《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第5-24話「第5系統の魔法 Ⅱ」
土人形が暴れるせいで、玉座に整然と並べられていた甲冑が蹴散らされていた。ガランゴロンと重たい金属音が響きわたる。土人形のコブシが、床や壁をボコボコにして、土煙を吹き上げていく。
ケネスは必死に土人形の猛攻をかわしていたが、すべてはかわしきれない。いくつか擦り傷を負うことになった。それに、玉座に座っているグラトンらしき人物の姿も、ケネスの闘志を鈍らせる。
「第5の系統の魔法ってのは、なんだ? そんなの聞いたこともないぞ」
「聞いたことなくてトウゼンであろうな。これは、私にのみ許された系統の魔法であるからな」
「魔神ヴィルザハード直伝の魔法ってわけか。さっさと教えてもらいたいんだがな」
「直伝というよりも、今のケネスの右腕には、私の魔力の残滓が宿っておる。その右腕なら出せるはずだ。悪系統の魔法を」
「悪……」
一度、見たことがある。
ソルト・ドラグニルを屠った魔法だ。
「やり方は簡単。私の魔力に身をゆだねれば良い。私の存在を感じ取ることは、もう厭というほどやって来たであろう」
「副作用はないんだろうな」
「私の魔法を、人間に使わせるのははじめてのことだ。じゃから、どうなるかは、私にもわからん」
「やってみようじゃないか」
悪系統の魔法。
使えれば大きなチカラになるはずだ。
「悪系魔法《無名》」
どんな魔法かわからないからこその、無名だ。じゃあ、いちいち唱えなくても良いじゃないかと思われるかもしれないが、癖になっていて、魔法を発する前に唱えなくては、シックリ来ないのだ。
己の右手に宿っているヴィルザの魔力を感じた。右手の血がたぎるように、熱くなってくる。青かった魔法陣が、赤黒く染まってゆく。
仮面の者たちからは、動揺の雰囲気がつたわってきた。そして発せられる。ケネスの赤黒い魔法陣から、同じ赤黒い腕が蛇の大群のように湧き出てきた。
周囲に散らかっていた甲冑を、赤黒い腕が玩具のようにちぎって食い散らかしてゆく。赤黒い腕の先には、手のひらがあるのだが、その手のひらにちゃんと、口がついているのだ。そして、2本、3本と増殖していく腕は、土人形を食いちぎっていった。あれだけ《火球》をブツけても、ビクともしなかった土人形がいとも簡単に食いちぎられてゆく。
さらなる獲物を求めるかのように、周囲に腕を伸ばしてゆく。仮面の者たちも容赦なく千切っていった。仮面の者たちの脚をちぎり、腹を突き破り、腕を分解してゆく。仮面の者たちは人間だ。ちぎれば血がでて、肉がはじける。
「ギャァァァ!」
「ヒィィィッ!」
阿鼻叫喚の騒ぎとなった。
ケネスはあわてて魔法陣を引っ込めようとしたのだが、ケネスの意思に反して、腕はどんどん増殖していく。さらに1本2本と、魔法陣から腕が出てくるのだ。まるで獲物を求める肉食獣のようだ。
甲冑は散り散りに分解されて、土人形はただの砂塵と化していた。仮面の者たちも血と肉のカタマリになったとき、ようやく腕は満足したようで、ケネスの魔法陣のなかに戻っていった。
「な、なんだ……この魔法……」
ピチョン、という音はケネスの足元からしていた。血だった。まるで呪いのようにケネスの靴に、血がへばりついているのだった。
「それが悪系統の魔法。私の愛用していたものだ」
「オレの制御がきかなかった」
「ヤツらは私の魔力そのものじゃからな。貪欲に血肉を求める。一度、発現させれば、満足いくまで食い散らかす」
「これが……悪系統の魔法か」
もう一度魔法陣を発してみたが、もうすでに青白い光芒に戻っていたし、赤黒い腕が生えてくることもなかった。
強力な魔法だ。
