《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第5-23話「第5系統の魔法」

(なんだ……今の?)



 ドラゴンゾンビの挙動を不思議に思っていたのだが、その疑念に深入りする余裕はなかった。



「うおぉぉぉッ。助かったぁぁぁッ」
 と、サマルが泣きついてきたからだ。



「な、なにするんですか。先輩。男に抱きつかれても嬉しくないですよ」



「すげぇな。《帝国の劫火》。オレお前のことナめてたよ。あのドラゴンゾンビを追い返しちまうなんてよ。死ぬかと、思った」



「見直してくれたんなら、何よりですよ。物凄い手のひら返しですけどね」



「オレってば、ユリ姫ちゃんを置いて逃げるなんて。最低だ。コラッ」
 と、サマルは自分の頭を叩きはじめた。



「あら? 何かあったのですか? 私ってば、何をしていたのでしょうか?」



 と、サマルの騒音でユリも目を覚ましたようだ。
 ユリとサマルが騒いでいるさなか、ケネスは静かにドラゴンゾンビのことを思いかえしていた。あれは、いったい何だったのだろうか。何かに怯えるように後ずさりしていったが、ケネスに怯えたわけではないと思う。もっと……はるかに大きなチカラに怯えているようだった。



「まさか……」
 と、ケネスはヴィルザを見た。



 アンデッドはヴィルザが作ったと言っていた。あのドラゴンゾンビは、親の存在を嗅ぎ取ったのかもしれない。当の本人のヴィルザは無頓着に、ユリとサマルのあいだを飛びまわっていた。



「とにかく、合格の証は手に入れました。奇妙なことも多いですし、さっさと帰りましょう」



 帰路――。
 来た道を引き返していると、玉座の間にたどりついた。



「この甲冑。動いたりしないだろうな」とサマルは怯えていた。フジツボみたいにビッシリとシャレコウベがつけられたイスを見て、ユリはまたしても気絶していた。



 それよりもケネスは別のことが気になっていた。さっきから、誰かに尾行されている気がする。足音が余計に聞こえたり、ノドを鳴らす音や吐息が、ささいな気配となってケネスの神経に触れていた。



「サマル先輩」
「あ?」



「申し訳ありませんが、合格の証とユリを背負って、さきに戻っていてもらえませんか?」



「どうかしたか?」
「ちょっと忘れ物です」



「わかった。先に合格の証を提出していても良いんだな。コラ」



 別にケンカしてるわけでもないのに語尾に、「コラ」が付くのはなんなんだろうか。変な口癖だな、と思った。



「ええ。先に提出しておいてください」



「わかった。早く戻って来いよ。コラ」
 と、サマルとユリは部屋を出て行った。騒がしい2人がいなくなったことで、いっきに場が静かになった。ケネスは息を殺して、周囲を見渡した。



「気を付けろ。1人や2人ではないぞ。しかも殺気を帯びておる」
 と、ヴィルザが忠告をくれた。



「いるんだろ。出て来いよ」
 と、ケネスは虚空にむかって吠えた。



 仮面をつけた者たちがぞろぞろと、甲冑の裏やら、玉座の裏から姿を現しはじめた。3人か4人かと思っていた。全部で15人いた。体格はバラバラだが、みんな一様に仮面で顔を隠していた。以前にも見た仮面だ。



「ハンプティを殺したのは、お前らか」



 仮面の者たちは一斉に魔法陣を展開した。ケネスも同時に魔法陣を展開したのだが、予想以上に相手の魔力が強かった。



 床が盛り上がり、巨大な#土人形__ゴーレム__#が召喚されたのだ。以前帝都でヴィルザもやったことがあるが、あれほどの大きさはない。せいぜいケネスの3倍ほどの大きさではあるが、しかし3体も出て来られると厄介だ。ケネスの《火球ファイヤー・ボール》がかき消されることになった。



