電気使いは今日もノリで生きる
そこに川があるなら
さて、かなりの無理ゲー感はあるけどもそれでも生き残るためだ仕方がない。まずは、強い電気を出すんだ。
バチィ
うん。やっぱり現実はうまくいかないな。これが主人公ならなんやかんやでうまくいくんだろうな。それでも、もう一回。強い電気がほとばしるのをイメージして・・・
バチィ
変わらないな。まあ今ちょっと思いついたけど、強い魔法をつかうためにはそれ相応の杖というか媒体が必要じゃないか。そこらへんに落ちていた木の枝を使っていてもそこまで強い魔法が使えるとは思えない。探索に行っている五月雨さんたちが戻ってきたときにでももっと大きな枝を持ってくるように頼んでみるか。
そうと決まればやることは一つ。この枝がどれだけの強さまで耐えることができるのかの検証だな。と、同時に僕がどれだけ強い電気を発生させることができるのかという実験でもあるんだけど。
さっきよりも強い電気を・・・
バチィ
まだ大丈夫だな。もっと、もっと強く大きく、電圧の高い電気を
バチ
あ、弱くなった。連続で使用すると弱くなるのかな。もしかしたら隠しステータスとしてMPなんてものが存在してて、それが少なくなると発動する魔法も弱くなるとかかな。それか単に僕がまだまだ未熟だから強さにムラが生じているか、か。うん、後のやつが一番可能性が高そうだな。泣けてくる。
逆に言うならばきちんと努力をすればそこらへんのコントロールができるようになるっていうことだな。つまり練習すれば静電気くらいの電気から雷クラスまでの電気まで自由自在に使いこなせるのか。いいなぁ。夢が広がる感じがする。よしもう一回。
バチィ・・・バキ
うまくいかないもんだな。そして枝が折れちゃった。どれくらいの力を使ったら枝が折れるのかよくわかんなかったな。うーん。五月雨さんたちが戻ってくるまでにもう少し時間がかかりそうだな。このままのんびりしていても時間が勿体無いし・・・サボっていると思われたらなんかいろいろ言われそうだし・・・。しょうがないから枝なしで練習でもしてようかな。さっきもかなり小規模ではあったけども一応魔法発動してたっぽいし
パリッ
ん?最初のときよりも威力が上がったような。気のせいか?慣れてきたのかな。もう一回やってみよう。イメージするのは手から電気を出すあの感じ。今まで枝を使ってやってきたその感じを・・・・よくわかんね。よくわからないけど、自分の腕を枝のように考えてみると。
バチィ
あ・・・あれ?枝を使ったのと同じような電気が発生した?これはいったいどういうことなんだ。でも、そんなことと比べ物にならないほどの衝撃が僕を襲った。そう、そのとき、僕の頭に急に声が聞こえてきた。それは優しい女の人の声のようで。年齢的にはどれくらいかなぁ。20代かな?今はそんなことはどうでもいいですね、はい。
『おめでとうございます。あなたは『放電』を取得しました』
え・・・いったい何が起きたんだ。『放電』を取得しました?特に変わったことがないけども・・・。ステータスの確認だけはやっておこうか。
紅 美頼 男 17歳
スキル「電気」
技能「放電」
「ええええええええ」
思わず絶叫してしまう。だってそうだろ。ステータスが変化していたらそりゃ驚くでしょ。しかもなんか新しい項目まで追加されているし。これはテンションがあがるっしょ。さてさて、新しく追加されたのは技能「放電」ね。技能ってのが少し引っかかるけれどもこれはそこまで不思議じゃないな。そして具体的な名前についてなんだけど、
「放電」・・・自分の周りに電気を放出する。
うん。読んで字のごとくって感じかな。でもなんで急にこうして追加されたんだろう。これは正式に使うことができるようになったと判断してもいいのかな。
「おい、どうした紅。急に叫び声をあげてさ」
あ、そういえばさっき大声をあげちゃったから天衣がやってきちゃったよ。特に隠す必要もないし追加されたことを話しちゃおっか。
「それはすごいな。俺は特にそんな感じはないけどな」
「うーん」
どうやら天衣は僕と同じように習得しているわけではないようだ。同じような能力だし、僕と天衣の違いはなんだろう。そんなことを思いながら天衣を眺めていると、ふとあることに気づく。
「そういえば枝壊れてないの?」