さすがは魔神の魔法というわけではある。が、使い方を考える必要がありそうだ。もし近くにサマルやユリがいたらと思うと、ゾッとする。
ケネスは必死に土人形の猛攻をかわしていたが、すべてはかわしきれない。いくつか擦り傷を負うことになった。それに、玉座に座っているグラトンらしき人物の姿も、ケネスの闘志を鈍らせる。
「第5の系統の魔法ってのは、なんだ? そんなの聞いたこともないぞ」
「聞いたことなくてトウゼンであろうな。これは、私にのみ許された系統の魔法であるからな」
「魔神ヴィルザハード直伝の魔法ってわけか。さっさと教えてもらいたいんだがな」
「直伝というよりも、今のケネスの右腕には、私の魔力の残滓が宿っておる。その右腕なら出せるはずだ。悪系統の魔法を」
「悪……」
一度、見たことがある。
ソルト・ドラグニルを屠った魔法だ。
「やり方は簡単。私の魔力に身をゆだねれば良い。私の存在を感じ取ることは、もう厭というほどやって来たであろう」
「副作用はないんだろうな」
「私の魔法を、人間に使わせるのははじめてのことだ。じゃから、どうなるかは、私にもわからん」
「やってみようじゃないか」
悪系統の魔法。
使えれば大きなチカラになるはずだ。
「悪系魔法《無名》」
どんな魔法かわからないからこその、無名だ。じゃあ、いちいち唱えなくても良いじゃないかと思われるかもしれないが、癖になっていて、魔法を発する前に唱えなくては、シックリ来ないのだ。
己の右手に宿っているヴィルザの魔力を感じた。右手の血がたぎるように、熱くなってくる。青かった魔法陣が、赤黒く染まってゆく。
仮面の者たちからは、動揺の雰囲気がつたわってきた。そして発せられる。ケネスの赤黒い魔法陣から、同じ赤黒い腕が蛇の大群のように湧き出てきた。
周囲に散らかっていた甲冑を、赤黒い腕が玩具のようにちぎって食い散らかしてゆく。赤黒い腕の先には、手のひらがあるのだが、その手のひらにちゃんと、口がついているのだ。そして、2本、3本と増殖していく腕は、土人形を食いちぎっていった。あれだけ《火球》をブツけても、ビクともしなかった土人形がいとも簡単に食いちぎられてゆく。
さらなる獲物を求めるかのように、周囲に腕を伸ばしてゆく。仮面の者たちも容赦なく千切っていった。仮面の者たちの脚をちぎり、腹を突き破り、腕を分解してゆく。仮面の者たちは人間だ。ちぎれば血がでて、肉がはじける。
「ギャァァァ!」
「ヒィィィッ!」
阿鼻叫喚の騒ぎとなった。
ケネスはあわてて魔法陣を引っ込めようとしたのだが、ケネスの意思に反して、腕はどんどん増殖していく。さらに1本2本と、魔法陣から腕が出てくるのだ。まるで獲物を求める肉食獣のようだ。
甲冑は散り散りに分解されて、土人形はただの砂塵と化していた。仮面の者たちも血と肉のカタマリになったとき、ようやく腕は満足したようで、ケネスの魔法陣のなかに戻っていった。
「な、なんだ……この魔法……」
ピチョン、という音はケネスの足元からしていた。血だった。まるで呪いのようにケネスの靴に、血がへばりついているのだった。
「それが悪系統の魔法。私の愛用していたものだ」
「オレの制御がきかなかった」
「ヤツらは私の魔力そのものじゃからな。貪欲に血肉を求める。一度、発現させれば、満足いくまで食い散らかす」
「これが……悪系統の魔法か」
もう一度魔法陣を発してみたが、もうすでに青白い光芒に戻っていたし、赤黒い腕が生えてくることもなかった。
強力な魔法だ。
さすがは魔神の魔法というわけではある。が、使い方を考える必要がありそうだ。もし近くにサマルやユリがいたらと思うと、ゾッとする。
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