《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第8-6話「監視だらけの城」

 翌朝。



 いつものようにバートリーに呼ばれた。いつも同じ部屋に呼ばれる。いったい何の部屋なのかわからない。物置のようなものかもしれない。机上にはダガーが転がっているし、木樽には縄が詰め込まれている。物置にしては、ベッドなども置いてある。



 名前や出自を名乗るように言われた。ケネスはよどみなく答えた。いつもと同じ、何も変わらない一日。けれど、バートリーの表情は怪訝にゆがんでいた。間違いさがしをするような熱心な目つきで、ケネスの表情を見つめてきた。



「そんなに見られると、恥ずかしいですよ」



「私は今日、すこし用事があって帝都を出ることになります」



「そうですか」



「またガルシア率いるテロリストの襲撃があるかもしれません。気を付けてください」



「はい」



 ガルシアのテロ活動はヒンパンだった。そして、ガルシアはこの帝都を知り尽くしている。王国軍よりはるかに厄介な相手だった。



「それからケネスは、ガルシア・スプラウド捜索の任務からは、外れてください」



「じゃあ、オレは何をすれば良いんです?」



「ユックリ休んでいてください。クロノ小隊長にもそう伝えておいてください。ただ、城の中からは出ないように」



「わかりました」
 話は終わりだろうと、ケネスは立ち上がった。



「それからもうひとつ」
 と、バートリーは呼びとめてきた。



「まだ、何か?」



「あなたにはしばらく、これをつけさせてもらいます。お気を悪くしないでくださいね」



 魔法封じの手枷だった。
 ガルシアとの接触によって、バートリーはケネスのことを疑っているようだ。



「どうして、そんなものを?」



「あまり気になさらず。上官命令だと思ってください。ちゃんと鎖は取って、腕輪のようにしてあるので、日常生活に支障はありません」



「……了解です」
 大人しく腕輪をつけられた。



 バートリーの尋問から解放される。練兵場を迂回して、主城門のほうに行くと、クロノたちは城門棟で待っている。急遽休みになった旨を伝えると、ロレンスが大きなため息を吐いた。



「やっぱり、あれかな。オレが昨日、勝手な行動を取ったから、うちの小隊は任務から外されたってことかな?」



「そんなんじゃないだろ。気にするなよ」
 と、ケネスはロレンスの肩を叩いた。



「だったら良いけど。……ん?」
 ロレンスはケネスの顔を見つめて、不思議そうな顔をした。



「どうかしたか?」



「いや。今日のケネスはずいぶんとイキイキした表情をしてるな――って思ってさ」



「そうか?」
 と、ケネスは素知らぬフリをして、ポケットから煙草を取り出した。人差し指を立てて、魔法陣を展開しようとしたが、魔法陣が発生しなかった。腕輪のせいだ。諦めて煙草をポケットにしまいこんだ。



 休みになったなら――ということで、クロノとサマルの2人は買い出しに向かった。ケネスとロレンスは部屋に戻った。



「6年か……」
 と、ケネスはふと呟いた。



「学院を卒業してからか? そう言えば、あのときケネスは帝都の闘技大会に出て来なかったんだよな。ガッカリしたぜ」



「いろいろあって、出られなかったんだ」



「バートリー魔法長官から聞いてるよ。体調不良だったんだろ」



「ああ」



 そういうことになっているようだ。しかし、真実は違う。ケネスはすべて思い出した。自分が魔神ヴィルザハードとの時間を築きあげてきたことを。そして、そのことをバートリーに勘付かれて、無効化のポーションを飲まされたこと。すべて思い出した。



 そして今、この部屋にはロレンスとケネスだけでなく、もう一人、紅の髪をした少女の姿がある。時間の流れを感じさせない、6年前の姿のままだった。ボンヤリとした表情で、退屈そうに浮かんでいる。



 感動の再会――といきたいところだが、ケネスは見えないフリを続けている。ここは、バートリーに常に見張られている。なにより、クロノ小隊の仲間たちが――ロレンスが、バートリーの指示を受けて、ケネスを見張っているとも考えられる。



 ボロは出せない。



 ヴィルザが見えていないフリをしなくては、ならない。ヴィルザのことを思い出したと、知られれば、またしても、記憶を弄られる可能性がある。



「どうした? ボーッとして」
 と、ロレンスが尋ねてくる。



「いや。ずいぶん時間をムダにしてしまった気がして」



「ムダってことはないだろ。帝都で働いてるんだから」



「そうだな」
 そういうことではない。



神の遺物アーティファクト》は残り4つなのだ。6年もあれば、もうすでに事を成し遂げていただろうと思う。そう思うと、過ぎ去った時間がモッタイナイ。



「ちょっとトイレに行ってくる」
 と、ロレンスは部屋を出た。



 1人になった。
 いや。
 ホントウに1人か?



 石材の隙間や壁の隙間から、誰かが監視しているような気がしてならない。



(とりあえず……)



 ケネスがすべて思い出したことを、ヴィルザに伝えなくてはならない。ケネスはジッとヴィルザに視線を送った。ケネスの記憶がよみがえったことを、ヴィルザはいまだに気づいていない。ケネスの視線に、何か感じ取ったようで、ヴィルザはハッとした表情で近づいてきた。



『ようやくすべて思い出した』



 机の上に置いていた洋紙に、ペンで書いた。いつもクロノが使っているものだ。まさか、クロノが使っているメモ用紙が、こんな形で役立つとは思わなかった。



「久しぶりじゃな。ケネスよ。ようやく思い出したか。まさか6年もの時間がかかるとは思わなんだ」



『悪いが、返事はできない』



「わかっておる。この部屋は、完全に監視されておる。クロノ。サマル。ロレンスにもバートリーの息がかかっておる。コゾウの動向に注意を払うように言われておるからな。勘付かれるなよ」



『オレはどうすれば良い?』



「とりあえず、この城から出ることじゃな。私の魔法で――と言いたいところじゃが、あの小娘に、妙な腕輪をはめられてしもうたな」



 腕輪があると、魔法陣を展開することが出来ないのだ。



『抵抗しようかとも思ったけど、ヴィルザのことを思い出していないフリをしておくほうが得策かと思った』



「まぁ、それは賢い選択だとは思うがな。その腕輪は外せんのか?」



『ムリだ。バートリーさんが、腕輪を外すカギを持ってる』



「とにかく、この城にいれば、コゾウは常に見張られておるぞ。迂闊なことは何も出来ん」



 そろそろロレンスが戻ってきそうだ。



 魔法を使えないので火打金で火種をつくり、灰皿の上でメモ用紙を燃やすことにした。ヴィルザとの会話の記録を見られるのもマズイ。案の定、ロレンスの足音が近づいてきた。ケネスは素知らぬふりをして、煙草をふかしていた。

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