《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第5-10話「アンデッドの出自」
その日の夜。
ケネスは自室の机に座っていた。左手の人さし指で魔法陣を発して、《灯》の魔法で明かりを保つ。右手には羽根ペンが握られている。薬草学の講義のレポートを書き終えたところだ。インクが右手の側面に付着して、黒く染まっていた。
「ふーっ。薬草学のレポートは終えたし、あとはあれか……」
「あれ?」
と、ヴィルザが机上に腰かけて、尋ねてくる。
「神々を憎む支配者の城から、定められし勝者の証を光の世界へ届けたまえ――ってヤツ」
「もうぶっつけ本番で、どうにかなるのではないか?」
「なるかもしれんが、2年の魔術実践学は、けっこう単位落としてるって話だし、このヒントを解いておくに越したことはないだろう」
「マジメじゃなぁ」
「そう言えば、ヴィルザは城を持ってるって言ってたな。あの話、途中までしか聞いてなかったんだけど」
「おう。もう古い話じゃがな。いわゆる魔王城とでも言うべきかな。私の居城があった。世界征服をもくろんだ、本拠地じゃ」
思い出しているのか、ヴィルザは夢見るような目で言った。
どうせロクな夢ではない。
「今もあるのか?」
「この近くにあると思うぞ。しかし、近寄らんほうが良いとは思うがな」
「モンスターでも出るのか?」
「アンデッドがな」
と、ヴィルザはニンマリと笑ってそう言う。
「スケルトンとか、グールとか、幽霊とかか?」
あとデスナイトと言われる強力なアンデッドの騎士や、ドラゴンゾンビと言われる骨のドラゴンなどもいる。
アンデッドは、普通のモンスターとは出自が違う。いったいどういう変異をとげたのか、いまだ学者たちが研究中だ。憎悪を抱え持ったまま死んだ人間が、アンデッドになったとか。モンスターと人間の混血だとか――諸説ある。
「もう何度も言ってるから、知っておると思うが、ベルジュラックには暗黒時代があった。モンスターたちが人間を奴隷として使役して、ときには食糧として食っておった。私もすこし、人間で遊んだ記憶がある」
と、ヴィルザは妖しく笑う。
薄紅色の唇を舌舐めずりしていた。
いったいどういう遊戯に耽っていたのかまでは、尋ねる勇気がなかった。
「で?」
「人間たちに、魔法をかけていろいろと遊んでおったら、アンデッドになった」
「え? じゃあ、この世にはびこってるアンデッドって、ヴィルザが作ったのか?」
「まぁ、そうなる……かな。もともとはな。放っておいても自然と増殖してるようじゃが」
首をかしげながらそう言った。
「ヴィルザの城には、そのアンデッドどもが巣食ってるわけか。まさか、期末テストでそんな場所に行かされるわけじゃないだろうな……」
たかが期末テストで、命の危険があるような試練を課せられるとは思えない。しかし前年度は、ドワーフの鉱山に行ったと聞いているし、その前はエルフの森に入ったそうだ。あるていどの危険は覚悟しておくべきなのかもしれない。
「私は、そんなことより、あの仮面の者が気になるがな」
「ああ。オレもそれは気になってた。イタズラか何かかな?」
ケネスとサマルが一騎打ちをしているさいに、覗きこんでいた人物だ。誰も見ていなかったが、ケネスとヴィルザだけは目撃している。
「スパイかのぉ」
「わからん。素性がわからない以上は、探ることも出来ないしな」
「気を付けておけよ。あの仮面の者からは、静かな殺気が感じられた。あの場にいた誰かを殺そうとしていたのかもしれん」
「マジで?」
「私を誰だと思うておるか。殺気には敏感なのだ」
それは説得力がある。
争いごとには敏感な娘だ。
「スパイってのは情報収集とかが任務だろ。さすがに殺しになってくると、スパイとは言えないんじゃないか?」
そろそろ寝る準備をしようと思って、机の上を片付けることにした。片付けながら、ヴィルザとの会話を続ける。
「でも、間違いない。あれは殺気じゃった。純粋な殺気ではなかったがな。なにか……違和感があったが」
と、ヴィルザは曖昧な言い方をした。
「あの場にいた誰かを殺そうとしていた――ってことは、たぶんオレだろうな」
「可能性としては考えられるが、ゼッタイというわけでもない。何か事情を抱えた者がおるかもしれんしな」
「ッたく、期末テストが控えている、この重要な時期に、厄介なヤツを見つけちまったもんだ」
教科書、羽根ペン、インク瓶。
それから、書き上げた薬草学のレポートのインクが乾いているのを確認して、カバンのなかに詰め込んだ。
