《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第5-24話「第5系統の魔法 Ⅱ」

 土人形ゴーレムが暴れるせいで、玉座に整然と並べられていた甲冑が蹴散らされていた。ガランゴロンと重たい金属音が響きわたる。土人形のコブシが、床や壁をボコボコにして、土煙を吹き上げていく。



 ケネスは必死に土人形ゴーレムの猛攻をかわしていたが、すべてはかわしきれない。いくつか擦り傷を負うことになった。それに、玉座に座っているグラトンらしき人物の姿も、ケネスの闘志を鈍らせる。



「第5の系統の魔法ってのは、なんだ? そんなの聞いたこともないぞ」



「聞いたことなくてトウゼンであろうな。これは、私にのみ許された系統の魔法であるからな」



「魔神ヴィルザハード直伝の魔法ってわけか。さっさと教えてもらいたいんだがな」



「直伝というよりも、今のケネスの右腕には、私の魔力の残滓が宿っておる。その右腕なら出せるはずだ。悪系統の魔法を」



「悪……」
 一度、見たことがある。
 ソルト・ドラグニルを屠った魔法だ。



「やり方は簡単。私の魔力に身をゆだねれば良い。私の存在を感じ取ることは、もう厭というほどやって来たであろう」



「副作用はないんだろうな」



「私の魔法を、人間に使わせるのははじめてのことだ。じゃから、どうなるかは、私にもわからん」



「やってみようじゃないか」



 悪系統の魔法。
 使えれば大きなチカラになるはずだ。



「悪系魔法《無名ノーネーム》」



 どんな魔法かわからないからこその、無名だ。じゃあ、いちいち唱えなくても良いじゃないかと思われるかもしれないが、癖になっていて、魔法を発する前に唱えなくては、シックリ来ないのだ。



 己の右手に宿っているヴィルザの魔力を感じた。右手の血がたぎるように、熱くなってくる。青かった魔法陣が、赤黒く染まってゆく。



 仮面の者たちからは、動揺の雰囲気がつたわってきた。そして発せられる。ケネスの赤黒い魔法陣から、同じ赤黒い腕が蛇の大群のように湧き出てきた。



 周囲に散らかっていた甲冑を、赤黒い腕が玩具のようにちぎって食い散らかしてゆく。赤黒い腕の先には、手のひらがあるのだが、その手のひらにちゃんと、口がついているのだ。そして、2本、3本と増殖していく腕は、土人形ゴーレムを食いちぎっていった。あれだけ《火球ファイヤー・ボール》をブツけても、ビクともしなかった土人形がいとも簡単に食いちぎられてゆく。



 さらなる獲物を求めるかのように、周囲に腕を伸ばしてゆく。仮面の者たちも容赦なく千切っていった。仮面の者たちの脚をちぎり、腹を突き破り、腕を分解してゆく。仮面の者たちは人間だ。ちぎれば血がでて、肉がはじける。



「ギャァァァ!」
「ヒィィィッ!」



 阿鼻叫喚の騒ぎとなった。



 ケネスはあわてて魔法陣を引っ込めようとしたのだが、ケネスの意思に反して、腕はどんどん増殖していく。さらに1本2本と、魔法陣から腕が出てくるのだ。まるで獲物を求める肉食獣のようだ。



 甲冑は散り散りに分解されて、土人形ゴーレムはただの砂塵と化していた。仮面の者たちも血と肉のカタマリになったとき、ようやく腕は満足したようで、ケネスの魔法陣のなかに戻っていった。



「な、なんだ……この魔法……」



 ピチョン、という音はケネスの足元からしていた。血だった。まるで呪いのようにケネスの靴に、血がへばりついているのだった。



「それが悪系統の魔法。私の愛用していたものだ」
「オレの制御がきかなかった」



「ヤツらは私の魔力そのものじゃからな。貪欲に血肉を求める。一度、発現させれば、満足いくまで食い散らかす」



「これが……悪系統の魔法か」



 もう一度魔法陣を発してみたが、もうすでに青白い光芒に戻っていたし、赤黒い腕が生えてくることもなかった。



 強力な魔法だ。



 さすがは魔神の魔法というわけではある。が、使い方を考える必要がありそうだ。もし近くにサマルやユリがいたらと思うと、ゾッとする。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品