《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第8-2話「紅の気配」

 帝国には大きな事件があった。



 まず皇帝陛下が崩御された。それに合わせて、皇位継承争いが勃発。第一皇子と第一皇女の激闘が繰り広げられた。結果。第一皇子が王位継承権を握ることになった。第一皇子が着任するや否や、第一皇女派についていた者たちを処分しはじめた。



 第一皇女側の陣営についていた筆頭が、かつての魔法長官であるガルシア・スプラウド。ロレンスの姉だ。ガルシアは第一皇女を連れて、帝都から逃げ出した。ガルシアが退いた魔法長官の席には、バートリーが座ることになったのだ。



 そして今――。



『第一皇女側についていた者たちは、いまもなお帝都に潜伏して、テロ活動を行っている。今日はその情報収集にあたる』



 クロノが作戦概要を説明してくれた。



 帝都の南通りで、ガルシア・スプラウドらしき人影を見たという情報があったということだ。傾国の美姫とまで言われた、かつての帝国魔法長官は、いまはテロリストの頭領だ。探し出して、捕えよ――ということだった。



「でも、良いのか? ロレンスの姉さんだろ」
 ロレンスは鼻の頭に乗っている細雪を指で払ってから答えた。



「良いんだよ。むしろ、敵となってくれたほうが好都合だ。あの人を認めさせるには、チカラでねじ伏せるしかないんだ。敵対するってこともまた、認めてもらってることだから」



「そんなもんか」



 ロレンスとガルシアの関係が、なぜか羨ましく思えた。ロレンスは強くならなくちゃいけない理由があるのだ。ガルシアという存在が、ロレンスを強くさせる。



(オレにも……)



 すぐ傍に誰かがいた気がする。どうしても思い出せない。思い出せないのだが、ときおり、紅の気配がふとよぎることがあるのだ。



 クロノに連れられて、帝都の南通りに入った。石畳の地面にも薄っすらと雪が積もっている。道行く人たちが、それを蹴散らしていた。まだ早朝だが、空は曇っている。そのせいか呪術のほどこされた外套が、明かりを発していた。



「この通りに、ガルシアさんが?」



『そういう情報が入ってる。ここから各自で情報を収集する。私たちの任務の優先は、あくまで情報収集。めぼしい情報を手に入れたら、増援を呼ぶ。単独で先行しないこと。それでは散開』



 クロノはケネスより、1つ年上だから、26歳になるはずだ。が、学生の頃からマッタク変わっていない。ケネスの腰辺りまでしか身長がなくて、子供でも充分通じる風体をしている。



 その小さな後ろ姿を、ケネスはボーッと見つめていた。すごく目に馴染んだ背丈だと思ったのだ。



「それじゃ、オレは武具屋でも当たるとするかな」
 とロレンスも去って行った。



 ケネスも無為にブラブラと歩いた。情報収集しろという任務には、あまり積極的になれなかった。ポケットから煙草を取り出す。ユックリ時間をかけて一本吸いつくすことにした。煙草の先が、紅く灯っては、黒く焦げてを繰り返す。ケムリが亡霊みたいに、灰色の空に消えていった。時間が経つごとに、人差し指と中指に熱が迫ってきた。シケモクを床に落とした。淡雪のなかに沈む。踏みつぶす。モンスターの死骸みたいに、無惨な姿になった。



「何が真実で、何が偽りか……」



 クロノ。サマル。ロレンス。3人のことは覚えている。学院生活を過ごした仲だ。でもなぜか、その記憶を疑ってしまう。



 6年間。



 デラル帝国のために尽くしてきた。でも、どこか現実感がない。まるで空白の6年だった。大人になったからだろうか? 子供の時に過ごしていた濃密な時間は、もう取り戻すことは出来ない。大人になれば、時間は手に平から滑り落ちて行ってしまう。



『……薬じゃな。それと洗脳』
「誰だ?」



 すぐ近くで声がした。ホントウに耳元でささやかれたような声にビックリした。周囲を見渡しても、道行く人ばかりだった。なつかしい声に思われた。けれど、その素性がわからない。



『コゾウは、無効化の薬を飲まされて、《可視化》を失った。そして、薬と魔法によって記憶を弄られた』



「……」
《通話》ではない。



 かすかだが、ちゃんと鼓膜を振るわせる声音だ。罠か? 警戒しようと心構えをした。その声は不思議な温もりを帯びており、凍てついた警戒心を溶かしてくるかのようだった。



『案ずることはない。いつも、傍におる』
「幻聴か?」
『そこの角を右に曲がれ』



 ストリートを歩いていたのだが、すぐ右手に裏路地へと通じる道があった。幻聴を信用しても良いのかわからないが、その声に従って歩みを進める決心をした。

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コメント

  • ノベルバユーザー287797

    連日連載お疲れ様です。
    面白くて日々の楽しみにしてます。
    大変だとは思いますが頑張ってください‼︎

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