《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第7-11話「終幕のはじまり」

 バートリーに捕えられて2日が経った。帝国闘技大会に出ることは出来なかった。けれど、不自由なく過ごすことが出来た。ふかふかのベッドで目を覚ますと、パンとスープと果物が出される。



 昼にはバートリーが尋問をしに来て、夕刻にはシャワーを浴びる。そして夜にはまた、ふかふかのベッドに沈む。



 ただし、制限もあった。部屋から出られないことと、魔法封じの手錠を外せないことだ。ヴィルザと話をしたかったけれど、ヴィルザはずっと窓辺に腰かけたままだった。ケネスも話しかけることはしなかった。おそらく、どこからかケネスを監視しているはずだ。たとえば部屋の天井から、たとえば壁の穴から……。



 ヴィルザとの会話は、ボロを出すことになる。ガルシアさんに助けを呼べないかとも考えたが、魔法を封じられており、通話もできなかった。



(魔神ヴィルザハードの封印を解くのは、たしかに危険なことだ)



 それはわかっている。
 デラル帝国にとって――世界にとって危険なことだ。もし制御できなかったとき、世界が潰れる可能性すらある。



 でも――。
 非常にワガママなことだとわかっていても、ケネスはヴィルザの復活を決行するつもりだった。



 理由の1つは、ヴィルザへの信頼だ。
 もう世界征服はしないと言っている。人を痛めつけることもしないと誓ってくれた。だったら、大丈夫だろうという信頼。



 理由の2つ目は、ヴィルザへの憐憫だ。
 ずっと孤独な魔神は、あまりにカワイソウだ。



 理由の3つ目は、死んだ人たちを生き返らせて、故郷をもとに戻してくれるという甘言だ。
 ロールが生き返れば、ロビンが悲しむこともないはずなのだ。
 万事丸くおさまる。



「ケネスさま。闘技大会の決勝戦が行われています」
 と、バートリーが言った。



 外はもう夕刻。
 闘技大会の熱狂は、ここにまで聞こえている。



「どんな組み合わせです?」



「ガルシア・スプラウドさまの弟である、ロレンス・スプラウドさまが、決勝にまで残ったようです」



「……ロレンスが。そうですか」



 その事実に、ケネスは感動を覚えた。姉に認めてもらいたい一心で、努力し続けてきたロレンスが決勝の舞台に立っているのだ。あの熱狂の渦の中にいるのだと思うと、なぜか嬉しく感じた。



「ガルシアさんは、ロレンスのことをチョットは認めたんじゃないですか?」
 と、ケネスは尋ねた。



「いえ。ガルシアさまは、ずっとケネスさまのことを探しておられて、闘技大会どころではないようです」



「……それは喜んで良いんですかね」



 探してくれているのは嬉しいが、ロレンスの邪魔をしたと思うと、複雑な気持ちではある。



「ガルシアさまは、チカラを求める人です。ケネスさまが、仮に魔神ヴィルザハードの生き写しだったとして」



「面白い考えですね」



 仮にですよ、とバートリーは続けた。



「ケネスさまが帝国を滅ぼそうと考えていたとしても、ガルシアさんは、ケネスさまを求めると思います。いや。むしろ、よりいっそうケネスさまを求めるだろうと思います」



「世界を滅ぼそうとしても?」



「ええ。ガルシアさまは、そういう人です。国よりも、チカラを求める人です。しかし私はそうではない。何よりも、帝国をイチバンに考えています。それが私とガルシアさまの違いです」



「そう言えば、ガルシアさんは第一皇女派についてるそうですね。それで、バートリーさんは第一皇子派だとか?」



 はい、とバートリーはうなずく。



「帝国は今、厳しいときに迫られています。皇帝陛下がいつ崩御なさるかわからない。次なる皇帝が選ばれます。そのとき、もしかすると帝国は二分してしまうかもしれません。そのとき、ケネスさまは私の傍で監視しておきたい」



「残念ながら、オレはもう第一皇女派につく約束をしてしまっているんですよ」



「いえ。私の側。第一皇子派についていただきます」



「ずいぶんと強引ですね」



「ケネスさまを監視しておくためには、常に私のかたわらに居てもらうのがイチバンです。ですので、これを……」



 バートリーはそう言うと、フラスコに満たされた紫色の液体を取り出した。



「それは?」



「ケネスさまもよくご存知のはずです。無効化のキノコで作った、無効化のポーションです」



「それをどうするんです?」
「ケネスさまに飲んでいただきます」
「まさか……」



 スキルさえも奪うという、その無効化のポーション。ヴィルザと出会った当初は、自分で飲もうと考えていたことがあったのだ。まさか3年の月日を巡りめぐって、ふたたびその発想に戻ってくるとは思わなかった。



「この薬を飲めば、ケネスさまは魔神のチカラを失う。私はそう考えております」



「……よせ」
 飲めば、《可視化》がなくなる。ヴィルザが見えなくなる。



「表情が一変しましたね。図星ですか」



「そんなことをすれば、オレという存在意義がなくなる」



「心配ありません。どういう結果になろうとも、私が保護いたします」



 両脇にいた騎士が、ケネスのことを押さえつけた。



「やめろォ」
 ベッドに押し倒される。



「強引なやり方で、申し訳ありません。しかし、私はホントウに、あなたのことを考えているのです」



 バートリーが、ケネスの口にポーションを流しこんできた。飲むまいと必死に抵抗した。けれど、何度も口の中に注ぎこまれては、吐き出しきれない。いくらか嚥下してしまった。



「やめろォォォォ――ッ」



 かすかに声が聞こえる。
 だから言ったであろうが。仮に私が見えなくなっても、私は常に傍におる。だから動じるな。狼狽するな。私はいつも傍におる……。

「《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く