《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第5-27話「グラトン・フォルケットについて」
学校に戻っても、合格発表を言い渡すグラトンがおらずに、生徒たちは困惑していた。
その翌日には、グラトンの死体が発見されて、大問題になった。翌々日には学校が急きょ休みとなって、先生たちは忙しそうに走り回っていた。
期末テストにヴィルザハード城に行かせるのは、やり過ぎだとか、グラトン教諭は誰に殺されたのかとか……職員会議ではそういうことを話しているようだった。そうして、あわただしく数日が過ぎて行き、騒ぎが落ちついたのが、テストからおおよそ2週間後だった。
グラトンやハンプティの埋葬を行って、それから、魔術実践学の合格者発表に移行することになった。ケネスとサマルは合格していたし、ロレンスとダンプティも合格していた。ほかモロモロの生徒も合格ということだ。
ようやく1段落した放課後――。
ケネスは生徒会に向かっていた。カラダ全体に睡魔がドヨンと圧し掛かっており、目の下に大きなクマをつくることになった。命を狙われていると思うと、やはり安眠できない。そこまで神経は太くできていないようだった。
生徒会室に入る。
サマルとユリはいなかった。クロノがひとりで、本を読んでいた。ケネスが入ってきたことに気づくと、イスの上に立って、黒板に言葉をつづった。
『疲れてる?』
「ええ。疲れてます。眠いです。死にそうです」
と、ケネスは沈み込むようにイスに腰かけた。
『いろいろあったみたいだから。お疲れさま』
クロノは白いチョークで文字を書いてゆく。チョークのカッカッカッという音で、眠り落ちてしまいそうだった。
「生徒会って、ケリュアル王国軍のスパイについて調べてるんですよね?」
『全部は調べ切れてないと思う。でも、何人かは摘発してる』
「教師とかはどうなんです? 王国に通じてる教師とかいないんですか」
『教師は、帝国が信用できる者を、マホ教に送り込んできている。そして、マホ教の審査に通った者が、教壇に立つことができる。王国のスパイはいないはず』
じゃあ、グラトンは、やはり王国には通じていなかったということか。
『何か気になることでも?』
「ええ。先日亡くなったグラトン先生のことが、気になって……」
『たしかに期末テストで、ヴィルザハード城を選んだのは不思議。あの城は生徒たちに行かせるような場所じゃないから』
「怪しいでしょう」
『教師たちの資料もいちおう手元にある。見てみる?』
「お願いします」
クロノは黒板に書いていた文字を消してから、机の引き出しから資料を取り出した。紙の束が紐でくくられていた。クロノが紙をめくってゆく。紙の1枚1枚に、教師の人相が書かれており、その情報がつづられていた。
「すごいですね」
と、月並みなセリフしか出てこなかった。
『これは生徒会が代々、集めている情報。私は来年には卒業するから、いずれケネスやユリたちに継いでもらうことになる』
と、クロノは白紙にインクで応じた。
「そうですか」
クロノは返事のたびに文字を書く必要がある。話しかけると手間をかけさせるかもしれない。そう思ってケネスは黙ることにした。グラトンの情報にたどりついたようだ。クロノはその紙をケネスに渡してきた。
「グラトン・フォルケット……」
名前のあとに、情報が連なっている。
グラトンは帝国のシャイラという村の生まれで、魔術学院に入学。後に、帝国魔術師として、軍に入ったようだ。軍隊ではガルシア・スプラウドの部隊に入っていたこともあるらしい。当時はガルシアも、まだ魔法長官ではなく、大隊の部隊長だったということだった。そして、グラトンは新しい芽を育てたいという理由によって、軍を退いて、講師になった――という一連の情報があった。
『知りたいことは、わかった?』
と、クロノが尋ねてくる。
「ええ。ありがとうございます」
と、資料を返した。
この情報からグラトンについて知れたのは、グラトンがまぎれもなく帝国の人間であって、王国とのつながりは見られないこと。ゆいいつ発見できたのは、ガルシアとのつながりぐらいだ。
(まさか、オレを殺そうとしてる黒幕は、ガルシアさん?)
