《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第8-19話「最後の休息」

 ミファの用意した部屋は、領主館の来賓室だった。ソファが置かれてあり、壁にはゴブリンのはく製が飾られていた。暖炉に火をつけてくれていたおかげで、部屋の中は温かかった。



 部屋にはガルシアと第一皇女がいた。帝国第一皇女ルキサ・リ・デラル。王国に亡命したとは聞いていたが、どうやら匿っているのはミファだったらしい。かつてケネスは、第一皇女と会って話したことがある。そのときは媚薬騒動があって、さらには、第一皇女側につくという約束を破ってしまったこともあって、目を合わせることに気まずさを覚えた。



「心配ありません。だいたいの事情はわかっております」
 と、第一皇女は微笑んでくれた。



 さすが元第一皇女というだけはあって、機微が働くようだ。



「すみません」
 とだけ謝っておいた。
 その隣に座っているガルシアの左腕がなくなっていた。



「腕。どうしたんですか?」



「なに、君に心配されることではない。ただの姉弟ケンカだ」



「ロレンスですか」



「あいつもすこしはやるようになった。面白い魔法を考案している」



 と、ガルシアはホントウにたいしたことないように、鼻で笑った。ガルシアはケネスにいろいろと助力してくれた。そのせいで腕を落とすことになったのなら、申し訳ないことをした。



 ケネスの右手にはミファが腰かけた。左側にはヨナが座る。そして正面にはガルシアと第一皇女が座っている。なんだか懐かしい面々を前にして、子供のころに戻ったような錯覚をおぼえた。



 さて――と第一皇女が切り出した。



「ケネスにお話ししたいことがあります。もうだいたいは、わかっていると思いますが」



「ヴィルザのことですね」
 はい、と第一皇女はうなずいた。



「魔神ヴィルザハードは現在、国境付近の王国領で暴れまわっています。王国軍が軍を編成しましたが、成す術なしというところです。魔神ヴィルザハードを止められるのは……」



 第一皇女がケネスを見つめてくる。



「オレが、止めます」
 と、ケネスは強く応じた。



「軍が潰滅させられています。いくらケネスが強くなったからといっても、神と対等に戦える人はいません」



 ましてやヴィルザは8大神が、相討ちになって制した相手だ。



「マトモに戦ったら、勝てないと思います。ですが、たぶんヴィルザは、オレのことを殺せない」



 これが傲りならば、死ぬしかない。
 ヴィルザと紡いで来た時間が真か偽りか、試されるときだ。
 第一皇女はうなずいた。



「ケネスとヴィルザハードの関係は、ガルシアからだいたい聞いております。ヴィルザハードという人柄が、どういうものなのか、私にはわかりません。ただの凶悪な魔神としか思えない。ケネスとヴィルザハードの関係が、偽りでないのなら、そこに隙が生じるだろうと思います。実際、あなただけは魔神ヴィルザハードから見逃されている」



「はい」
 目玉だけだった。
 命までは奪われなかった。



「私も行こう」
 と、ガルシアが言う。



「でも、腕が……」
 と、ケネスはガルシアのなくなった左腕に視線をやった。



「それを言うなら、君も右目がないだろう。私は、ずっとこの日を待っていたのだ。魔神のチカラを見てみたい。不謹慎かもしれないが、私は世界が滅びても良いと思っている。圧倒的な強さに焦がされたい。そういう意味では、バートリーは私の神髄をちゃんと見ていたな」



 たしかにこんな危険思想を持っている人では、国の運営はつとまりそうにない。国家として見れば、バートリーが帝国魔法長官になったのは、正解だったのかもしれない。



 その日は、ミファの領主館で休ませてもらうことになった。ここまで馬に乗り続けていたため、股が痛くなっていた。



 風呂に入って、ミファに用意してもらった豪華な夕食を食べた。まるで最後の晩餐みたいだな、と思った。それから満足して部屋に戻って、ベッドに沈み込んだ。ミファが部屋に入ってきた。何か話したがっている様子だったけれど、気怠くてケネスは寝たふりをしていた。



「このバカ」
 と、ミファは小さくつぶやくと、ケネスの頬に口づけをして、部屋に戻って行った。なにげなくその頬を指でナでた。



(オレとヴィルザは……)
 一本の鎖だ。
 そう思う。



 周囲があらゆる手を使って引き離そうとしても、ゼッタイに離すことが出来ない。互いがいなければ、生きていくことが出来ない。ヴィルザがいないとケネスの心には、空虚な穴が開いている。そしてそれはヴィルザも同じだと思いたい。



 ずっと、2人で、生きてきたのだ。そしてそれが最初から決めらされた定めだったかのように、ケネスの右目には、『ゲリュスの慧眼』が埋め込まれていた。なんとなくわかる。8大神の長男であるゲリュスが、どうしてケネスにこの目をたくしたのか……。



 ゲリュスは末っ子であるヴィルザのことを心配していたと聞いている。永遠に、孤独の牢獄に閉じ込めたままでは、カワイソウだと思ったのだろう。だから、ヴィルザに孤独から抜け出るチャンスをくれたのだ。ヴィルザはそのせっかくのチャンスを不意にしようとしている。



(待ってろよ。ヴィルザ)



 ヴィルザはかつて言っていた。人と憎悪でつながっている――と。違う。ケネスはヴィルザと愛情でつながっている存在でありたい。それを、わからせる必要がある。



 ケネスは己の左手の指を見つめた。
 指輪が、闇の中で輝いている。

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