《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第4-18話「暴動 Ⅱ」
「我らには、《帝国の劫火》がついてるぞッ。怖れるものなど、何もない! 荒らして、荒らしまくれッ」
ミファが金で雇った男たちが、ココルの都市で暴れまわっている。ケネスで仮面で顔を隠して、その様子を見ていた。その仮面というのは、もちろん、ミファから渡されて以前にもつけたものだ。白くてノッペリしたものだ。
「大人気じゃない。《帝国の劫火》さん」
と、ミファがカラカうように言う。
「なんか、ウワサだけが広がってる感もあるけどな」
《帝国の劫火》。故郷を焼かれて、たった1人でソルト率いる王国軍を殲滅させた男。その所業たるやまさに魔神のごとく荒々しく、王国軍を血祭りにあげた。
そして、王国治安維持騎士部隊は木端微塵に粉砕されて、ココルの都内に魔力覚醒剤を売りさばいた悪の親玉。公爵令嬢であるミファを薬漬けにした大悪党……などと言われている。
どれも微妙に違うのだ。そもそも、魔力覚醒剤を売っていたのはミファ自身だし、ミファがジャンキーだったのは、もとからだ。薬漬けどころか、ケネスは止めに入った側でもある。
「なんか、トンデモナイ悪人に仕立て上げられてないか。オレ?」
「いいじゃない。箔がついて」
「他人事だと思ってるだろ」
「だって私は《帝国の劫火》さんに、薬漬けにされたカワイソウな公爵令嬢なんだし」
「いったい、どういうウワサの広がり方をしたんだか……」
ミファの雇った傭兵団たちが、都内で暴れまわっている。都民は逃げ惑い、逃げ遅れた者たちは虐殺されていた。以前までは、人を殺したり、殺されたりといったことにたいして、ケネスは怯懦だった。
ベルモンド・ゴーランを殺したときもそうだし、ゲヘナ・デリュリアスを殺したときもそうだ。人が死ぬというのは、あまり気持ちの良いものではない。しかし、今は、動揺せずにいることができた。
故郷での刺激が強すぎたというのもあるが、ケリュアル王国民は、帝国の敵だと認識していたからだ。
(こいつらは、オレの故郷を滅ぼした連中と同じだ)
そう思うことで、平静を保つどころか、胸がすくような感情さえよぎった。
もしかすると――。
こうやって人が死ぬことを、なんとも思わなくなって、その延長線上にはヴィルザのような、無邪気に人を殺してしまう精神が待ち構えているのかもしれない。
「そろそろ良いんじゃない?」
「そうだな」
城や領主館からも多くの騎士が動員されていた。バートリーを救い出すなら、手薄になっている今だろう。
「バートリーさんを救い出す。ソルトを殺して、一緒に帝国に行く。それで良いんだな?」
「ええ。構わないわ」
「両親を、王国に残したままになるが」
「……いいのよ。父はエリート志向で私のことなんて考えてないし、母は男のことしか考えてないんだから」
父親にたいしてなのか、母親にたいしてなのかは、わからない。でも、ミファの中には、まだ何か家族にたいする思い入れがあるように見えた。
ミファは薬を売り裁いて、この都市を乗っ取るつもりだった。そして、王国軍に捕らえられて、処刑されるのが、本来の予定だったと聞いている。
(それって、やっぱり……)
悪の道に走っているというよりも、両親から心配されたいだけなんじゃないかとも思う。勝手なケネスの思い込みかもしれないが。
「わかった。行こう」
ケネスは領主館に足をすすめた。
ミファが金で雇った男たちが、ココルの都市で暴れまわっている。ケネスで仮面で顔を隠して、その様子を見ていた。その仮面というのは、もちろん、ミファから渡されて以前にもつけたものだ。白くてノッペリしたものだ。
「大人気じゃない。《帝国の劫火》さん」
と、ミファがカラカうように言う。
「なんか、ウワサだけが広がってる感もあるけどな」
《帝国の劫火》。故郷を焼かれて、たった1人でソルト率いる王国軍を殲滅させた男。その所業たるやまさに魔神のごとく荒々しく、王国軍を血祭りにあげた。
そして、王国治安維持騎士部隊は木端微塵に粉砕されて、ココルの都内に魔力覚醒剤を売りさばいた悪の親玉。公爵令嬢であるミファを薬漬けにした大悪党……などと言われている。
どれも微妙に違うのだ。そもそも、魔力覚醒剤を売っていたのはミファ自身だし、ミファがジャンキーだったのは、もとからだ。薬漬けどころか、ケネスは止めに入った側でもある。
「なんか、トンデモナイ悪人に仕立て上げられてないか。オレ?」
「いいじゃない。箔がついて」
「他人事だと思ってるだろ」
「だって私は《帝国の劫火》さんに、薬漬けにされたカワイソウな公爵令嬢なんだし」
「いったい、どういうウワサの広がり方をしたんだか……」
ミファの雇った傭兵団たちが、都内で暴れまわっている。都民は逃げ惑い、逃げ遅れた者たちは虐殺されていた。以前までは、人を殺したり、殺されたりといったことにたいして、ケネスは怯懦だった。
ベルモンド・ゴーランを殺したときもそうだし、ゲヘナ・デリュリアスを殺したときもそうだ。人が死ぬというのは、あまり気持ちの良いものではない。しかし、今は、動揺せずにいることができた。
故郷での刺激が強すぎたというのもあるが、ケリュアル王国民は、帝国の敵だと認識していたからだ。
(こいつらは、オレの故郷を滅ぼした連中と同じだ)
そう思うことで、平静を保つどころか、胸がすくような感情さえよぎった。
もしかすると――。
こうやって人が死ぬことを、なんとも思わなくなって、その延長線上にはヴィルザのような、無邪気に人を殺してしまう精神が待ち構えているのかもしれない。
「そろそろ良いんじゃない?」
「そうだな」
城や領主館からも多くの騎士が動員されていた。バートリーを救い出すなら、手薄になっている今だろう。
「バートリーさんを救い出す。ソルトを殺して、一緒に帝国に行く。それで良いんだな?」
「ええ。構わないわ」
「両親を、王国に残したままになるが」
「……いいのよ。父はエリート志向で私のことなんて考えてないし、母は男のことしか考えてないんだから」
父親にたいしてなのか、母親にたいしてなのかは、わからない。でも、ミファの中には、まだ何か家族にたいする思い入れがあるように見えた。
ミファは薬を売り裁いて、この都市を乗っ取るつもりだった。そして、王国軍に捕らえられて、処刑されるのが、本来の予定だったと聞いている。
(それって、やっぱり……)
悪の道に走っているというよりも、両親から心配されたいだけなんじゃないかとも思う。勝手なケネスの思い込みかもしれないが。
「わかった。行こう」
ケネスは領主館に足をすすめた。
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