《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第8-5話「よみがえる記憶」
その夜――。
クロノとサマル。ロレンスとケネス。4人はベッドに寝転んでいた。そんな時だ。カーン、カーン、カーン。と鐘が鳴り響いた。窓から外を見ると、厩舎のほうから火の手があがっているのが見えた。
《通話》が送られてくる。
『各部隊に報告。第一皇女派のガルシア・スプラウド率いるテロリストが、城に襲撃をかけてきた。各部隊はただちに、戦闘態勢を整えよ』
ということだ。
それを合図に眠りかけていた4人は目を覚ました。
『私たちの作戦は、ガルシア・スプラウドの確保。ただし、ケネス・カートルドはただちに、魔法長官執務室に行くように』
と、クロノから指示が出た。
「オレだけどうして、執務室なんです?」
クロノはかぶりを振った。
『わからない。けれど、私のもとにバートリー魔法長官から《通話》が入った』
「そうですか」
ホントに気に入られてるよな――とサマルが言った。そうなんだろうか? ホントウに気に入られているだけなんだろうか。ケネスは首をかしげた。3人が現場に駆けつけるとは逆に、ケネスは言われたとおり、魔法長官の執務室に向かうことにした。
執務室は、城の中にある。小隊の兵舎は内郭よりも外にあるために、ケネスは主城門のあるほうへと向かった。向かおうとしたのだが、厩舎が焼かれており、ただでは主城門へと続く道を通れそうになかった。どうしようかと立ち尽くしていると、不意にケネスの口元に手をあてられた。振り向くことも出来ない。そのまま、穀物庫のなかへと連れ込まれることになった。穀物個には木箱が大量に置かれている。木箱には穀類が詰まっている。
「しーっ。声をあげるなよ」
「ガルシアさん」
「今日の昼はユックリと話をしている暇はなかったからな。今なら、時間がとれそうだ」
「どうして、テロなんて」
尋ねた。
ガルシアは、小さく笑った。
「第一皇女側についていた者たちのテロ活動。そう見せかけて、私はずっと君を探していたのだ」
「オレを?」
「そうだ。昼にも言ったが、以前の君を取り戻してもらうためにな。おそらく君は、何かしらのつながりがあったのだろうと思う」
「なんですか。つながりって」
「魔神ヴィルザハード。君はそのチカラを持っていたはずだ。それを、どこかに忘れてきてしまった。おそらくはバートリーは、その記憶をケネスから消したのだ」
「魔神……ヴィルザハード……」
「私は君のチカラが、すべて解き放たれるところを見てみたい。それはこの世界にとって、危険なことかもしれない。それでも君のなかにあるものを、こじ開けてみたいのだ」
頭が痛い。
魔神ヴィルザハード。
神話に登場する、最悪の魔神の名だ。その名を、オレは知っている。知識としてではなくて、もっと親しい者の名として知っているはずだ。ケネスは頭を抱えた。
「思い出せ。目を背けるな。私に見せてくれ。君の神髄を」
ガルシアの呼びかけに、殺されていたケネスの記憶が釣り上げられようとしていた。帝国騎士たちが駆けつけてきた。
「チッ。ゆっくりと話している時間はなさそうだな。もし何かあったときは、それを使え。私に声が届くようになっている」
ガルシアはそう言って、ケネスの首元にかかっているネックレスを指差した。それは、かつてケネスが、ハーディアル魔術学院に入学した当初、ガルシアからもらったものだった。
ガルシアは危機を敏感に感じ取ったようで、「昔の君に戻ってくれることを祈る」と言い残して立ち去った。駆けつけた帝国騎士たちのなかには、バートリーもいた。帝国騎士たちは、ガルシアを追いかけるために出て行き、穀物庫にはバートリーと二人きりになった。
「大丈夫ですか?」
と、バートリーは尋ねてきた。
「ええ。大丈夫です」
「ホントウに?」
バートリーの目は疑りぶかかった。まるで浮気を疑う女の目だった。どこか、何かに違和感がないかと、観察してくる。
「そんなに見ても、なんともありませんよ」
「ガルシアに何か余計なことを吹きこまれたんじゃないかと思いまして」
「なんでもありませんって」
くくっ、とケネスは暗く、微笑んだ。
その目の端では、紅の髪をした少女の姿をとらえていた。
