落ちこぼれの少年が世界を救うまで
入学前の呼び出し
「ここが俺の部屋か……」
第8天使ミカエル、いや、理事長先生に出会ってしばらくして、俺は今、このナルサス学園の入学式のためにここ、ナルサス学園の生徒寮にやってきていた。学園が全寮制のために俺はここで生活せざるを得ない。今から一人暮らしが始まるというわけだ。ん? 一人暮らしだっけ? 確か同室の人がいるのではないのだろうか。そんなことを思いながら俺は部屋を開ける。持ち物は先に運んでもらっているので刀だけ。
「普通だな……」
まあ特に期待なんてしていないけどね。さてと、入学式は明日で、寮の食事は確か……朝と夜は出るんだっけな。昼はおばさんが用意してくれたから……部屋でゆっくりと食べるとするか。
「悪いが、君を特別扱いすることはできない。普通の学生として過ごしてくれ」
あの後、理事長に言われた言葉。まあそれも当たり前な話だよね。それに、俺が推薦入学ができていること、それからこの寮の代金及び授業料が一部免除されていることを考えれば相当頑張ってくれていることがわかる。やっぱりあの刀が……どうやら災厄の獣にたいして絶大な威力を発揮することができるこの刀があると言っても俺は結局何とも契約をすることができない落ちこぼれなのは間違いないのだからな。
「ふぅ」
そんなことを考えながら俺はおばさんが作ってくれた昼ご飯を食べる。そして部屋を見渡せばこの部屋はいたってシンプルな作りをしている。ベッドが二つにそれから机が二つ。やっぱり二人部屋だったか。それに荷物も俺のとは他に誰かのがあるからね。なんだかんだ言っても孤児院の時は一人部屋だったからこういう共同生活みたいなのも初めてだよな。
コンコン
「空いてますよー」
そんなことを思っていたら部屋の扉が叩かれる音がした。どうやらもう一人の部屋の主が来たのだろうか。そう思って空いていることを伝えた。
「失礼します。エル・ロンドの部屋はこちらであっていますでしょうか」
「あ、はい。俺です」
そんなことを言いながら入ってきた。そう、エル・ロンド。理事長先生にお願いして俺の名前はロンドということにしてもらった。どうやらセレクシアという名前とは関係なくあの刀を持っていたから俺を推薦入学させてくれたみたいで、俺が本名を隠したいと告げると普通に承諾してくれた。だから俺の名前はエル・ロンド、ということになっている。
さて、部屋の扉を開けてくれたのは意外なことに女子生徒だった。え? あの……俺って男子なのですけど。あの理事長まさかとんでもない爆弾を持って来やがったな。そんなことを思っていたらどうやらそれは俺の勘違いだったみたいだ。
「理事長先生から伝達です。今すぐに理事長室に来るように、と」
「な、なるほどです。でも、俺、場所がわからない」
「ええ、ですので私が案内します」
「お、お願いします」
よかった。まあさすがに天使で人間とは異なるとはいえ、さすがにそんな節操のないことをするはずがないよね。ただ、いきなり呼び出しというのは気になる。一応念のために刀だけは持って行こう。女子生徒は俺が刀だけを持っていくことに対して不思議そうにしていたけど特に何も突っ込むことをしなかった。
「私はサリム・リンブウェン。この学園の生徒会副会長です」
「サリム先輩ですね。よろしくお願いします」
何も話さないのは気まずいと判断したのかサリム先輩が話しかけてくれた。そして流れるように自己紹介をしてくれる。ああ、こうして式前に頼まれるということから予測していたけどやっぱり役職持ちだったか。てか生徒会の副会長をこうして使いっ走りさせるのかあの理事長。
「それにしても、珍しいです。理事長先生がこうして私的に生徒を呼び出すなど」
「そうなのですね」
「ロンドくんは躊躇うことなくその刀を手に取っていましたが何か関係があるのですか?」
「どうなんですかね……実は俺も何で呼ばれるのかわかっていないのですよ」
「そうなのですか」
やっぱり刀が関係しているのは間違いないのだけど、理由は知らない。予想がつかないからね。さすがに落ちこぼれには任せられないので別の人間にしますというようなことはないと思うのだけど。まあそうなったら速やかにここから出て行けばいい話だけどさ。
「少し歩きますよ」
「あ、わかりました」
寮から出たときに少し歩くことを言われた。まあ理事長室が寮にあるなんて普通はあり得ないからね。ただ、前もって教えてくれるのは非常にありがたい。
「ところで、ロンドくんは入学後委員会などは決めているのですか?」
「委員会ですか? いえ、特に決めていません」
「そうですか……」
委員会ねぇ……一応決めていないと言ったけど、実際のところはいくところがないという方が適切だからね。中学時代一切の委員会をすることができなかったからね。まあ委員会と言ってもせいぜいが生徒会とか風紀委員とかその辺りだもんな。
生徒会は生徒がよりよい学校生活を送れるようにするために全力を尽くすところで風紀委員はまあ学校には様々な地域の人がいるわけで、トラブルなんてのも当然起こる。契約獣同士が争いを始めたらそれを抑えるのも一苦労だ。そのために学校側も治安維持のためにそういう組織を作り出している。
