《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第6-3話「学院祭 Ⅲ」

 外に出る。



 いつも魔術実践学をやっている校庭に、今日は屋台が建ち並んでいる。学院祭ということで、あちこちの店が出張ってきている。



 学生が催しているものもまじっている。揚げ物の香ばしさと、糖類の甘ったるい匂いの入り雑じった、独特な匂いが漂っていた。



 ウソみたいな平和な光景に、ケネスはアッと驚かされる。でも、光が強いほど、闇は濃くなる。故郷を焼かれたり、人を殺したり、誰も知らないところで魔神とつるんだり、最近は命を狙われたり……そんな暗闇で忙しい人間には、別の世界の出来事に見えるのだった。



 ケネスは校舎の壁にもたれかかって、小馬鹿にするような気持ちで、その騒ぎを見つめていた。



「くくっ」
 と、薄ら笑いを浮かべて、煙草に火をつけた。



「あーっ。お久しぶりですねぇ」
 と、声をかけられたので、そっちのほうを見ると、赤毛、緑毛、白毛の3人組がいた。ガルとマスクとテイラの3人だった。会うのはほとんど3年ぶりになる。3人ともマッタク変わらぬ風情だった。マスクが仮面をしているのも同じだし、テイラの短い白髪もそのままだ。




「お久しぶりです」
 と、ケネスは校舎壁から背中を離して、自立した。握手のつもりで差し出したケネスの手を、真っ先につかんできたのはマスクだった。



 この頃、仮面をつけた者たちにたいして警戒心を抱いているので、マスクのその面にもドキッとさせられるものがあったけれど、仮面の絵柄がぜんぜん違っている。マスクの仮面は、木彫りのものにたいして、刺客の仮面は白く塗り込められたものだ。



「ケネスさん。いやーっ。ずいぶんと背が伸びましたね。最初は、見てもわかりませんでしたよ」



「そうですかね」



 言われてみれば、『孤独の放浪者』に出会った当時は、ケネスは3人を見上げていた。今では、見下ろすカッコウになる。



「ご活躍は耳にしておりますよぉ。《帝国の劫火》と言われて、帝国12魔術師の1人になったとか。おめでとうございます」



 男のくせに妙に色気のあるしゃべりかたも、耳になつかしい。



「たいしたことじゃありませんよ。今日は学院祭に?」



「ええ。そのついでに、ケネスさんにも挨拶しておこうと思いましてね。いつかは、名のある魔術師になると思っておりましたよぉ」



「そちらは変わらず冒険者を?」



「いろんな村に回って、身の丈にあったクエストをこなしていますぅ。今では『孤独の放浪者』もなかなか、名のあるパーティになってきたんですよ。今では3人とも、Bランク冒険者ですよぉ」



 マスクとガルとテイラの3人は、ミスリルに輝く銀色のプレートを見せつけた。



「いいですね。オレなんかまだFランクですよ」
 と、ケネスは銅色のプレートを見せる。



「なに言ってるんですかぁ。ケネスさんはすでにAランク相当の冒険者ですよ。アダマンタイトのプレートを授かってもオカシクありません。いや。あるいは、七虹石のプレートであるSランクかもしれませんよぉ」



「はははっ。まさか」
 と、ケネスは愛想笑いで応じておいた。



 Sランク冒険者は、世界でも5人しかいないと言われている。そのうちの1人はSランク冒険者から、帝国12騎士の騎士長となったソーディラス・レオという男だ。《剣製》のスキルは、無限の剣をその場で創造してしまうスキルだと聞いたことがある。



「また機会があれば、一緒にクエストをお願いしますよぉ」
 と、マスクは仮面をはずして、会釈をしてきた。
 木彫りのマスクの内側には、火系魔法の練習でヤケドしたと言われている、ヤケド痕があった。



「こちらこそ」



「あ、あの……」
 と、テイラが切羽詰ったように話しかけてきた。テイラは木の杖を持っており、白い髪にあわせて、白い長めの外套をまとっていた。肌も白いから、雪雲みたいなのだけれど、なぜか顔が真っ赤に紅潮していた。



「ん?」
「これ、作ったんです」



 テイラがほとんど泣きそうな顔になって、小瓶を渡してきた。小瓶のなかには、青紫色の液体が入っていた。傷薬ではない。精神刺激薬でもない。



「なんですか、これ?」



「無効化のポーションを、さらに薄めたものです。スキルを失ったりはしませんけど、魔除け程度にはなるはずですから。私たちの思い出の品でもありますし」



 テイラの気持ちなんだ、受け取ってやってくれ――とガルが言ってきた。



「では、お言葉に甘えて、いただきます」



 無効化のポーションには、たしかにお世話になった。イキナリ帝都に王国軍が攻めてくるという異常事態だったのだ。あれほどの大事件は、そうそう起こり得ることはない。



 ケネスがポーションを受け取ると、テイラは会釈をして、あわてて姿をくらました。その様子にガルとマスクは顔を見合わせて笑っていた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品