《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第8-7話「逃げ出す準備」
帝都から抜け出すことが、意外と難しいことを知った。常にケネスの周囲には、誰かがついている。クロノであったり、サマルであったり、ロレンスであったり……。抜け出すどころか、ヴィルザと会話する暇さえなかった。昼になると、バートリーが主城門から外に出て行った。
「なんだか、最近、バートリーさんはよく外に出て行くな」
と、ケネスはロレンスに話しかけた。
ロレンスに話しかけたフリをして、ヴィルザに話しかけていた。ヴィルザなら、何か知っているかもしれないと思ったのだ。空中を自在に飛びまわれるヴィルザなら、ケネスが何もかもを忘れているあいだに、情報収集をしてくれていてもオカシクはない。案の定。ヴィルザは詳しかった。
「あの女は、3国会議というものに出席するつもりじゃ。魔神ヴィルザハード復活を阻止するための会議」
返事はできない。
反応もしない。
黙って耳を傾ける。
「エルフ国で管理されておる『エルフの耳』と、魚人族が管理する『ポテルタンの水槍』。そして帝国の『アースアースの鉱石』。この3つをまとめて、厳重に保管しようという会議」
3つも!
残りの3つが、同じ場所にあるのは、ありがたいことだ。
「しかし、国の管理する《神の遺物》を、他国に引き渡すわけにはいかず、話し合いがこじれておる。その会議を襲うことに成功すれば、一度に3つもの《神の遺物》を手に入れることが出来るんじゃが」
もし3つの破壊に成功すれば、もう7つもの《神の遺物》を破壊したことになる。残り1つにリーチをかけることになる。
《神の遺物》について考えるのも久しぶりのことのはずなのに、つい先日までそのことを考えていたような気がする。
(さて、どうしたものか……)
バートリーの3国会議。
どうにか襲撃して、その3つを手に入れたいのだが、ケネスはこの鉄壁の城に囚われたままだ。魔法も使えないようでは、会議を襲撃しても返り討ちに合うことになるのは明白だ。
「私にひとつ良い考えがある。ケネスは返事が出来んであろうから、黙って聞いておれ」
ガルシアに連絡をとって、テロを起こしてもらう。それを陽動に、城から脱出してみてはどうか――というのがヴィルザの案だった。
城を出て、ヴィルザハード城に行けば、なんとかなる……ということだ。何とかってなんだよ、腕輪はどうするんだよ――と思ったが、質問をすることは出来なかった。
ガルシアに連絡を取るには、ネックレスを使えば良い――と言っていた。まさか、このネックレスにそんな機能があったとは驚きだが、うなずけなくもないのだ。あの人のケネスにたいする執着心は、異常だった。それぐらいは、しでかしてもオカシクはない。このネックレスは文字通り、ガルシアの首輪だったというわけだ。
「ちょっと、トイレに行ってくる」
「じゃあ、オレも」
ネックレスを使うにしても、話しかけなければいけない。その隙を作ろうと思ったのだが、ロレンスが一緒に付いて来た。
(間違いないな)
ロレンスたちも、ケネスのことを見張っているのだ。もしかすると、魔神ヴィルザハードの件を、バートリーから聞いたのかもしれない。今まで仲間だと思っていた人たちが、自分の見張りだったと思うと、すこし悲しくなる。
厠塔へ行く。
排泄物は呪術でつくられた穴に放り込むことで、処理される仕組みになっている。その厠塔は城の北東の隅に建立されており、大きな窓がひとつあった。その窓から外をのぞくと、チョウド外郭の上をみおろすことが出来た。
(ここから跳び下りれば……)
外に逃げ出すことは出来そうだが、縄か何かが欲しい……。あ、と思った。毎朝、バートリーさんに呼び出される部屋に、縄が置いてあったような気がするぞ、と思い出したのだ。
「どうかしたか?」
と、ロレンスが尋ねてくる。
「あ、いや、なんでもない」
と、いなしておいた。
「なんだか、最近、バートリーさんはよく外に出て行くな」
と、ケネスはロレンスに話しかけた。
ロレンスに話しかけたフリをして、ヴィルザに話しかけていた。ヴィルザなら、何か知っているかもしれないと思ったのだ。空中を自在に飛びまわれるヴィルザなら、ケネスが何もかもを忘れているあいだに、情報収集をしてくれていてもオカシクはない。案の定。ヴィルザは詳しかった。
「あの女は、3国会議というものに出席するつもりじゃ。魔神ヴィルザハード復活を阻止するための会議」
返事はできない。
反応もしない。
黙って耳を傾ける。
「エルフ国で管理されておる『エルフの耳』と、魚人族が管理する『ポテルタンの水槍』。そして帝国の『アースアースの鉱石』。この3つをまとめて、厳重に保管しようという会議」
3つも!
残りの3つが、同じ場所にあるのは、ありがたいことだ。
「しかし、国の管理する《神の遺物》を、他国に引き渡すわけにはいかず、話し合いがこじれておる。その会議を襲うことに成功すれば、一度に3つもの《神の遺物》を手に入れることが出来るんじゃが」
もし3つの破壊に成功すれば、もう7つもの《神の遺物》を破壊したことになる。残り1つにリーチをかけることになる。
《神の遺物》について考えるのも久しぶりのことのはずなのに、つい先日までそのことを考えていたような気がする。
(さて、どうしたものか……)
バートリーの3国会議。
どうにか襲撃して、その3つを手に入れたいのだが、ケネスはこの鉄壁の城に囚われたままだ。魔法も使えないようでは、会議を襲撃しても返り討ちに合うことになるのは明白だ。
「私にひとつ良い考えがある。ケネスは返事が出来んであろうから、黙って聞いておれ」
ガルシアに連絡をとって、テロを起こしてもらう。それを陽動に、城から脱出してみてはどうか――というのがヴィルザの案だった。
城を出て、ヴィルザハード城に行けば、なんとかなる……ということだ。何とかってなんだよ、腕輪はどうするんだよ――と思ったが、質問をすることは出来なかった。
ガルシアに連絡を取るには、ネックレスを使えば良い――と言っていた。まさか、このネックレスにそんな機能があったとは驚きだが、うなずけなくもないのだ。あの人のケネスにたいする執着心は、異常だった。それぐらいは、しでかしてもオカシクはない。このネックレスは文字通り、ガルシアの首輪だったというわけだ。
「ちょっと、トイレに行ってくる」
「じゃあ、オレも」
ネックレスを使うにしても、話しかけなければいけない。その隙を作ろうと思ったのだが、ロレンスが一緒に付いて来た。
(間違いないな)
ロレンスたちも、ケネスのことを見張っているのだ。もしかすると、魔神ヴィルザハードの件を、バートリーから聞いたのかもしれない。今まで仲間だと思っていた人たちが、自分の見張りだったと思うと、すこし悲しくなる。
厠塔へ行く。
排泄物は呪術でつくられた穴に放り込むことで、処理される仕組みになっている。その厠塔は城の北東の隅に建立されており、大きな窓がひとつあった。その窓から外をのぞくと、チョウド外郭の上をみおろすことが出来た。
(ここから跳び下りれば……)
外に逃げ出すことは出来そうだが、縄か何かが欲しい……。あ、と思った。毎朝、バートリーさんに呼び出される部屋に、縄が置いてあったような気がするぞ、と思い出したのだ。
「どうかしたか?」
と、ロレンスが尋ねてくる。
「あ、いや、なんでもない」
と、いなしておいた。
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