電気使いは今日もノリで生きる

歩海

これでクラスメイトはちゃんと全員転移したことになるんだな



ーここはどこだろう・・・よくわからない騎士に連れて行かれたのだけは覚えているけど・・・


意識が覚醒するとそこは大きな扉の前にいた。日差しが降り注いでいないからここは室内だろうか。どこに連れてこられたと言うのだろう。


「お前も起きたか、紅」
「天衣・・・無事か?」


どうやら僕が最後まで寝ていたらしく、みんな心配そうに僕の方を見ていた。みたところ、目立つような傷は付けられていない。殺されていなかったようで、安心した。


「それでここはどこかわかるか?」
「知らないわ。・・・まあこの立派な扉を見る限りお城かどこかの貴族の家なんじゃないかしら」


言われてみればこれまた立派な装飾の施された扉である。うん、趣味の悪い。成金野郎が自分の財力を見せびらかすためだけに作られたような扉だ。派手に金でコーティングされていて、見ていて痛々しい。


「頼むからここの主と対面した時は自重してくれよ」
「僕は基本的に話さないから安心してくれ」
「口を開けば出てくると・・・」


まあ今更性格なんざ変えられるはずもないからね。諦めてくれ・・・待って。角先はともかく五月雨さんまで胃の痛そうな表情をしてるんだよ。そこまでトラブル引き起こしたことないよな?


「なんとなく察してるわよ」


そうですか。


「おい、今からお前たちを我が主人の元に連れていく。大人しくついてこい」


あ、騎士の鎧をきた人が歩いてきた。声の感じからして最初に僕たちの対応をしていた人かな。兜・・・兜だよね?とにかく頭の装備を外していたからわからなかったよ。「それ、入れ替わってても気づかないやつな」


そしてなんとまあ、テンプレだろう。異世界の騎士といえばイケメン!って誰かが言っていたけどもまさにその通りなんだよな。髪の毛は赤でやっぱり黒は珍しいのかな。で、整った顔立ち。一ノ瀬あたりが成長したらこんな感じになるのかな?絶対に彼女とかが途切れたことのないタイプだ。間違いない、僕たちの敵だ。「さすがに偏見がすぎないか?」


「何をブツブツ言っている。早く来い」


すみませーん。イケメンはいじり倒すべき存在だけど今は状況が状況だし、大人しくついていこう。このイケメン騎士について扉をくぐると、そこは大広間みたいな空間に出た。


「カナデ、連れて来てくださる?」
「すでにこちらに」


入り口に近いところにいた美しい女性がこの騎士に声をかける。なるほどこの騎士の名前はカナデというのか。・・・正直どうでもいいな。さて、せっかく広いところに出たし、周りの様子でも確認しようか


「あ、みんないる」
「よかった〜」


ん?あ、ほんとだ。みんないた。大広間の真ん中にクラスメイトたちがみんないた。みんな生きていてくれたのか。みんな怯えたような表情をしている。まるでこの世界に来てまだ間もない感じだ。どうしたんだろう。もう一ヶ月近く過ぎたっていうのにね。


そして大広間を見渡してみると、クラスメイトの他に全部で7人ほどいた。まず、奥の方の王座みたいなことろに偉そうにふんぞり返っている意地の悪そうなやつが一人。頭に王冠が乗っかっているから多分あいつが王様なんだろう。そして、その横に老人が二人。おそらく武官と文官のそれぞれの長的な人だろうか。厳しそうな二人である。残りの二人は騎士だね。こういった場所の警備を任されているんだろうしそれなりの実力を持っているんだけど残念ながら名前がわからないパターンのやつだな。二人足りない?あの美少女とカナデさんですよ


「ムグムグ」
「お前まじで黙っとけ」


偉そうにと口にしかけた瞬間に天衣に口を塞がれてしまった。この手際の良さ、僕がなにかやらかすと予想していたに違いない。


「本当にやるとは思わなかったけどな」


振りかと思った・・・すみません。さすがに反省します。あの老人たちに睨まれてるので


「さて?よろしいかな?本来陛下は忙しい身。それにもかかわらずこうして出向いておられるのだ。そのことに感謝しなさい」
「すみません、もう少し待ってください。俺たちもいきなりのことで混乱しているんです」


さすがは一ノ瀬、いいこと言うなぁ「誰かさんと大違いだな」うるさい。


「ふむ、わかった少しだけ待とう。どうやらジュリエット嬢が連れて来たのは勇者たちの知り合いなのは間違いないようだし」
「ありがとうございます」


きちんと例を述べている。偉いねえ最近の若者は礼儀がなっていないとかなんとか言われているけど立派じゃないか。まあ、せっかく時間稼ぎをしてくれたんだ。情報共有といきますか


