《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第5-26話「帰路」
ヴィルザハード城を出ると、雨はまだ降り続いていた。グラトンたちを殺した血を、その雨で注ぎ落した。ケネスの髪が、頬にペッタリと張り付いた。気づかないあいだに、髪もずいぶんと伸びたな、と思った。
この時期の雨は、カラダを冷やすのに充分だった。トンデモナイ魔力を秘めたアースアースの《神の遺物》は、打ちたたく雨を容易に弾き飛ばしていた。
「しかし、誤算じゃった」
と、ヴィルザがうなだれた。
雨脚は、ヴィルザのカラダをすーっとすり抜けて落ちてしまっていた。
「悪かったな。オレが弱くてよ」
と、なかば自嘲気味にケネスは言った。
アースアースの《神の遺物》。たしかに呪痕を確認することが出来たのだけれど、破壊することが出来ないのだ。叩いたり蹴ったりしてもダメだし、魔法でもムリだった。
ヴィルザにも魔法を使ってもらったのだが、亀裂ひとつ入らない。ヴィルザは封印されている身なので、全力を出すことが出来ないのだそうだ。あんまりにもデタラメな強さなので、封印されてチカラが弱まっていることを、つい忘れてしまう。
「いや。ケネスのせいではない。これは私の封印が解けて全力で相手をしなければ、破壊できぬシロモノじゃな」
「封印。解けないってことか」
「そう簡単にあきらめるでないわ。何か策があるはずじゃ。破壊する方策が見つかるまでは、ちゃんと持っておけ」
「了解」
と、鉱石を小脇にかかえる。
「しかし、その魔力に頼ろうと思うでないぞ。《神の遺物》は人を壊す。精神に異常をきたすこともあるんじゃからな」
「お前が、それを言うのかよ」
こんな岩の塊に頼らなくても、ケネスにはヴィルザがついている。イザというときには、そっちを頼る。それになにより、何かに頼らなくても、やっていけるぐらいには強くなったつもりだ。
「やらねばならぬことが増えたな」
「グラトン先生のことを調べること、それから、このアースアースの《神の遺物》を破壊する方法を調べること――か」
「生徒会に入っていて良かったな。職権を乱用しまくってやれ」
「くくっ」
と、ケネスは小さく笑った。
人の死に慣れてきたとはいえ、グラトンを殺した今、あまり大声をあげて笑う気にはなれなかった。
「笑いに陰りが出てきたな。私好みの良い男になってきた」
と、ヴィルザは宙に浮かび、頬を寄せてきた。甘い吐息がケネスの耳朶をくすぐった。
「素直にホめてると受け取って良いんだろうな?」
もちろん、とヴィルザはうなずいた。
「しかし、これからの学院生活には気を付けろよ。ケネス」
「どういう意味だ?」
「黒幕がおるとしたら、また別の駒を使って命を狙ってくる可能性がある。私も極力、ケネスを守ってやるつもりじゃが、不意を突かれては、咄嗟に反応できんかもしれんからな」
「安眠も出来ないってわけか」
「眠っているあいだは、私が見張っておいてやる。何かあれば起こしてやるから心配は要らん」
「ヴィルザは?」
「私は別に、眠らんくてもやっていける。夜中に起きていても、ケネスの寝顔を見るぐらいしかないから、眠っておるだけだ」
「今まで、オレの顔見てたんじゃないだろうな」
「なかなかカワユイ顔をしておったぞ」
「ッたく」
照れ隠しに、煙草をくわえた。魔法で火をつける。雨に打ち叩かれるなか、煙草の先端がポッと赤く灯った。
この時期の雨は、カラダを冷やすのに充分だった。トンデモナイ魔力を秘めたアースアースの《神の遺物》は、打ちたたく雨を容易に弾き飛ばしていた。
「しかし、誤算じゃった」
と、ヴィルザがうなだれた。
雨脚は、ヴィルザのカラダをすーっとすり抜けて落ちてしまっていた。
「悪かったな。オレが弱くてよ」
と、なかば自嘲気味にケネスは言った。
アースアースの《神の遺物》。たしかに呪痕を確認することが出来たのだけれど、破壊することが出来ないのだ。叩いたり蹴ったりしてもダメだし、魔法でもムリだった。
ヴィルザにも魔法を使ってもらったのだが、亀裂ひとつ入らない。ヴィルザは封印されている身なので、全力を出すことが出来ないのだそうだ。あんまりにもデタラメな強さなので、封印されてチカラが弱まっていることを、つい忘れてしまう。
「いや。ケネスのせいではない。これは私の封印が解けて全力で相手をしなければ、破壊できぬシロモノじゃな」
「封印。解けないってことか」
「そう簡単にあきらめるでないわ。何か策があるはずじゃ。破壊する方策が見つかるまでは、ちゃんと持っておけ」
「了解」
と、鉱石を小脇にかかえる。
「しかし、その魔力に頼ろうと思うでないぞ。《神の遺物》は人を壊す。精神に異常をきたすこともあるんじゃからな」
「お前が、それを言うのかよ」
こんな岩の塊に頼らなくても、ケネスにはヴィルザがついている。イザというときには、そっちを頼る。それになにより、何かに頼らなくても、やっていけるぐらいには強くなったつもりだ。
「やらねばならぬことが増えたな」
「グラトン先生のことを調べること、それから、このアースアースの《神の遺物》を破壊する方法を調べること――か」
「生徒会に入っていて良かったな。職権を乱用しまくってやれ」
「くくっ」
と、ケネスは小さく笑った。
人の死に慣れてきたとはいえ、グラトンを殺した今、あまり大声をあげて笑う気にはなれなかった。
「笑いに陰りが出てきたな。私好みの良い男になってきた」
と、ヴィルザは宙に浮かび、頬を寄せてきた。甘い吐息がケネスの耳朶をくすぐった。
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もちろん、とヴィルザはうなずいた。
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