《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第5-17話「ヴィルザハード城 Ⅱ」
「2人きりになっちゃいましたね。ケネス先輩」
ユリが、ケネスの腕にからみついてくる。振り払うのもメンドウなので、されるがままになっていた。
「ッたく、こやつ。私のケネスに慣れ慣れしくしおって」
と、ヴィルザは怖い顔をしていた。
「そろそろオレたちも行くか」
「はい。ケネス先輩にくっ付いてたら、私も温かくなってきたのですよ」
石の一戸建てを出た。外に出ると雨脚がさらに強くなっていた。石畳の地面が、雨に打ち叩かれて、派手に爆ぜていた。暖をとるつもりで、ケネスは魔法で炎を出し続けておくことにした。雨風のなかで、ケネスの炎が揺られ続けていた。
石畳の道をずっと歩いて行くと、城の全景が見えてきた。門らしき痕跡があった。それを潜り抜けると、広間があった。
城の前にあるから練兵場かと思ったのだが、不気味な器具がたくさん置かれていた。十字架……水車のような装置……鉄と鎖のガラクタたち……。そして大量の骨も積み上げられていた。黒々とした渦巻いた瘴気を幻覚して、怨嗟と憎悪の声を幻聴した気がした。骨だけでなく、血や肉らしきものも飛散しているから、ホントウにここは、時が止まってしまっているのかもしれない。
「おおっ。懐かしいのぉ」
と、ヴィルザが歓喜の声をあげた。
「なんだ、ここ?」
「ここで人を拷問して、遊んだんじゃ。愛し合う夫婦の前で、カタワレだけ皮を剥いだり、その娘を火であぶってやったりすると、それはもう良い声で鳴きよってなぁ……」
ヴィルザの表情が、恍惚としていた。
その顔が雨雲に陰って、血肉の饗宴にふける悪魔の顔にしていた。ごくたまに、人を殺すときなど、ヴィルザはそういう顔をする。ゾッとするような、鬼女の笑みだ。
すこし前までは、警戒心を抱いていた。ホントにこいつを信用しても良いのかという気持ちにさせられていた。今はすこし違う。ヴィルザのことを、ちゃんとした方向に更生させてやろうという気概に満ちていた。今ここで、説教してやりたいところだが、ユリがいるので思うように話ができない。
「ケネス先輩。なんだかここ、トテモ気味が悪いのですよ」
と、ユリがさらに強く、ケネスの腕にからみついてくる。
「行こう」
と、ケネスは城の中に足を踏み入れた。
城内に入ると、雨から逃げることができた。大きなホールになっていた。壁には大量の油絵が飾られている。どれもこれも、人が殺されたり、拷問を受けている絵ばかりだった。絵画のなかの人間たちが、一斉にケネスのことを見つめていた。苦悶の表情を浮かべているものがあり、泣き叫んでいるものがあり、なかには、怒り狂っているものもあった。
「マトモな絵が1枚もありゃしねェ」
胸糞が悪い。
ケネスは煙草を吸って、気分を落ちつけることにした。
「まるでお化け屋敷なのです」
と、ユリがかぼそい声で言った。
あれだけ元気溌剌なユリも、さすがに弱っているようだ。
「悪いな。こんなことに付き合わせて」
「い、いえ! 大丈夫です。ケネス先輩のために、頑張るって決めましたからッ!」
「ありがとう」
健気な娘だ。
ウルサイ娘だと思っていたけれど、ここまで身を尽くす覚悟を表明してもらえると、良い娘だと思えてくる。帝国アイドルとして人気を集めるのも、うなずける。
「この城のどこかに、合格者の証とやらがあるはずなんだ。さっさと見つけて、帰ろう」
「はい、なのですよ!」
と、叫ぶように言ったユリの声が反響していた。
ユリが、ケネスの腕にからみついてくる。振り払うのもメンドウなので、されるがままになっていた。
「ッたく、こやつ。私のケネスに慣れ慣れしくしおって」
と、ヴィルザは怖い顔をしていた。
「そろそろオレたちも行くか」
「はい。ケネス先輩にくっ付いてたら、私も温かくなってきたのですよ」
石の一戸建てを出た。外に出ると雨脚がさらに強くなっていた。石畳の地面が、雨に打ち叩かれて、派手に爆ぜていた。暖をとるつもりで、ケネスは魔法で炎を出し続けておくことにした。雨風のなかで、ケネスの炎が揺られ続けていた。
石畳の道をずっと歩いて行くと、城の全景が見えてきた。門らしき痕跡があった。それを潜り抜けると、広間があった。
城の前にあるから練兵場かと思ったのだが、不気味な器具がたくさん置かれていた。十字架……水車のような装置……鉄と鎖のガラクタたち……。そして大量の骨も積み上げられていた。黒々とした渦巻いた瘴気を幻覚して、怨嗟と憎悪の声を幻聴した気がした。骨だけでなく、血や肉らしきものも飛散しているから、ホントウにここは、時が止まってしまっているのかもしれない。
「おおっ。懐かしいのぉ」
と、ヴィルザが歓喜の声をあげた。
「なんだ、ここ?」
「ここで人を拷問して、遊んだんじゃ。愛し合う夫婦の前で、カタワレだけ皮を剥いだり、その娘を火であぶってやったりすると、それはもう良い声で鳴きよってなぁ……」
ヴィルザの表情が、恍惚としていた。
その顔が雨雲に陰って、血肉の饗宴にふける悪魔の顔にしていた。ごくたまに、人を殺すときなど、ヴィルザはそういう顔をする。ゾッとするような、鬼女の笑みだ。
すこし前までは、警戒心を抱いていた。ホントにこいつを信用しても良いのかという気持ちにさせられていた。今はすこし違う。ヴィルザのことを、ちゃんとした方向に更生させてやろうという気概に満ちていた。今ここで、説教してやりたいところだが、ユリがいるので思うように話ができない。
「ケネス先輩。なんだかここ、トテモ気味が悪いのですよ」
と、ユリがさらに強く、ケネスの腕にからみついてくる。
「行こう」
と、ケネスは城の中に足を踏み入れた。
城内に入ると、雨から逃げることができた。大きなホールになっていた。壁には大量の油絵が飾られている。どれもこれも、人が殺されたり、拷問を受けている絵ばかりだった。絵画のなかの人間たちが、一斉にケネスのことを見つめていた。苦悶の表情を浮かべているものがあり、泣き叫んでいるものがあり、なかには、怒り狂っているものもあった。
「マトモな絵が1枚もありゃしねェ」
胸糞が悪い。
ケネスは煙草を吸って、気分を落ちつけることにした。
「まるでお化け屋敷なのです」
と、ユリがかぼそい声で言った。
あれだけ元気溌剌なユリも、さすがに弱っているようだ。
「悪いな。こんなことに付き合わせて」
「い、いえ! 大丈夫です。ケネス先輩のために、頑張るって決めましたからッ!」
「ありがとう」
健気な娘だ。
ウルサイ娘だと思っていたけれど、ここまで身を尽くす覚悟を表明してもらえると、良い娘だと思えてくる。帝国アイドルとして人気を集めるのも、うなずける。
「この城のどこかに、合格者の証とやらがあるはずなんだ。さっさと見つけて、帰ろう」
「はい、なのですよ!」
と、叫ぶように言ったユリの声が反響していた。
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