金属魔法の使い方

バリウム

あなたを見捨てないために。

リンはしばらく走ると少し窪んだところに洞窟があった。

「こんな複雑な道、たしかに遭難するのも頷けるわ。」

中に入ると生暖かい風が肌に触れる。

「洞窟が湿ってる、中には一体何があるの?。」

もしかしたら聖獣じゃないかもしれない、そんなの最悪な想像が頭をよぎってしまう。

ライトをつけるが奥をライトで照らしても奥まで光が付かない。

槍を袋から取り出して構える。

あれから10分近く奥に向かって進んでいるが、一向に着く気配もない。

それに。

「魔物はおろか、生物さえもいないわね………。」

乾燥しているわけでもないのに肌がピリピリする。

とてつもない魔力のオーラが溢れ出ていると言うことだ、手の震えで槍に力が入らない。

急がないと。

あれ、何で急がないといけないの?。

私は誰の為に?。

(誰の為だろうな。)

「だれ?!。」

気づくとそこは開けた場所で光の湖の真ん中に大きな氷塊が一つ、その中には何かしらの生き物が閉じ込められていた。

「あなたが聖獣…………?。」

(いかにも、私が聖獣、ユニコーンだ。)

たしかによく見ると伝説に書いてあった通り馬のような体に頭には角が生えている。

(問おう、お前は何のために力を欲する。)

そんな事は一つに決まっている。

「それは村を焼いた奴らを皆殺しにして、グレンを探す、それが私が力を欲する目的。」

(問おう、お前は何のために力を欲する。)

「だから!、それは村を焼いた奴らを………。」

(そんなくだらないことは聞いていない、お前は今何のために力を欲する。」

「はあ?、私の目的はひとつだけよ、他に何があるって言うの?。」

(じゃあ、力を貸すことはできない。)

「なぜ?、なぜ私に力を貸してくれないの!、あなたは私に何を求めているの!?。」

(何を焦っている、べつにいくら時間が掛かったって構わないのだろう?。)

「外には敵が大勢いるわ、ここについてしまってはあなたを奪われてしまう。」

(それについては問題ない、私の一部を持った人間しかここまでたどり着くことができないからな。)

「そ、そう、それなら問題ないわね…………。」

(そうか、ではなぜそんなに心が乱れているのだ?。)

「え?。」

私は何かを焦っているの?。

心臓の音が骨に響く感じだ。

(もう一度問おう、お前は今、何のために力を欲する。)

「わ、私は………。」

今、何のために力を欲する?。

生き延びるため?。

いや、違う。

グレンを探すため?。

いや、違う。

村を焼いた奴らを皆殺しにするため?。

いや、違う。

「私は、私は………、私は!!!。」

「私は、ある人を救いたい!、今は一人で何十人と大勢の敵に囲まれながらも戦っているヤツを助けたい!!。」

「私が一刻でも早く助けにいかないと確実に死んでしまう。」

「私が見捨ててしまったら、これからずっと後悔してしまう!、私はもう大事な人を目の前にいるのに失いたくない!。」

「だから私に力を貸してください。」

それは自分の信念を曲げてでも願う力。

人生で一度も下げたこともない頭を下げてまで願った力。

(その言葉をずっと待っていた!!。)

ユニコーンを閉じ込めた氷塊が七色に光る。

氷塊が砕け散ったと思ったらリンにかけらが吸い付いていく。

その氷が形を変えてリンの体に合うように変形する。

すると白がベースに濃蒼色が所々に輝いている。

「こ、これは……………?。」

(私の力をお前の魔力を使ってお前の想像するものを具現化させることができる。)

なるほどね。

(一体化したことでお前の心は筒抜けということだ。)

「え!?。」

(試しに、そこにある槍を想像しろ、お前が使いやすいように、理想の槍に。)

リンは想像する。

自分が使いやすいように、ユニコーンのような鋭いツノののような槍を想像しろ…………!。」

すると槍先が濃蒼色の槍が生成される。

「へえ、これがユニコーンの力。」

(そうだ、他にも想像次第でなんでも生成できる、お前の魔力が保てばな。)

(さあ、時間がないんだろう、この洞窟を抜けるまでにこの聖装獣に慣れろ。)

「わかったわ。」

リンは力一杯足を踏み込む。

すると一気にトップスピードになり体の重心が一気に崩れて足だけが前に出る。

頭から落ちてあまりの痛さに頭を抑えるリン。

すぐに起き上がって出口に動こうとすると、あることに気がつく。

あれ?、もう痛みが引いてきている?。

(これも一つの能力だ、一時的だが回復魔法を使える。)

洞窟の中をひたすら控えめに走るていると、ユニコーンに止められる。

(ちょっと待て。)

「何かあったの?。」

(ああ、もう一人の頑張っているやつに手土産だ、持っていってやれ。)

「でもこんなの持っていけるの?、見るからに少し重そうだ。」

(腰に収納ポケットがあるこのポケットは容量が少ないものの形、大きさ関係なく入れることができる。)

「へえ、まるでユウトが言うチートみたいね。」

その手見上げを腰の収納ポケットにしまって洞窟の出口を目指して、リンは急ぎ足で走り始めた。

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