「強いな」
「おい、ケネス」
 ヴィルザが話しかけてくる。



「悪いが、今日はヴィルザのチカラを借りるつもりはないぜ。オレが自分で処理するつもりだ」



「言うようになりよって。……わかっておる。私もケネスの成長を見てやろうと思っていたところだ」



「じゃあ、なんの用事だ?」



「あの仮面の者たちの、小太りなヤツがおるであろう。髪型が爆発しているヤツだ」
 と、ヴィルザが指さした先には、シャレコウベの玉座に座っている者がいた。



 仮面をしているから断定はできないが、その風体はどう見てもグラトン先生のものだったので、ケネスはたじろいだ。



「グラトン……先生?」



「あの者の持っている鉱石。ありゃ大地の神アースアースの遺物じゃぞ」



「おいおい、まさか《神の遺物アーティファクト》か?」



「呪痕があるか確認して、あるようなら、壊せ」 
「了解」



 グラトン先生に襲われるとも思わなかったが、まさかこんなところで《神の遺物アーティファクト》に遭遇するとは思わなかった。



『マディシャンの杖』『カヌスのウロコ』続いて、『アースアースの鉱石』3つ目を壊せば、残り5つとなる。



「火系A級基礎魔法。《地獄の劫火ヘル・フレイム》」



 周囲一帯が黒い火に包まれてゆく。火を受けた仮面の者たちが、数人焼けていた。水系魔法であわてて消しているが、間に合わずに黒焦げになった者もいるようだ。



「人殺しは、ダメなんじゃなかったのか?」
 ヴィルザが意地の悪い顔で言ってくる。



「仕方ないだろ。こっちが殺されそうなんだ」
「人の死に動じなくなってきおったな」
「いろいろと、見てきたからな」



 ベルモンド・ゴーラン。ゲヘナ・デリュリアス。ソルト・ドラグニル。それに幼馴染のロールや、故郷の村人たち。いろんな死を見てきた。そしてこれからも、見ていくことになるだろう。



「それに、死んだ人は生き返らせてくれるんだろ」
「そんなこと気にしてる場合か。来るぞ。正面」
「わかってる」



 土人形ゴーレムが腕を振り上げて、ケネスに襲いかかってきた。ケネスは転がって、それをかわした。ケネスが立っていた地面には、コブシが叩き込まれて、亀裂が入っていた。くらっていたら、粉々だ。



「火系基礎魔法《火球ファイヤー・ボール》」



 炎のカタマリが、土人形ゴーレムの腹に直撃するが、土煙が上がるだけでビクともしない。



「苦戦しているようじゃな」



「さすが、《神の遺物アーティファクト》から召喚されただけはあるぜ。オレの魔法がぜんぜん通じない」



「良ければ、手伝ってやろうか?」
「いや。いい」



 これもまたひとつ階段だと思っていた。今まで、いくつかの苦難を踏み越えて、強くなった実感があった。だからこれもまたひとつ、ヴィルザやガルシアのいる場所へとたどり着くための階段なのだ。



「そう言うと思ったぞ。なら、アドヴァイスをやろう」



「まさに神の言葉だな。ありがたく傾聴しよう」



 そうやってヴィルザとしゃべっている間に、土人形ゴーレムのコブシが飛んでくる。土人形ゴーレムだけじゃなくて、他の仮面の者たちの魔法にも対応しなくてはいけない。土系上位魔法で作りだしたと思われる鉄の刃が飛来してきて、ケネスの外套を破った。



「魔法というのは、ふつうは4属性しかない。火、水、土、風の4種だ。それらの系統を上位へと昇華させるなり、組み合わせるなりして、鉄やら氷の魔法になる」



「ンなこと、今言われなくても、わかってる!」
 敵の魔法をかわすので、セイイッパイだ。



「今のケネスには、第5の系統である魔法を使うことができるはずだ」
 ヴィルザはそう言い放った。

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