《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第7-4話「結婚指輪」

 帝都に入る。人の視線がくすぐったかった。



『あれが帝国12魔術師の?』『ああ。間違いないよ。《帝国の劫火》だ』『すごーい。ホントにまだ若いじゃん』『しかもけっこう良い男』……という案配だ。



「人の目というものは、変わるもんじゃなぁ。以前、帝都におったときは、バカにされておったのにな」
 ヴィルザは呆れたように言った。



「そういうもんだろ。結果を出さなくちゃ、誰も認めてくれやしないんだ。悔しいけどさ。でも、ヴィルザあってこその《帝国の劫火》ではあるんだけどな」



 まだまだ、完全に自立したとは言えない。



「なに。最近はもう私がチカラを使うことも減ってきたわ。それより、ハンバーガーは売っておらんのか?」



「どこかで売ってると思うけど、そう言えばもう昼時だな。買いに行こうぜ」



「うむ」



 帝都の中央には給水泉のある広場がある。以前までは、水をくむ人で行列になるのだが、今日は人がすくなかった。近くにいた水売りが事情を教えてくれた。最近では、どこも呪術でのライフラインが出来上がっており、給水栓から水をくむ人も少なくなってきたそうだ。「おかげで商売あがったりだぜ」ということだ。都市も時間とともに進化をし続けているということだ。



 ハンバーガーを買っていたら、ヴィルザとはぐれた。焦ったけれど、すぐに見つけることが出来た。ヴィルザがオレから離れるなんて珍しいこともある――とケネスは思った。ヴィルザはストリート沿いにあるショーウィンドウを、陶然と見つめていた。



「どうしたんだ?」
「あ? いや。なんでもない。チッとな」



 ヴィルザが見ていたショーウィンドウに目をやる。人間の手を模した木の模型が、大量に並べられていた。その指々には、煌びやかに輝く指輪がはめられている。



「これ、見てたのか」



「まぁ、興味本位でな。人間は何かと着飾りよるから、興味深い」


 ヴィルザは素っ気ない態度をつくろっていたけれど、その内心が見えたような気がした。つけてみたい。そう思ったのだろう。でも、ヴィルザはこの世の装飾を身に着けることが出来ない。そんな女の子らしい喜びも封印されている。



(待てよ)
 と、ケネスは思う。



 本来、ヴィルザは食事を摂ることも出来ない。摂る必要がないとも言っていた。けれど、ケネスを介すれば食べることが出来る。たとえば、ケチャップやらマヨネーズを口に付けることもできる。だったら、ケネスがつけてやれば、ヴィルザが指輪をはめることが出来ても不思議ではない。



 その場合、傍から見た場合は、どうなってるんだろうか?



 指輪だけが浮いてるように見えるのか。それとも、指輪も周囲の目から見えなくなってしまうのか……。



「魔神でも、こういうものに興味が惹かれるんだな」



「だから、見ていただけと言ったであろうが」



 結婚指輪エンゲージリング。そう書かれていた。値段を見ると安いものでも10万ダリアはしている。金貨10枚は、なかなか手に入るものではない。しかも、結婚指輪は1つ買っても意味がない。都合20万ダリアだ。



「冒険者組合に行くか。帝都の闘技大会は明後日だし、時間余ってるしな」



 稼ぎの良いクエストならば、20万ダリアを一度に稼げるものも珍しくはない。それ相応の難易度になるのだけれど。

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