ただ、このあたりに選ばれる人選も当然みんなから慕われていたりの条件もあるが最低限、契約獣がいなければ話にならない。だから俺は一切選ばれることはなかった。
「あの、どうしてそんなことを聞いたのですか?」
「こうして呼ばれている以上、優秀と思いますので、風紀委員に取られる前に勧誘しておこうかと」
「正気ですか?」
「あの、さすがにその言い方の理由を教えていただいても?」
あ、やばっ。俺を勧誘するとかいう頭のおかしなことが聞こえてきたのでつい、反射的に言ってしまった。でも、冷静に見れば、先輩に対しても言葉遣いとしては最悪もいいところ。サリム先輩が苛立ったような反応をするのも当然だ。むしろこの程度で抑えているとかどんだけの人格者なのだろうか。
「す、すみません。俺、契約獣いないんですよ……」
「え?」
「中学時代、何度も契約しようとしてできなかったんです」
理事長曰く、俺が昔に天使と契約をしたことで他の契約を行うことができなくなっている、らしい。まあそんな裏事情はともかく、事実は事実だ。そしてこれを淡々と告げるとサリム先輩は驚いたような表情をしていた。思ってもみなかったことを言われたみたいな。
「あっ、そうなのですね」
「すみません……中学の時に散々言われていたので」
「そうですか……なら、なおさら勧誘をしておきたいですね」
「???」
思わずサリム先輩の顔を見てしまった。そして同時に足が止まってしまった。今のどこを聞いて勧誘をしておきたいと思えるのだろうか。俺の反応が面白かったのだろう。先輩はクスクスと笑う。
「契約をしていないということは……何か、があると見るのが自然です。ああ、ということは理事長推薦できたということですね。一般ではあなたみたいな人が受かるなんてありえませんし」
「バカにしないのですか?」
「なぜ? そんなことをする必要があるです?」
さっきから先輩の言葉に驚かされる。どうして? 俺がいたところでは……まあ孤児院の奴らは誰もバカになんてしてこなかったけど中学とかでも大体バカにしてきたし……だから今の先輩の態度に驚きを隠せない。
「ふふっ、では、生徒会への介入……まだ確定ではありませんが、考えておいてくださいね。それから理事長室はあちらです」
「は、はい」
「では、これで」
そしてサリム先輩はどこかへと言ってしまった。そして俺は指示された部屋の扉をノックする。
「どなた」
「エルです……その、要件はなんでしょうか」
「ああ、入りたまえ」
その言葉を聞いて、俺は部屋の扉を開ける。さて、どんなことを言われるのかな。
第8天使ミカエル、いや、理事長先生に出会ってしばらくして、俺は今、このナルサス学園の入学式のためにここ、ナルサス学園の生徒寮にやってきていた。学園が全寮制のために俺はここで生活せざるを得ない。今から一人暮らしが始まるというわけだ。ん? 一人暮らしだっけ? 確か同室の人がいるのではないのだろうか。そんなことを思いながら俺は部屋を開ける。持ち物は先に運んでもらっているので刀だけ。
「普通だな……」
まあ特に期待なんてしていないけどね。さてと、入学式は明日で、寮の食事は確か……朝と夜は出るんだっけな。昼はおばさんが用意してくれたから……部屋でゆっくりと食べるとするか。
「悪いが、君を特別扱いすることはできない。普通の学生として過ごしてくれ」
あの後、理事長に言われた言葉。まあそれも当たり前な話だよね。それに、俺が推薦入学ができていること、それからこの寮の代金及び授業料が一部免除されていることを考えれば相当頑張ってくれていることがわかる。やっぱりあの刀が……どうやら災厄の獣にたいして絶大な威力を発揮することができるこの刀があると言っても俺は結局何とも契約をすることができない落ちこぼれなのは間違いないのだからな。
「ふぅ」
そんなことを考えながら俺はおばさんが作ってくれた昼ご飯を食べる。そして部屋を見渡せばこの部屋はいたってシンプルな作りをしている。ベッドが二つにそれから机が二つ。やっぱり二人部屋だったか。それに荷物も俺のとは他に誰かのがあるからね。なんだかんだ言っても孤児院の時は一人部屋だったからこういう共同生活みたいなのも初めてだよな。
コンコン
「空いてますよー」
そんなことを思っていたら部屋の扉が叩かれる音がした。どうやらもう一人の部屋の主が来たのだろうか。そう思って空いていることを伝えた。
「失礼します。エル・ロンドの部屋はこちらであっていますでしょうか」
「あ、はい。俺です」
そんなことを言いながら入ってきた。そう、エル・ロンド。理事長先生にお願いして俺の名前はロンドということにしてもらった。どうやらセレクシアという名前とは関係なくあの刀を持っていたから俺を推薦入学させてくれたみたいで、俺が本名を隠したいと告げると普通に承諾してくれた。だから俺の名前はエル・ロンド、ということになっている。
さて、部屋の扉を開けてくれたのは意外なことに女子生徒だった。え? あの……俺って男子なのですけど。あの理事長まさかとんでもない爆弾を持って来やがったな。そんなことを思っていたらどうやらそれは俺の勘違いだったみたいだ。