クロノとサマル。ロレンスとケネス。4人はベッドに寝転んでいた。そんな時だ。カーン、カーン、カーン。と鐘が鳴り響いた。窓から外を見ると、厩舎のほうから火の手があがっているのが見えた。
《通話》が送られてくる。
『各部隊に報告。第一皇女派のガルシア・スプラウド率いるテロリストが、城に襲撃をかけてきた。各部隊はただちに、戦闘態勢を整えよ』
ということだ。
それを合図に眠りかけていた4人は目を覚ました。
『私たちの作戦は、ガルシア・スプラウドの確保。ただし、ケネス・カートルドはただちに、魔法長官執務室に行くように』
と、クロノから指示が出た。
「オレだけどうして、執務室なんです?」
クロノはかぶりを振った。
『わからない。けれど、私のもとにバートリー魔法長官から《通話》が入った』
「そうですか」
ホントに気に入られてるよな――とサマルが言った。そうなんだろうか? ホントウに気に入られているだけなんだろうか。ケネスは首をかしげた。3人が現場に駆けつけるとは逆に、ケネスは言われたとおり、魔法長官の執務室に向かうことにした。
執務室は、城の中にある。小隊の兵舎は内郭よりも外にあるために、ケネスは主城門のあるほうへと向かった。向かおうとしたのだが、厩舎が焼かれており、ただでは主城門へと続く道を通れそうになかった。どうしようかと立ち尽くしていると、不意にケネスの口元に手をあてられた。振り向くことも出来ない。そのまま、穀物庫のなかへと連れ込まれることになった。穀物個には木箱が大量に置かれている。木箱には穀類が詰まっている。
「しーっ。声をあげるなよ」
「ガルシアさん」
「今日の昼はユックリと話をしている暇はなかったからな。今なら、時間がとれそうだ」
「どうして、テロなんて」
尋ねた。
ガルシアは、小さく笑った。
「第一皇女側についていた者たちのテロ活動。そう見せかけて、私はずっと君を探していたのだ」
「オレを?」
「そうだ。昼にも言ったが、以前の君を取り戻してもらうためにな。おそらく君は、何かしらのつながりがあったのだろうと思う」
「なんですか。つながりって」
「魔神ヴィルザハード。君はそのチカラを持っていたはずだ。それを、どこかに忘れてきてしまった。おそらくはバートリーは、その記憶をケネスから消したのだ」
「魔神……ヴィルザハード……」
「私は君のチカラが、すべて解き放たれるところを見てみたい。それはこの世界にとって、危険なことかもしれない。それでも君のなかにあるものを、こじ開けてみたいのだ」
頭が痛い。
魔神ヴィルザハード。
神話に登場する、最悪の魔神の名だ。その名を、オレは知っている。知識としてではなくて、もっと親しい者の名として知っているはずだ。ケネスは頭を抱えた。
「思い出せ。目を背けるな。私に見せてくれ。君の神髄を」
ガルシアの呼びかけに、殺されていたケネスの記憶が釣り上げられようとしていた。帝国騎士たちが駆けつけてきた。
「チッ。ゆっくりと話している時間はなさそうだな。もし何かあったときは、それを使え。私に声が届くようになっている」
ガルシアはそう言って、ケネスの首元にかかっているネックレスを指差した。それは、かつてケネスが、ハーディアル魔術学院に入学した当初、ガルシアからもらったものだった。
ガルシアは危機を敏感に感じ取ったようで、「昔の君に戻ってくれることを祈る」と言い残して立ち去った。駆けつけた帝国騎士たちのなかには、バートリーもいた。帝国騎士たちは、ガルシアを追いかけるために出て行き、穀物庫にはバートリーと二人きりになった。
「大丈夫ですか?」
と、バートリーは尋ねてきた。
「ええ。大丈夫です」
「ホントウに?」
バートリーの目は疑りぶかかった。まるで浮気を疑う女の目だった。どこか、何かに違和感がないかと、観察してくる。
「そんなに見ても、なんともありませんよ」
「ガルシアに何か余計なことを吹きこまれたんじゃないかと思いまして」
「なんでもありませんって」
くくっ、とケネスは暗く、微笑んだ。
その目の端では、紅の髪をした少女の姿をとらえていた。
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