアさん怒っていたね」
「思い出させないでくれよ」
「いや、さすがにあれは僕も怒るよ」


歩きながら昨日の模擬戦について話す・・というか怒られてる。うん、あの粉塵爆発っていうのが少し問題になっているらしい。模擬戦だから命を取る必要はない、もちろん本気で戦うのが大前提だけど。僕の行ったこうどうは一歩間違えれば僕も鳴村も死んでしまったかもしれない。二度も爆発を起こしたもんだから爆音がそうとう響いていたらしくサリア先輩がすぐに駆けつけてくれたのですぐにシェミン先輩が鳴村の治療を行ってくれた。だから僕らは後遺症も特になく無事に全快することができた。


5時間くらいお説教されたけど。命を無駄にしないでってそうとう怒られました。おかげさまで大分寝不足。辛い


「いやぁというかミライ何したの?あんな爆発を巻き起こすなんて知らなかったよ」


そしてどうやらこの世界では粉塵爆発というものがあまり知られていないらしい。科学が発達してないわけではないみたいだけど地球と比べたら少し劣っているみたいだ。あれ?粉塵爆発って科学の内容だっけ?わかんないけど


「あーあれは結構簡単にできるよ。魔法なんて使わなくても」
「え?そうなの。じゃあ教えてくれよ」
「いいけどそれは明日以降な」
「あー・・・まあそうだな。それを聞くのはちょっとフェアじゃないし。ミライの砂鉄にさえ気をつけていれば問題ないからね」


まあ小麦粉とか準備するの面倒だから砂鉄を毎回集めてくるほうが楽なんだよね。そういう意味ではクレアは準備が大変だよな。


「・・・もう・・・あんなこと・・・させない」
「うわぁ」


突然声が聞こえたからびっくりした。まじかよ。いつのまにシェミン先輩に近づかれてたんだろう。クレアの感知に引っ掛からなかったのか。それともわざと・・・そんな目でみるけど僕と同じように驚いていたからたまたま見つかったんだろう


「・・・ミライ・・・爆発・・・禁止」
「え、いや・・・その、じ、自分は巻き込まれないようにしますから」
「・・・ダメ」


睨まれる。先輩その顔で僕を睨んでこないでくださいよ。心臓に悪いんですって・・・その、捨てられた子犬みたいな目で見てこないでください。自分が悪いことをしている気分になってくるんですよ。ああ、ほら目の端がちょっと涙ぐんでいますよ


「わかりました・・・安全に配慮して使います」
「・・・」


まだ納得していないようだけど、これの原理を事細かに説明したら納得してくれた。ようは爆発物になりそうな細かい粒子、小麦粉とか砂鉄とか、最悪水素でもーこれは水素爆発だから少し違うかーと発火物、火種があればできるってことを説明したら少しは引いてくれた。でも二度と自分を巻き込むように爆発させることを禁止させられた。それは・・・仕方がないよねうん命の危険があったからね。


「・・・わかった・・・あ、・・・捕まえた」
「「あ」」


そうだったー!これ今鬼ごっこ中だった。僕らが逃走者でシェミン先輩が鬼役。つまり逃げなければならなかったんだけど、後ろめたいこともあったし話しかけてきて内容が内容だっただけについ足を止めちゃったんだよね


「・・・まだまだ・・・隠蔽が・・・下手」
「え?音なってました?」


そうなのか?僕は聞こえなかったんだけどね。あ、もしかして全く聞こえないじゃなくて魔力量に応じて音の大きさが変わるって感じなのかもしれない。あれ?でもそれだと僕に聞こえなくてシェミン先輩には聞こえた理由がわからないな


「・・・魔力を・・・感じた」


魔力って音ですらない。そういうことなんですね。そしてクレアの感知範囲外から見つけることができたということはかなり広範囲の感知もちか・・・まってこれ鬼ごっこほとんど不可能じゃん。なにこのチート能力。いやチートかはわからないけど・・・クレアの範囲よりも広いってそうとうだよ。










「なんなんですか。シェミン先輩の感知能力の高さは!弟子入りしたいレベルなんですけど」


終わった後、ギルドの寮でも夕飯にて僕は先輩たちに詰め寄っていた。だってそうだろ。今までの僕らの努力を全てぶち壊したんだし一言くらい文句を言ってもいいよね。


「・・・弟子入り・・・する?」
「いいんですか!」


まさかまさかだよ。棚から牡丹餅瓢箪から駒嘘から出た真・・・最後は違うか。とにかく驚きだよ。行ってみるもんだね。シェミン先輩なら結構丁寧に教えてくれそうだし、どっかの誰かさんはなんだかんだで何も教えてくれないし


「まあシェミンの感知能力は相当だし弟子入りも悪くないかもな。よかったなシェミン」
「・・・うるさい」
「シェミンからも嫌われてるのかよ」
「当然の結果です」
「まじか・・・お前ら俺を虐めて楽しいか」


いつものことでしょうに。まあ虐められキャラっていつでもどこでも気をつけないと本気の虐めになっちゃうからね。僕はグレン先輩のことは全く知らないからいじらないけど


「それ仲良くなったらいじりますってことか!そうだよな」
「よかったじゃないですか。まだ避けない後輩がいて」
「俺全員に避けられているってことか」
「なんかその言われ方嫌です」
「お前はそういう奴だったよな!ミライ」


どういう奴なんだろう。まあこれで感知系はしっかり練習することができるし、いずれは魔力も自在にコントロールしながら自分だけ相手の位置を把握とかしてみたいな


「・・・でも、教えるって、どうするの・・・?」
「え?」
「いつも・・・感覚でしてるから・・・」


天才だったか。それもうどうしようもないのですが・・・これ弟子入りやめようかな


「ま、頑張れ天才から得るものが多いからな」
「頑張りますよ・・・あ、クレアもどうだ?」
「僕はもうシズク先輩に頼んでいるから」


裏切り者めぇ「・・・うらぎりもの・・・?」すみませんでしたーーー!シェミン先輩に弟子入りできて光栄です!


不安しかないけどまあ、今は、


「それよりも、明日、だね」
「ああ」


まだそんなに時間が経っていないけど、それでもあの日、誓ったもの同士、やることは一つ


「「明日、僕が必ず勝つ!」」


お互いに二勝のもの同士、本戦出場をかけた戦いが始まる

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