かつての上官からの命令なら、グラトンはしぶしぶ自分の生徒を手にかけるかもしれない。
いやいや。
と、ケネスはかぶりを振った。
3年後には、副官についてくれとまで言われている。あの人が、ケネスの命を狙う理由がわからない。
結局、何もわからないままだ。
「はぁ」
と、ため息を吐いた。
窓の外を見る。
雪がちらついていた。
もうそんな季節か――。じきにケネスは3年生にあがる。そのときには、クロノとサマルは卒業している。それを思うと、すこし寂しい気持ちになった。
その翌日には、グラトンの死体が発見されて、大問題になった。翌々日には学校が急きょ休みとなって、先生たちは忙しそうに走り回っていた。
期末テストにヴィルザハード城に行かせるのは、やり過ぎだとか、グラトン教諭は誰に殺されたのかとか……職員会議ではそういうことを話しているようだった。そうして、あわただしく数日が過ぎて行き、騒ぎが落ちついたのが、テストからおおよそ2週間後だった。
グラトンやハンプティの埋葬を行って、それから、魔術実践学の合格者発表に移行することになった。ケネスとサマルは合格していたし、ロレンスとダンプティも合格していた。ほかモロモロの生徒も合格ということだ。
ようやく1段落した放課後――。
ケネスは生徒会に向かっていた。カラダ全体に睡魔がドヨンと圧し掛かっており、目の下に大きなクマをつくることになった。命を狙われていると思うと、やはり安眠できない。そこまで神経は太くできていないようだった。
生徒会室に入る。
サマルとユリはいなかった。クロノがひとりで、本を読んでいた。ケネスが入ってきたことに気づくと、イスの上に立って、黒板に言葉をつづった。
『疲れてる?』
「ええ。疲れてます。眠いです。死にそうです」
と、ケネスは沈み込むようにイスに腰かけた。
『いろいろあったみたいだから。お疲れさま』
クロノは白いチョークで文字を書いてゆく。チョークのカッカッカッという音で、眠り落ちてしまいそうだった。
「生徒会って、ケリュアル王国軍のスパイについて調べてるんですよね?」
『全部は調べ切れてないと思う。でも、何人かは摘発してる』
「教師とかはどうなんです? 王国に通じてる教師とかいないんですか」
『教師は、帝国が信用できる者を、マホ教に送り込んできている。そして、マホ教の審査に通った者が、教壇に立つことができる。王国のスパイはいないはず』
じゃあ、グラトンは、やはり王国には通じていなかったということか。
『何か気になることでも?』
「ええ。先日亡くなったグラトン先生のことが、気になって……」
『たしかに期末テストで、ヴィルザハード城を選んだのは不思議。あの城は生徒たちに行かせるような場所じゃないから』
「怪しいでしょう」
『教師たちの資料もいちおう手元にある。見てみる?』
「お願いします」
クロノは黒板に書いていた文字を消してから、机の引き出しから資料を取り出した。紙の束が紐でくくられていた。クロノが紙をめくってゆく。紙の1枚1枚に、教師の人相が書かれており、その情報がつづられていた。
「すごいですね」
と、月並みなセリフしか出てこなかった。
『これは生徒会が代々、集めている情報。私は来年には卒業するから、いずれケネスやユリたちに継いでもらうことになる』
と、クロノは白紙にインクで応じた。
「そうですか」
クロノは返事のたびに文字を書く必要がある。話しかけると手間をかけさせるかもしれない。そう思ってケネスは黙ることにした。グラトンの情報にたどりついたようだ。クロノはその紙をケネスに渡してきた。
「グラトン・フォルケット……」
名前のあとに、情報が連なっている。
グラトンは帝国のシャイラという村の生まれで、魔術学院に入学。後に、帝国魔術師として、軍に入ったようだ。軍隊ではガルシア・スプラウドの部隊に入っていたこともあるらしい。当時はガルシアも、まだ魔法長官ではなく、大隊の部隊長だったということだった。そして、グラトンは新しい芽を育てたいという理由によって、軍を退いて、講師になった――という一連の情報があった。
『知りたいことは、わかった?』
と、クロノが尋ねてくる。
「ええ。ありがとうございます」
と、資料を返した。
この情報からグラトンについて知れたのは、グラトンがまぎれもなく帝国の人間であって、王国とのつながりは見られないこと。ゆいいつ発見できたのは、ガルシアとのつながりぐらいだ。
(まさか、オレを殺そうとしてる黒幕は、ガルシアさん?)
かつての上官からの命令なら、グラトンはしぶしぶ自分の生徒を手にかけるかもしれない。
いやいや。
と、ケネスはかぶりを振った。
3年後には、副官についてくれとまで言われている。あの人が、ケネスの命を狙う理由がわからない。
結局、何もわからないままだ。
「はぁ」
と、ため息を吐いた。
窓の外を見る。
雪がちらついていた。
もうそんな季節か――。じきにケネスは3年生にあがる。そのときには、クロノとサマルは卒業している。それを思うと、すこし寂しい気持ちになった。
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