「ん?そうだな。というかお前は壊れたのかよ」
天衣の手にはしっかりと拾った枝が握られていた。僕が習得したタイミングと違いをまとめると、僕が枝を使わないで魔法を使おうとしたってことが関係してるんだと思うけど。
「そっか、じゃあ試してみるか」
そう言って、枝を捨てた。そのあと風邪を起こそうとしたんだろう。でもそこまで強い風はふくことがなかった。
「あれ?起きないな」
何が違うのだろうか。僕と同じはずだけど・・・。思い出せ。僕が初めて使えるようになった時にどういう風に発動させようとしていた。思い出せ・・・・
「・・・あ、天衣、お前どういう風に風を起こそうとしている?」
「え?そりゃ普通に」
「なあ、自分の腕を枝に見立てて魔法を使ってみて」
「ん?うん」
そして天衣は目を閉じ、集中した。自分の腕を枝に見立てるってそれなりの集中力を使うんだよね。しっかりイメージして・・・そしてそのまま腕を振り抜いた。
ゴオォオ
振り抜いたあと、そこから風の刃が飛び出し、目の前にあった木を切り倒した。まるでそれは鎌鼬のようだった。
「す、すげえ」
「まじか・・・枝なしで魔法が使えた・・・それに技能を覚えたぞ『鎌鼬』だ!」
「そ、そうか」
それにこれで少しは推測が進んだかな。枝があることによって魔法が発動したのはおそらく魔法を使うのには何かしらの媒体が必要なんだろう。そしてそれは自分の腕でも構わないっぽいな。この何か媒体を使って魔法を発動する、それの感覚に慣れたんだろう。だから枝を使わなくたって僕らは魔法を使うことができた。そして、媒体なしで使うことによって技能として自分のステータスに記録される。そういう感じだろうか。
「ありがとう紅。これで木の伐採作業が進むぜ」
「お、おう」
これで器の方はなんとかなりそうだな。ついでに木材も手に入りそうだし、火を起こすことができたらそれを維持するための薪も十分に手に入るだろう。つまりそのためには火を起こさなければならないんだけど・・・
「まったくできそうにないんだが」
電撃を放ってもそこから発火が起きそうな気配がまったくないんだが。どうすればいいんだよ。一応熱エネルギーは発生しているのかちょっと焦げてるっぽいけどさ。それでもまだ火が起きるのはまだ先だよな。
天衣はちょっと進んだようだけど角先たちは魚を手に入れられたのかな。僕がこんなに苦労しているんだからあいつらきちんと食料を手に入れていないと許さないぞ。そういう気持ちで川の方をみる。川幅はあまり広くないようで、向こう岸まで土壁が広がっている。米柔たちはちゃんと一部を隔離することに成功したみたいだな。それで・・・あいつらは、と
「・・・・」
あ・い・つ・ら・ぁ。僕がこんなに苦労しているってのに呑気に水遊びしやがって。しかもなに?しれっと女子たちも混ざってるだと?女子たちはこのあたりの探索に出かけたんじゃなかったのかよ・・・あ、遊んでいるのは山胡桃さんだけですね。さすがに他二人は・・・うん木々を積み重ねてる。
「お、紅?お前順調か?」
「・・・おい角先。これはどういうことだ」
「え?あ、いや、ははは。ちょうど五月雨さんたちも戻ってきたし休憩しよっかなって。お前にも声かけようかと思ったんだけどなんか集中してるみたいだし悪いかなって」
ふざけんなよ。女子たちとキャッキャウフフで遊びやがって。そのまま怒りに任せてズンズンと川の方に近づいていく。
「もしもーし?紅さん?ものすごい怒ってませんか?」
怒るよ。当たり前だよ。そりゃまだ1日も経っていないけどさ。息抜きが大事だってことはよくわかるよ。それでもこっちが無理難題おしつけられているのにそっちがそんな風なら・・・こっちだって考えがあるよ。ここは川で僕のスキルは電気。小学生でもわかる簡単な問題だ。だから僕はおもむろに手を振りかぶる。
「ちょ、おま、なにしようとしてるんだよ」「え?紅くん?もしかして遊びたかったのー?」「紅!お前ちょっと考え直してくれ」「え?紅どした?」「いいぞ紅やっちまえ」
「・・・水は!電気を!よく通す!」
そのまま手を振り下ろし、使えるようになったばかりの技能を使う
「『放電』」
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