ケネスは自室の机に座っていた。左手の人さし指で魔法陣を発して、《灯》の魔法で明かりを保つ。右手には羽根ペンが握られている。薬草学の講義のレポートを書き終えたところだ。インクが右手の側面に付着して、黒く染まっていた。
「ふーっ。薬草学のレポートは終えたし、あとはあれか……」
「あれ?」
と、ヴィルザが机上に腰かけて、尋ねてくる。
「神々を憎む支配者の城から、定められし勝者の証を光の世界へ届けたまえ――ってヤツ」
「もうぶっつけ本番で、どうにかなるのではないか?」
「なるかもしれんが、2年の魔術実践学は、けっこう単位落としてるって話だし、このヒントを解いておくに越したことはないだろう」
「マジメじゃなぁ」
「そう言えば、ヴィルザは城を持ってるって言ってたな。あの話、途中までしか聞いてなかったんだけど」
「おう。もう古い話じゃがな。いわゆる魔王城とでも言うべきかな。私の居城があった。世界征服をもくろんだ、本拠地じゃ」
思い出しているのか、ヴィルザは夢見るような目で言った。
どうせロクな夢ではない。
「今もあるのか?」
「この近くにあると思うぞ。しかし、近寄らんほうが良いとは思うがな」
「モンスターでも出るのか?」
「アンデッドがな」
と、ヴィルザはニンマリと笑ってそう言う。
「スケルトンとか、グールとか、幽霊とかか?」
あとデスナイトと言われる強力なアンデッドの騎士や、ドラゴンゾンビと言われる骨のドラゴンなどもいる。
アンデッドは、普通のモンスターとは出自が違う。いったいどういう変異をとげたのか、いまだ学者たちが研究中だ。憎悪を抱え持ったまま死んだ人間が、アンデッドになったとか。モンスターと人間の混血だとか――諸説ある。
「もう何度も言ってるから、知っておると思うが、ベルジュラックには暗黒時代があった。モンスターたちが人間を奴隷として使役して、ときには食糧として食っておった。私もすこし、人間で遊んだ記憶がある」
と、ヴィルザは妖しく笑う。
薄紅色の唇を舌舐めずりしていた。
いったいどういう遊戯に耽っていたのかまでは、尋ねる勇気がなかった。
「で?」
「人間たちに、魔法をかけていろいろと遊んでおったら、アンデッドになった」
「え? じゃあ、この世にはびこってるアンデッドって、ヴィルザが作ったのか?」
「まぁ、そうなる……かな。もともとはな。放っておいても自然と増殖してるようじゃが」
首をかしげながらそう言った。
「ヴィルザの城には、そのアンデッドどもが巣食ってるわけか。まさか、期末テストでそんな場所に行かされるわけじゃないだろうな……」
たかが期末テストで、命の危険があるような試練を課せられるとは思えない。しかし前年度は、ドワーフの鉱山に行ったと聞いているし、その前はエルフの森に入ったそうだ。あるていどの危険は覚悟しておくべきなのかもしれない。
「私は、そんなことより、あの仮面の者が気になるがな」
「ああ。オレもそれは気になってた。イタズラか何かかな?」
ケネスとサマルが一騎打ちをしているさいに、覗きこんでいた人物だ。誰も見ていなかったが、ケネスとヴィルザだけは目撃している。
「スパイかのぉ」
「わからん。素性がわからない以上は、探ることも出来ないしな」
「気を付けておけよ。あの仮面の者からは、静かな殺気が感じられた。あの場にいた誰かを殺そうとしていたのかもしれん」
「マジで?」
「私を誰だと思うておるか。殺気には敏感なのだ」
それは説得力がある。
争いごとには敏感な娘だ。
「スパイってのは情報収集とかが任務だろ。さすがに殺しになってくると、スパイとは言えないんじゃないか?」
そろそろ寝る準備をしようと思って、机の上を片付けることにした。片付けながら、ヴィルザとの会話を続ける。
「でも、間違いない。あれは殺気じゃった。純粋な殺気ではなかったがな。なにか……違和感があったが」
と、ヴィルザは曖昧な言い方をした。
「あの場にいた誰かを殺そうとしていた――ってことは、たぶんオレだろうな」
「可能性としては考えられるが、ゼッタイというわけでもない。何か事情を抱えた者がおるかもしれんしな」
「ッたく、期末テストが控えている、この重要な時期に、厄介なヤツを見つけちまったもんだ」
教科書、羽根ペン、インク瓶。
それから、書き上げた薬草学のレポートのインクが乾いているのを確認して、カバンのなかに詰め込んだ。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
149
-
-
70810
-
-
337
-
-
0
-
-
55
-
-
140
-
-
381
-
-
0
-
-
127
コメント