《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第6-8話「学院祭 Ⅷ」
生徒会室を出る。
「いったいどうなってるんだ? 媚薬って言ってたけど」
「ケネスぅ」
と今度はヴィルザが抱き着いてきた。
「うわっ。お前もかよ!」
「私もここ数千年は、男とまぐわっておらんじゃ。私だって欲求を覚えることはある」
背中からからみついてくるのだが、この身長差だとまるで、ケネスがヴィルザのことを負ぶっているような図だった。ヴィルザのひかえめな乳房が、ケネスの背中でやわらかく潰れている感触があった。
「オレだって男なんだからな。あんまり、挑発してると、マジで襲うぞ」
「私は構わんぞ。押し倒されるのも悪くはない。童貞をもらってやる」
マジで襲ってやろうかという考えがよぎったのだけれど、媚薬に誘われたこんな異常事態で襲うというのも気が引ける。
「何が起きてるんだよ」
「かなり強力な媚薬が、学院内に蔓延していると見て間違いないのぉ」
「ここは5階だぞ」
もしや下はヤバいことになっているんじゃないか。危惧して校庭を見下ろすと、案の定だった。遠目なのでよくわからないが、男と女がくんずほぐれつ乱痴気騒ぎの様相をていしている。
「これほど強力な媚薬……。私には覚えがある。《神の遺物》。愛の女神アクロデリアの香水」
こんなフザケタ騒ぎに、まさか《神の遺物》が関わってくるとは思わなかった。
「近くにあるってことか」
「間違いない。この学院内のどこかにはある。使われておる」
さきほどガルシアが言っていた。
帝都から『アースアースの鉱石』と『アクロデリアの香水』が持ち出されて、目下捜索中だ――と。
「でも、誰がなんのために」
「コゾウを抹殺するための騒ぎじゃ。気を付けろ」
ヴィルザはケネスの背中にしがみついたまま、耳元でささやくように言った。
「オレを?」
「トウゼンであろう。『アースアースの鉱石』をグラトンに渡した者と、同じヤツが関わっているとすれば、そいつの狙いはケネスの抹殺であろう」
「クソッ、なんで命を狙われなくちゃいけないんだ!」
いつどこから刺客がやって来るか、わからない。魔術実践学の期末テストからは、ほとんど、そういう警戒心を抱いて過ごしてきた。実際に刺客がやって来たのは2回だけだが、警戒はずっとしておかなければならない。精神的に疲れる、この頃、煙草を吸う量も各段に増えてきた。
「ひとつ考えられるとすれば、第一皇子の手の者か」
「第一皇子が、どうしてオレを殺そうとするんだよ」
「第一皇女やガルシア・スプラウドの入れ込み具合から見れば、ケネスの功績というのは、帝国にとってかなりの大きいものらしい。軍に入れば、ケネスは伯爵ないし、子爵程度の影響力を持つと考えても良い」
「オレが?」
それだけのことは、やって来たであろう――とヴィルザは続けた。
「影響力のあるケネスが第一皇女側につくことを怖れて、殺しにかかって来た――という考えも出来る」
「そんな殺生な」
「あるいは――これは私の予想なのじゃが」
「なんだ? 他にもあるのか」
「気づかれておるのではないか」
「だから、なにに?」
ヴィルザはさらに口もとを寄せてきて、男みたいに低い声音で言った。
「魔神ヴィルザハード復活のために、《神の遺物》を破壊して回っていること。気づいた者がおるのではないか?」
それを聞いて、ケネスは後頭部をグワンと殴られたような衝撃に立ちすくんだ。
たしかにケネスは魔神ヴィルザを復活させようと目論んでいる。その考えは、傍から見ると、狂気の沙汰としか思えないはずだ。魔神ヴィルザハードがそんなに悪いヤツじゃないってことは、ケネスは知っている。でも、他の誰もそのことを知らない。あくまで世界を恐怖のドン底に陥れた魔神でしかない。
「いや。気づかれてるはずがない」
《神の遺物》はただ強力なマジック・アイテムというに過ぎない。実はそこに呪痕が刻まれており、八角封魔術のカギになっていることは、ケネスしか知らないことのはずだ。この《可視化》があるから、視えることなのだ。
だから。
「仮に、《神の遺物》を破壊して回っていることを、悟られても、ヴィルザとの関係を疑われるようなことはない」
断定できる。
「気づかれてなければ良いがな」