「それで?お前たちはどこに転移したんだ?同じ場所にいたはずなのにどうして場所がずれているんだ?」
「ああ、それは森だよ。ここからそれなりに離れた。理由はさすがに知らない」
「森?どうやって一瞬でここに来たんだ?」
「え?そりゃ歩いて」
「歩いて?」


うん?なんか二人の会話が妙に噛み合っていないな。後ろのクラスメイトたちもざわめいているし。というかあいつらがこの一ヶ月どうやって過ごしていたのか早く教えて欲しいなぁ


「これは・・・おそらく」
「多分な」


五月雨さんと天衣はなにかに気がついたようだ。二人ともかなり面倒くさそうな顔をしている。


「一ノ瀬」
「?どうした天衣」
「あーお前らはたった今・・・・ここに転移したんだよな」
「あ、ああ」


何を今更という顔の一ノ瀬。対する僕らは驚いて声が出てこない。たった今転移してきただって?じゃあ僕達だけ一ヶ月前倒しで転移させられたってことなのか。もしかして麒麟がいっていた手違い・・・ってこれのことなのか


「どうしたんだよ?急に固まってさ」
「あのね、一ノ瀬くん。私たちはだいたい一ヶ月くらい前にこの世界にきてるの」
「え?じゃ、じゃあ今まで」
「それは後で話すわ。でも今は王様と、そこの預言者さんの話を聞きましょう」


聞くべき順序をきちんと把握しているさすがは委員長だな


「うむ、もう良いか?では話すがお主たちには来るべき魔王討伐をやってもらいたい。そのための援助は惜しまない」
「そのために魔術学校に入学させるべきです」
「我が国だけで大丈夫だが」
「それはわかっています。ですが、これはすべての国と魔王の戦いなのです、勇者に援助したい国は山ほどいます。そしてその協力する姿勢こそが大切なのです」


あのー何を言っているのかわからないんで説明お願いできませんか?魔王ってあの魔王?なんかものすごく強い力を持っているあの魔王だよな


「そっか。お前らは聞いてなかったよな」


親切にも一ノ瀬が丁寧に教えてくれた。過去に何があって、今この世界で何が起きようとしていることを。


魔王が再び現れるか。麒麟のいっていた目的がそれなのかな。でも僕には関係ないしいっか。どうせ『勇者』を与えられた青目が全部やってくれるんだろうに。正直ちょっと意外だったけどな、『勇者』なんて一ノ瀬か楠あたりがなるものだと思っていたよ。あれ?楠の場合は『勇者』にはならないか、あいつはハズレを引いてのちにチートの能力を手にいれるタイプだからな。


「だが、入学式までは一週間もない、それはどうする気だ」
「入学手続きにつきましてはすでに学長に連絡済みです。あとは名前と本人の意思があれば入学は可能です。それにまだ一週間あります。ここからでもギリギリ間に合うことは可能です」
「国民に挨拶をせずにここを立つというのか」
「時間がないので諦めてください」
「それはならぬ、我らが召喚したことは伝えなければ国民は不安に思ってしまう。しばらく宮廷魔術師をここにこもらせていたからな」


僕らが話しを聞いている間にどんどん進んでいますな。これ当事者の意見をちゃんと聞かないとだめなやつじゃないのかな。あ、こっち向いた。


「すみません、熱くなってしまいました。皆さんにお聞きします・・・強制になってしまい本当に申し訳ないのですが」


顔の表情や口調から本気で申し訳ない気持ちになっているのが伝わってくるしそこは気にしませんよ


「あなたたちに与えられた選択肢は二つです」


一つ目、この国で魔王討伐のための力をつけること
二つ目、この世界の魔術学校に入学して魔王討伐のための力をつけること


要は、魔王討伐のためにどこで力をつけるのかというものだ。この美少女さんは学校を推していたけど国王は国を推している。どっちがいいのかな


「急なことでいきなり決めろとは言いません。しかし、魔術学校に入学の場合、入学式が一週間後に迫っています」


なので期限は明日の朝まで。もちろん、編入は可能だが、その場合、この美少女さんの力が及ばないのでかなり厳しいことになるという


「明日の朝にこのお城の前で待っています。入学の意思があるものだけ来てください」


ちなみに、国王の計らいで僕たちはお城で泊めてもらえることになった。硬い地面じゃないところで寝るなんていつぶりだろう。さて、どうしよっかな

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