《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第8-16話「久闊を叙する」

 時間はすぐに過ぎ去っていった。夜が来て、朝になった。夜空が白みはじめた刻、外から怒号がひしめきはじめた。魔神ヴィルザハードを復活させたことにたいする、民の怒りだった。



(ヴィルザはそんなに悪いヤツじゃないと思ったんだ)



 でも、そんな言い訳は、誰にも通用しない。
 ヴィルザとともに時間を紡いできたのは、ケネスただ1人だけなのだから。



 斬首……首つり……あるいは火あぶり……。なんだろうか、と思った。火あぶりは苦しそうだから、やめて欲しい。出来れば楽に殺してもらいたい。



 コツコツコツ……。



 石畳の床を叩く足音が近づいてくる。ケネスの牢の前で、ヘルムを深くかぶった人物が立ち止った。



「出ろ。処刑の時間だ」
「はい」



 抵抗しようとも思わなかった。抵抗する術もない。魔法が使えない今、どうあがいても逃げられそうにはなかったし、逃げる気力もなかった。ここで、オレの物語は終わりなんだなぁ、と思った。最後にもう一度だけ、ヴィルザと話をしたかった。一緒にハンバーガーを食べながら、他愛もない話をしたかった。



 それに――。
(結局、結婚指輪も渡し損ねたし)



 前を歩く騎士について行く。歩いているという感覚がなくて、自分の足音が他人のものに聞こえた。肉体が空っぽになっているせいだと思った。牢獄の裏口から外に出た。練兵場の裏を回るようにして、外郭を出た。都市の中に入る。城の公開処刑を見物しに行っているのか、都市のなかの人気はすくない。ガルシアが暴れたあとなのか、いくつか倒壊している建物がある。



「どこに行くつもりだ? 処刑はこっちじゃないだろう」



 ケネスの腕輪を引いている騎士の様子がオカシイことに、ようやく気付いた。



「あなたには、まだ死なれると困る」
 騎士は振り向いてそう言った。ヘルムの奥でくぐもった声が聞こえた。



「オレを助けるつもりか?」
「ええ」



「オレは魔神ヴィルザハードを復活させた張本人だぜ。それを知って逃がすつもりか?」



「まだ気づかないんだね」
「は?」
「久しぶりだね」



 騎士はそう言うと、ヘルムを脱いだ。顔を覆ったヘルムが脱げると、緑の髪が開花のように広がった。大きな額。そして緑の目が、優婉に輝いていた。桜色の唇が愉快そうに微笑んでいる。



「お、お前、まさか……」
 ケネスは驚愕に腰を抜かすどころだった。



「ボクがこういう潜入を得意としてるのは知ってるでしょ。ボクのスキルはヘイト逸らし。敵意を買いにくいんだ」



 ヨナ・フーリガン。
 かつてのケネスの友人だ。



「行こうか」



 ヨナはそう言うと、ケネスの魔法封じの腕輪を外した。都市にはあらかじめ馬が用意されていた。ヨナはそれにまたがる。ケネスは後ろに乗った。馬の脾腹をヨナが軽く蹴った。馬が走りはじめた。都市の城門棟を走り抜けて行く。



 しばし、走った。
 帝国からの追っ手はなかった。



 ヨナは馬にまたがり、緑の長く伸びた髪をなびかせている。ケネスは、ヨナの腰につかまっていた。



「オレを助けるとは、どういうことだ? それに、どうしてヨナが」



「ケネス・カートルドを殺してはならないというのは、帝国第一皇女さまの指示だよ」



「第一皇女さまが、どうして?」



 学生時代のときに、一度だけ会ったことがある。
 それぐらいしか、覚えていない。



「帝国の政権が第一皇子に奪われて、第一皇女さまは帝国から王国へと亡命したんだよ。その第一皇女さまを王国のとある貴族が、匿っている。ボクは、そこから遣わされて来たんだよ」



「わざわざ、オレを助けに来たわけか」
「友人だからね」



 ヨナは前を向いたままそう言った。その胸元に目をやると、学生時代のときより、ずいぶんと大きくなっている。髪も伸びた。当時は男装していたから、余計に今が女性らしく見えるのかもしれない。



「それに、ケネスしかいないだろうからね」
「何が?」



「魔神ヴィルザハードを止められる人がだよ。君とヴィルザハードの関係は、すこしガルシアさんから聞いてるよ」



「ガルシアさんのことも知ってるのか?」



「そりゃ、第一皇女さまを帝国から連れ出したのは、ガルシアさんだからね。ガルシアさんも王国の貴族が匿ってる」



 ずっとヴィルザが見えていたことを、話した。もう隠す必要もないだろうと思ってのことだった。そして、ヨナにだからこそ、話せるような気がした。



「じゃあ、あれか――。ボクが『マディシャンの杖』を盗み出そうとしたとき、トンデモナイ強さの騎士が現れたのは、ケネスだったのか」



「ああ」



「じゃあ、なおさら、魔神ヴィルザハードを止められるのは、ケネスだけだね」



「オレには止めれない。あいつはオレの右目を平然と握りつぶした」



 今も、右目は見えない。
 眼帯で隠している。



「いや。ヴィルザハードは、間違いなく君にたいして、情を抱いている」



「どうして、そう言える?」
「証明してあげるよ」
 ヨナはそう言うと、馬の足を速めた。

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