《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第8-13話「大人のキス」

 3国会議を襲撃して、ケネスはヴィルザハード城に戻ってきた。ドラゴンゾンビが運んでくれた。空の移動は素早いけれど、全身が氷のように冷たくなるのが難点だ。



 ヴィルザハード城の内部は、相変わらず学生時代に来たときのままだった。地獄の様相を呈している。立ち並ぶ甲冑たちも、フジツボのようにビッシリとシャレコウベのこびりついたイスも、何も変わっていない。



「死体は、ないな」
「死体とはなんじゃ?」
「グラトン先生たちを殺したことがあっただろ」



「ああ。あの時の――。おそらくハーディアル魔術学院の者が片付けたか、そうでなければアンデッドにでもなったんじゃろうな。ここに放置された死体は、まぁ大半はアンデッドになる」




「そうなのか」
 アンデッドは、たしかに自然に増殖していくものではある。



「それより、3つとも、手に入れたな」



 ヴィルザはまるで魔王のように、シャレコウベのイスに腰かけている。別に意図したわけではないが、まるでケネスはその前にかしずくカッコウになっていた。



「たしかに3つ。3つとも呪痕がある。『アースアースの鉱石』。あのときは壊せなかったんだよな」



『アースアースの鉱石』は、相変わらず黒い光沢を放っている。『エルフタンの耳』は耳を引きちぎった生々しさがある。『ポテルタンの槍』は青く輝くトライデントだ。槍だけはカッコウ良い。



「しかし、耳が遺物なんてな。ずいぶんと生々しい」



 つまみあげた。
 隙を突いて切り落とさせてもらったのだが、申し訳ないことをした。謝って済むものでもないのだけれど。



「別に不思議な話ではない。主神ゲリュスも人の遺伝子に、みずからのチカラを組み込んだのだしな。そもそも固有スキルというのも、魔力を持った遺伝子の変化によるものじゃ。学院で習ったであろうが」



「そうだったかな。呪痕もそれに合わせて、発現するって感じなのかな」



「そんなことより、さっさと壊せ」



 ヴィルザは待ちきれないようで、さっきからヒザをもじもじとこすり合わせている。その姿がすこし艶めかしく見えた。



「まずは耳からな」
 魔法で焼いた。
 簡単に燃え尽きた。



「問題は、『アースアースの鉱石』なんだけど」
 これは壊せない。
 以前にも奮闘した記憶がある。



「問題はない。『ポテルタンの槍』を使って突き崩せ。おそらく、それで壊せる」



「でも、《神の遺物アーティファクト》は使わないほうが良いんじゃないのか? 人の精神に異常をもたらすんだろ」



 ヴィルザはニヤリと笑う。



「コゾウなら、問題なかろう」



 ケネスはもう25歳になる。けれど、ヴィルザにとっては、いまだにコゾウのようだ。その呼びかたにくすぐったさを覚える。



「なんで?」
「まあ、やってみろ」
「わかった」



 ヴィルザが言うのなら、大丈夫なんだろうと思った。槍で鉱石を突いてみた。たいしたチカラも要らず、互いが粉々に砕けた。青く輝くトライデントが、ガラス片のように周囲に散った。黒い鉱石も同じく散って、霧散していった。



「マジだ。そんなに苦労せずに使えた……」



「はーははははッ。はーははははははははッ」
 ヴィルザはのけぞって笑っていた。



「これで残り1つってわけか」



 長かった。
 残り1つにもなると、ヴィルザ復活について考えさせられるものがある。『エルフタンの耳』を切り落としてまで持ってきたのだから、もはや躊躇はない。けれど、最後に一呼吸、落ち着きたい。



「のお。ケネスよ。御苦労であったな。16歳のときに出会い、いまや25歳。都合9年の付き合いなのか」



「どうしたんだよ。思い出に浸るには、あと1つ足りないぜ。8角封魔術は、全部で8つだろ」



 ケネスは床に座りこんで、煙草を吸った。



「ケネス・カートルドか。私がその名を一生覚えておいてやる。光栄に思え」



「そりゃ光栄だな」


 ヴィルザは立ち上がって、ケネスに歩み寄ってきた。顔をグッと近づけてくる。ビックリして煙草を落としてしまった。ケムリだけが無為にのぼる。



 ヴィルザの指がケネスのアゴを持ち上げる。唇が、唇に押し当てられた。柔らかくて熱い感触が触れる。甲冑たちの見守るなかでの接吻だった。呼吸を止めた。目を閉ざした。ただヴィルザの唇にだけ集中する。



 ヴィルザの舌が、ケネスの唇を押し開けて、中に入ってきた。舌に、舌が触れる。熱っ。その熱にビックリして、あわてて舌を引っ込めたけれど、ヴィルザの唇は執拗に追いすがってきた。



 2人の舌が絡まりあった。一本の鎖のように。互いがいないと、生きられないかのように。



 唇が離れる。どちらのものか、わからない唾液が、透明な橋をつくった。



「約束じゃったからな。大人のキスを教えてやると」



「ビックリしたぜ」
 心臓がバクバクと音をたてていた。



「世話になった」
 ヴィルザがニンマリと笑う。



 ケネスの右手が勝手に動きはじめた。

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