《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第8-17話「壊滅した村」

 早朝に出たのに、日が暮れはじめていた。



 茜色に染まる丘陵のかたすみに、村があった。いや。それは村だった場所だった。家屋は焼け朽ちた痕跡があった。



 壁面がなくなっているものがあれば、天井が吹き飛んでいるものもある。それはまだ良いほうで、土台の石台と家具だけ残して、跡形もなく消失している家らしきものもあった。



 おそらく家畜小屋だっただろうと思われる場所には、動物たちの骨が散らばっている。畑は焦土と化していた。穀物を挽いていたであろう風車の羽は折れて、奇妙な形状になっている。戦争で荒らされたような悲惨を、その村の光景が発していた。



 馬を止めて、村の中をヨナと一緒に見て回っていた。



「なんだ、ここ?」



 周囲に戦火の気配はなく、ただ村だけが滅びていた。その光景が、どことなくシュネイの村を思わせた。シュネイの村が滅びたときも、これと同じく赤く染まっていた。ケネスの胸に暗い絶望感が押し寄せてきた。



「魔神ヴィルザハードが通った後だよ」



 これをヴィルザがやったのだ。シュネイの村のこと、マッタク反省していなかった。ケネスの絶望は、ヴィルザのその奔放な気持ちを察してのことだ。



「村人は避難したのか?」
 人気はない。
 骨に染みるような冷たい風が、村の閑散を演出していた。



「みんな殺された。容赦なくね」
「そうか」



 帝都の人たちが怒りの声をあげるはずだ。バートリーがケネスの記憶を弄ってまで、止めにかかるはずだ。



 ケネスが蘇らせようとしていたのは、ただの魔神なのだ。



「重すぎるな。これは」



 殺したのはヴィルザかもしれないが、その引き金を引いたのはケネスだ。この罪を背負わなければならない。それは、あまりに、重い。なんなら処刑されていたほうが、まだ楽だった。



「ここだけじゃないよ。ヴィルザハードに襲われて潰滅した村は、他にもいくつもある。ヴィルザハードは今、帝国の国境を破壊して、王国に向かってる」



「オレにどうしろと?」
「魔神ヴィルザハードを止めるんだ」



「オレが、これを止めるだって?」
「わからないのかい?」



「なにが」
「魔神ヴィルザハードは容赦なく人を殺す。その魔神を見た者は、片っ端から死んでゆく。決して逃れることはできない」



「だろうな」



 あれだけ世界征服はやめろ。人殺しはやめろと忠告したにも関わらず、ヴィルザは凶行に走ったのだ。



 いつだったか、ヴィルザが言っていたセリフを思い出す。
『理由もなく不条理に、人を殺し、殺戮を楽しむからこその、魔神。何か理由があって、人を襲っているのならば、それはただの人じゃ。理由がないから、魔神なのであろうが』



 それが、ヴィルザなのだ。



「ただ1人だけ、ヴィルザハードの魔の手から逃れた人物がいる。おそらくヴィルザハードはその者のことを殺せなかったのだろう。第一皇女はそう見立てているよ」



「誰のことだ?」
 ヨナは、緑に光る双眸でジッとケネスのことを見つめていた。



「……オレ?」
「ヴィルザハード城で、目を奪われたんだよね」
「ああ」



 右手を眼帯の上から、ナでた。



「目だけでなく、命まで奪うのが道理。けれど、ヴィルザハードはそうしなかった。ケネスのことは、手にかけなかったんだ」



 ヴィルザにも、慈悲があったのか?
 否。
 違う。
 そうではない。



 ケネスとヴィルザが2人で紡いだ時間は、決してムダではなかった。あの時間があったからこそ、ヴィルザはケネスを殺すことが出来なかったのだ。それは、まぎれもなく、ヴィルザのなかにも、ケネスにたいする情がある、ということだ。思い違いなんかではない。あの時間は偽りなんかではなかったという確信があった。



「ですから、魔神ヴィルザハードを止められるのは、ケネスだけなんだよ」



「そうかもしれないな」
 たとえ、止めることが出来なかったとしても――。
 刺し違えるぐらいは、やって見せる。



(お前を、殺すのが、オレの役目だもんな)

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