「理事長先生から伝達です。今すぐに理事長室に来るように、と」
「な、なるほどです。でも、俺、場所がわからない」
「ええ、ですので私が案内します」
「お、お願いします」
よかった。まあさすがに天使で人間とは異なるとはいえ、さすがにそんな節操のないことをするはずがないよね。ただ、いきなり呼び出しというのは気になる。一応念のために刀だけは持って行こう。女子生徒は俺が刀だけを持っていくことに対して不思議そうにしていたけど特に何も突っ込むことをしなかった。
「私はサリム・リンブウェン。この学園の生徒会副会長です」
「サリム先輩ですね。よろしくお願いします」
何も話さないのは気まずいと判断したのかサリム先輩が話しかけてくれた。そして流れるように自己紹介をしてくれる。ああ、こうして式前に頼まれるということから予測していたけどやっぱり役職持ちだったか。てか生徒会の副会長をこうして使いっ走りさせるのかあの理事長。
「それにしても、珍しいです。理事長先生がこうして私的に生徒を呼び出すなど」
「そうなのですね」
「ロンドくんは躊躇うことなくその刀を手に取っていましたが何か関係があるのですか?」
「どうなんですかね……実は俺も何で呼ばれるのかわかっていないのですよ」
「そうなのですか」
やっぱり刀が関係しているのは間違いないのだけど、理由は知らない。予想がつかないからね。さすがに落ちこぼれには任せられないので別の人間にしますというようなことはないと思うのだけど。まあそうなったら速やかにここから出て行けばいい話だけどさ。
「少し歩きますよ」
「あ、わかりました」
寮から出たときに少し歩くことを言われた。まあ理事長室が寮にあるなんて普通はあり得ないからね。ただ、前もって教えてくれるのは非常にありがたい。
「ところで、ロンドくんは入学後委員会などは決めているのですか?」
「委員会ですか? いえ、特に決めていません」
「そうですか……」
委員会ねぇ……一応決めていないと言ったけど、実際のところはいくところがないという方が適切だからね。中学時代一切の委員会をすることができなかったからね。まあ委員会と言ってもせいぜいが生徒会とか風紀委員とかその辺りだもんな。
生徒会は生徒がよりよい学校生活を送れるようにするために全力を尽くすところで風紀委員はまあ学校には様々な地域の人がいるわけで、トラブルなんてのも当然起こる。契約獣同士が争いを始めたらそれを抑えるのも一苦労だ。そのために学校側も治安維持のためにそういう組織を作り出している。
ただ、このあたりに選ばれる人選も当然みんなから慕われていたりの条件もあるが最低限、契約獣がいなければ話にならない。だから俺は一切選ばれることはなかった。
「あの、どうしてそんなことを聞いたのですか?」
「こうして呼ばれている以上、優秀と思いますので、風紀委員に取られる前に勧誘しておこうかと」
「正気ですか?」
「あの、さすがにその言い方の理由を教えていただいても?」
あ、やばっ。俺を勧誘するとかいう頭のおかしなことが聞こえてきたのでつい、反射的に言ってしまった。でも、冷静に見れば、先輩に対しても言葉遣いとしては最悪もいいところ。サリム先輩が苛立ったような反応をするのも当然だ。むしろこの程度で抑えているとかどんだけの人格者なのだろうか。
「す、すみません。俺、契約獣いないんですよ……」
「え?」
「中学時代、何度も契約しようとしてできなかったんです」
理事長曰く、俺が昔に天使と契約をしたことで他の契約を行うことができなくなっている、らしい。まあそんな裏事情はともかく、事実は事実だ。そしてこれを淡々と告げるとサリム先輩は驚いたような表情をしていた。思ってもみなかったことを言われたみたいな。
「あっ、そうなのですね」
「すみません……中学の時に散々言われていたので」
「そうですか……なら、なおさら勧誘をしておきたいですね」
「???」
思わずサリム先輩の顔を見てしまった。そして同時に足が止まってしまった。今のどこを聞いて勧誘をしておきたいと思えるのだろうか。俺の反応が面白かったのだろう。先輩はクスクスと笑う。
「契約をしていないということは……何か、があると見るのが自然です。ああ、ということは理事長推薦できたということですね。一般ではあなたみたいな人が受かるなんてありえませんし」
「バカにしないのですか?」
「なぜ? そんなことをする必要があるです?」
さっきから先輩の言葉に驚かされる。どうして? 俺がいたところでは……まあ孤児院の奴らは誰もバカになんてしてこなかったけど中学とかでも大体バカにしてきたし……だから今の先輩の態度に驚きを隠せない。
「ふふっ、では、生徒会への介入……まだ確定ではありませんが、考えておいてくださいね。それから理事長室はあちらです」
「は、はい」
「では、これで」
そしてサリム先輩はどこかへと言ってしまった。そして俺は指示された部屋の扉をノックする。
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