電気使いは今日もノリで生きる
お風呂のリフレッシュ効果
「はあ、やっぱり動いたのね・・・」
呆れたように壁の後ろから現れたのはやはりというべきか五月雨さんだった。制服もきちんと着ているし水浴びする前と何も変わらない・・・あれ?なんか制服綺麗になってないか?これはちゃんと理由を説明してもらわないとね
説明といえば、この蔦に関しても欲しいな。さっきの言葉と、みんなのスキルを考えてみればこの蔦を設置したのは五月雨さんなのは間違いないんだけど、どんな魔法を使ったんだろう
「おーい、助けてくれよぉ」
なんか叫んでいる気がするけど無視だ無視。助けに行ったら絶対に巻き添え喰らうやつだから。
「助けなくていいのかしら?」
「はい」即答
「・・・そう」
選択肢間違えた?なんで僕にまで呆れた目を向けてくるんだよ。
「呆れたのよ。こういう時すぐに見捨てるのよね」
「ちょっと待て。なんか誤解起きてるんだけど。別にあいつが先陣切ったわけじゃないからね?むしろあいつ一人が突っ走ったから」
どうやら僕らが全員で覗こうとしていたと勘違いしているらしい。あのね、そんなことしたらどうなるのかなんて小学生でもわかりますよ。冗談で済まないでしょ。この先協力が必須なんだから。
「・・・」
お、思案顔。もう一息で押し切れるかな。こちらに何も非がないから疚しいことなんて何もない。嘘をつく必要がないから楽だ。
「ところであれは何?新しい魔法?」
残念ながら僕には立つ弁というものがないのでこういう時に効果的な「少し話題をそらす」というテクニックを使って見る。実際に気になっていたし、今くらいしか聞くチャンスないからいいよね
「・・・はあ。そうね。精霊に頼んで罠を仕掛けさせてもらったわ」
藪をつついたら大蛇が出てきました。なにそのとんでも魔法。さすがチート代表格『精霊』スキル。精霊は基本的にほぼ全ての属性に存在していると言われているからもしかして五月雨さんは全ての属性を使えることができるということではないだろうか・・・というか全部お見通しだったよね。露骨に話題をそらしたこと
「そんな期待した目で見つめられてもね。できるならとっくにしているわよ」
どうやらこのスキル『精霊使役』には精霊との相性が必要なようで、五月雨さんと相性が良かったのは森の精霊だったとのこと。最初にこのスキルを使えるようになった時に、いろいろ試したんだとか。例えば土の精霊に頼んで道を教えてもらうとか考えたんだが、できなかったそうだ。
「でも風の精はお願いを聞いてくれたわ。私たちの体を乾かしてくれたもの」
だからお風呂に入った後に慌てなくて済んだの。そう言って笑っていたが、それだと腑に落ちない点がある。先ほど、体をと言った。制服が綺麗になっていたのは洗ったからだと考えると体もと助詞がくるはずなんだけど
「ああ、それは四万十さんの力ね。彼女のスキル『回復』で制服を回復させて元の状態に戻してもらったの」
藪をつつかなくてもヒュドラが出てきました。というか男女差別だろ。男子と女子のこの差はひどすぎませんかね。男尊女卑とは言わないけどさ、さすがに女尊男卑と訴えたくて仕方がないぞ。
女子たちにチートが全て集まっているというこの状況は少し癪だけども、探索が進む、進みやすくなるというのなら歓迎だ。
それはいいとして、あの、五月雨さん。そろそろ・・・
「すみませんでした〜〜〜助けて下さい〜〜」
あの変態を開放してやってくれませんかね
結局、未遂ということだったので、厳重注意で終わったみたいだ。気になったのは女子たちの反応だ。怒るというよりもむしろ呆れ、男の子だもんね、仕方がないよねっていう呆れの方が勝っていることだ。さすがに納得いかなくて文句を言いたかったけども米柔のやつがやらかしているのは事実なので何も言えない。
そして、次に男子が水浴びをするってことになったので、前回の初めに戻るって感じかな。男五人で仲良く水浴び。
「なんだかんだで男子五人がこうやって話すの初めてだな」
「そうだね。はあ、心がやすらぐよ」
「ああ、多少のことなら許してもいい気分だ」
「だから五月雨さん許してくれたのかな」
「だったらいいなぁ」
二日ぶりの風呂?もとい水浴び。睡眠もリラックス効果があるって聞くけど一番はやっぱりお風呂にゆったり浸かることだな。すごく気持ちいい。まだ少し緊張感は残ってはいるけれども、今が一番リラックスできていると実感するなぁ。
あんまり長湯をしすぎるとのぼせてしまうから、さっさと上がることにした。山胡桃さんの提案で広くなったとはいえ、高校生五人はさすがに窮屈だったかな。願わくは、もっと大きなお風呂で一人でゆったりと過ごしたいなぁ。
と、ここで少し問題が発生した。正確には、角先、米柔、麺山の三人に、だ。そう、
「「「濡れた体で制服を着たくない」」」
考えてみれば当たり前の話、ここにはバスタオルはおろか体を拭くものが何もないんだ。濡れてしまったら自然乾燥にまかせるのみ。
「ど、どうすればいいんだ・・・」
「お前らそんなことも気づいてなかったのかよ」
「そういう紅だって、え?お前なんで乾いてるんだよ!」
「それは電気を体にまとって分解した」
「「そんなのありかよ」」
そんなのありかよって言われましても、これが僕の能力だからしょうがないよね。自分の能力をどう使うか考えて得た立派な力だ。危ない危ない、あやうく僕も自然乾燥にまかせることになってしまったよ。気づくことができてよかった〜。
「まあまあ二人とも落ち着いて」
「角先も俺らと同じだろ。我慢すればいいってもんじゃないよ」
止めに入った角先はもう制服を着ていた。だがあいつには水滴を乾かす手段がない。つまりは濡れた上に羽織っているということだ。まったく、一言声かけてくれれば電撃をお見舞いしてやったというのに「それ俺に死ねって言ってない?電撃吸収したらうまいこと分解できないんだけど」
「まあ二人も天衣に頼みなよ。あいつが乾かしてくれるからさ」
「ま、まじかよ」
「ありがとう天衣。どっかの電気やろうとは大違いだぜ」
そ、そんなことがあっていいのか。必死になって考えたというのに、その努力が一瞬にして無に帰ってしまった。電気分解だとかすかに溶けていた金属が体に付着してしまうんだよな。まあ本当にごくわずかだから気にはならないレベルだけどもさ。
「ああ、あと、お前らの制服を水で洗って乾かしといてやったぜ。さすがにずっと着るのに洗濯もなしじゃまずいだろ」
・・・・前言撤回。天衣、有能。
こいつも有能じゃねえか。普段ならそこまで有能なスキルじゃないのに、「これからチート能力覚えるんだよ」今、この瞬間においては最強の能力じゃないか。昨日から天衣がしたことって、木の伐採に切断、薪割り、風呂準備に乾燥機、洗濯機。一家に一台ほしい家事マシーンじゃないか。
「人を便利屋みたいに・・まあいいぜ、これが俺の実力よ。やっぱいいなぁ。人の役にたつのって」
「どうした急に」
「俺はさ、この世界に来て人助けをやりたいんだよ、せっかく異世界に来たんだ。少しは変わったことをやりたいと思ってもいいだろ」
「なんか、すごいね」
この世界で生きる目的を持っているなんて・・・僕にもいつか見つけることができるかな
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