と、ヴィルザは深刻な口調でつぶやいた。
「いったいどうなってるんだ? 媚薬って言ってたけど」
「ケネスぅ」
と今度はヴィルザが抱き着いてきた。
「うわっ。お前もかよ!」
「私もここ数千年は、男とまぐわっておらんじゃ。私だって欲求を覚えることはある」
背中からからみついてくるのだが、この身長差だとまるで、ケネスがヴィルザのことを負ぶっているような図だった。ヴィルザのひかえめな乳房が、ケネスの背中でやわらかく潰れている感触があった。
「オレだって男なんだからな。あんまり、挑発してると、マジで襲うぞ」
「私は構わんぞ。押し倒されるのも悪くはない。童貞をもらってやる」
マジで襲ってやろうかという考えがよぎったのだけれど、媚薬に誘われたこんな異常事態で襲うというのも気が引ける。
「何が起きてるんだよ」
「かなり強力な媚薬が、学院内に蔓延していると見て間違いないのぉ」
「ここは5階だぞ」
もしや下はヤバいことになっているんじゃないか。危惧して校庭を見下ろすと、案の定だった。遠目なのでよくわからないが、男と女がくんずほぐれつ乱痴気騒ぎの様相をていしている。
「これほど強力な媚薬……。私には覚えがある。《神の遺物》。愛の女神アクロデリアの香水」
こんなフザケタ騒ぎに、まさか《神の遺物》が関わってくるとは思わなかった。
「近くにあるってことか」
「間違いない。この学院内のどこかにはある。使われておる」
さきほどガルシアが言っていた。
帝都から『アースアースの鉱石』と『アクロデリアの香水』が持ち出されて、目下捜索中だ――と。
「でも、誰がなんのために」
「コゾウを抹殺するための騒ぎじゃ。気を付けろ」
ヴィルザはケネスの背中にしがみついたまま、耳元でささやくように言った。
「オレを?」
「トウゼンであろう。『アースアースの鉱石』をグラトンに渡した者と、同じヤツが関わっているとすれば、そいつの狙いはケネスの抹殺であろう」
「クソッ、なんで命を狙われなくちゃいけないんだ!」
いつどこから刺客がやって来るか、わからない。魔術実践学の期末テストからは、ほとんど、そういう警戒心を抱いて過ごしてきた。実際に刺客がやって来たのは2回だけだが、警戒はずっとしておかなければならない。精神的に疲れる、この頃、煙草を吸う量も各段に増えてきた。
「ひとつ考えられるとすれば、第一皇子の手の者か」
「第一皇子が、どうしてオレを殺そうとするんだよ」
「第一皇女やガルシア・スプラウドの入れ込み具合から見れば、ケネスの功績というのは、帝国にとってかなりの大きいものらしい。軍に入れば、ケネスは伯爵ないし、子爵程度の影響力を持つと考えても良い」
「オレが?」
それだけのことは、やって来たであろう――とヴィルザは続けた。
「影響力のあるケネスが第一皇女側につくことを怖れて、殺しにかかって来た――という考えも出来る」
「そんな殺生な」
「あるいは――これは私の予想なのじゃが」
「なんだ? 他にもあるのか」
「気づかれておるのではないか」
「だから、なにに?」
ヴィルザはさらに口もとを寄せてきて、男みたいに低い声音で言った。
「魔神ヴィルザハード復活のために、《神の遺物》を破壊して回っていること。気づいた者がおるのではないか?」
それを聞いて、ケネスは後頭部をグワンと殴られたような衝撃に立ちすくんだ。
たしかにケネスは魔神ヴィルザを復活させようと目論んでいる。その考えは、傍から見ると、狂気の沙汰としか思えないはずだ。魔神ヴィルザハードがそんなに悪いヤツじゃないってことは、ケネスは知っている。でも、他の誰もそのことを知らない。あくまで世界を恐怖のドン底に陥れた魔神でしかない。
「いや。気づかれてるはずがない」
《神の遺物》はただ強力なマジック・アイテムというに過ぎない。実はそこに呪痕が刻まれており、八角封魔術のカギになっていることは、ケネスしか知らないことのはずだ。この《可視化》があるから、視えることなのだ。
だから。
「仮に、《神の遺物》を破壊して回っていることを、悟られても、ヴィルザとの関係を疑われるようなことはない」
断定できる。
「気づかれてなければ良いがな」
と、ヴィルザは深刻な口調でつぶやいた。
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