《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第5-4話「魔術実践学の期末テストのヒント」

 魔術実践学に遅刻した。



 だだっ広い緑広がる練兵場のような校庭で、魔術学院指定の黒い外套と、トンガリ帽子をかぶった生徒たちの群れがある。ケネスは隠密にその群れに、潜り込むことにした。グラトンは気づいていたかもしれないが、お咎めはなかった。



「よっ。人気者。なにしてたんだよ」
 と、ロレンスが話しかけてきた。



 ロレンスは出会った当初は、いがみ合っていたが、今では友人同士だ。ロレンスの性格もいくらか丸くなったように感じられる。



 このハーディアル魔術学院には、いくつか怪談話がある。そのうちのひとつに、バケモノ染みた強さの漆黒の騎士の亡霊が徘徊している――と言うものがある。ロレンスは、その漆黒の騎士を探し回っているようだった。



「ちょっと、いろいろあってな。それより期末テストの内容、発表されたか?」



「ああ。さっきされたところだ」
「聞き逃したか……」



 あのサマルとかいう先輩のせいだ。そう思うと、腹立たしい。今回の期末テストは、魔術実践学の単位がかかった大切なものなのだ。この単位を取れたものだけが、さらに上位の、高等魔術実践学の講義を受けることができる。



「心配すんなよ。ちゃんと教えてやるから」



 爽やかに微笑んでそう言った。
 傾国の美姫と言われるガルシアの弟なだけあって、整った顔立ちをしている。そのプラチナブロンドの髪と青い瞳から発せられる笑みには、なかなかの迫力がある。



「神々を憎む支配者の城から、定められし勝者の証を光の世界へ届けたまえ」



 何かの呪文のように、ロレンスはそうつぶやいた。



「は?」



「それが今回の期末テストのヒントだそうだ。あとは自分で考えろ――ってことだろうな」



「なんだ、それ?」



「一流の魔術師になりたけりゃ、頭も使えってことじゃないか?」



「ロレンスは、わかってるのか? テストの内容」



「いや、サッパリ。でもまぁ、たかが試験だし、そんなに危険なことは、やらされねェと思うけどな」



「ちなみに今まではどんな内容だったんだ? 去年とか、その前の年とか」



「あんまり詳しくは知らないよ、オレも。ただ前年度はたしか、ドワーフたちの鉱山から、鉱石を持ち帰ったヤツだけが合格だったそうだけど。その前は、エルフの森から貴重な薬草を採取してくるんだったかな」
 と、ロレンスは思案気に、首をひねりながら言った。



「学院の外に出るのか」
「そういうこともあるみたいだな」
「けっこう危険そうなテストだな」



「合格者は数が限られてる。ほとんどが単位を落としてる。合格できなかったヤツは、3年になってもこの単位を取り続けてるわけだ。ほら、あそこの3年連中が、それだ」
 と、ロレンスが指さした。



 ゲッ、と思った。
 さきほどケネスに絡んできたサマルたちがいたのだ。目が合った。サマルはケネスのことを睨みつけてきた。



「つまり、留年ってわけか」
 また1から魔術を学ぶのは、カンベンしてもらいたい。
 それはロレンスも同じ気持ちのようだ。



「もう1年、最初から魔術実践学なんてオレはゴメンだ。一刻もはやく帝国魔術師になって、姉さんをギャフンと言わせてやりたいからな」
 と、ロレンスは遠い目をして、呟いた。



 ロレンスは、姉のガルシアをずっと追いかけ続けているのだ。その夢はいまだ潰えていないらしい。



「オレだって……」
 そのガルシアとの約束がある。
 あんまりチンタラしていられない。



「そうそう。あと今回の期末テストは3人パーティで挑むんだとよ。ちゃんと3人。仲間を見つけとけよ」



「3人って、誰でもいいのか?」



「ああ。この講義を受けてないヤツでも、いいらしいぜ。無難なのは今の3年に助っ人を頼むことだな。まぁ、ケネスなら、誰でもオッケーしてくれるだろうが」



「マジか……」



 自慢じゃないが、ケネスは友達がすくない。別に嫌われているわけではないのだが、ヴィルザと一緒にいることが多いので、友達が必要になる場面がすくなかったのだ。ゆいいつ仲の良かったヨナは、ケリュアル王国のスパイだった。



「ロレンスは?」



「オレは、ハンプティとダンプティがいるからな。それで3人パーティだ」



「パーティか」
 探しておかないといけない。

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