《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第4-9話「薬の取引」
古びて今にも崩れそうな建物のトビラを、ミファは叩いた。そのときにはすでにミファは仮面で顔を隠していた。「あんたも、いちおう」と仮面を渡された。目元と鼻元だけ穴の開いた面だった。ケネスも、顔を隠しておいた。
「合言葉は?」
木造の薄汚れたトビラの向こうから、地獄の底から響くような薄暗い声音が聞こえた。
「光を浴びて生きられる者が、闇を覗くべきではない」
ミファがよどみなく答えると、しばしの間を開けて、キィ、とトビラが開いた。トビラの向こうからはまるでダンジョンのような血なまぐさい臭いがした。ミファが物怖じすることなく入って行くので、ケネスも後に続いた。
「さっきの合言葉は?」
と、尋ねる。
「別に意味なんてないわ。ここをナワバリにしてる暗黒組合の連中が、合言葉にしてるのよ」
ということだった。
酒場のようだ。
薄暗いなかには巨木を輪切りにしたテーブルがいくつも並べられていた。カウンターテーブルもある。座っているのは、みんな人相の悪い連中だった。ケネスたちと同じように、何かしらの方法で顔を隠している連中もいる。
「なんなんだ、ここ」
ウッカリ誰かの足でも踏みつけると、一悶着起こりそうなので、足元には気を付けていた。
「冒険者組合にも、各地に支部があるでしょう。暗黒組合もところどころに、こういう支部があるの。人殺しや、強盗。窃盗なんかを依頼しに来るヤツがいるのよ」
「厭な組合だ」
死臭が漂っている。
『それでオレが女を押さえつけてよ。犯してやったわけ。依頼者が女の弱味を握ってくれって言うからよ。そしたら、その女、犯されてんのに、すげぇ濡れてやがってよ』
ヘラヘラと悪人どもが笑っている。
飛び交う会話もクソみたいな内容だった。
「お前にお似合いの場所だな」
公爵令嬢だとか、ミファといった本人を特定されるような言葉は使わないほうが良いと判断して、ケネスはそう言った。もちろん皮肉だ。
「そうでしょ」
と、ミファは仮面ごしに、クスクス、と笑っていた。
壁沿いにあるひとつの席にミファが座る。ケネスはミファの後ろに立つことにした。その席には、他にも男たちが3人座っていた。3人の男がいっせいにミファを見つめた。
「薬は持ってきたか?」
「ええ」
と、ミファはミノタウロスの革でできたと思われるカバンを机上に置いた。そのカバンはケネスにはゼッタイに持たせようとせず、ミファが大事に抱えていたものだった。カバンが開く。中から出てきたのは、小瓶に入れられた粉末のカタマリだった。おそらくそれが、魔力覚醒剤なのだろう。
「確認させてもらうぞ」
「その前に、お金のほうを確認させて」
「いいだろう」
なんの前触れもなく、なんの合図もなく、薬と金の取引がはじまっていた。こういう世界もあるのか――とケネスは唖然と見つめていた。ミファがお金を受けとり、代わりに薬が男たちに渡された。
ミファが立ちあがる。
「帰るわよ」
と、耳打ちしてきた。
「そうか」
意外とアッサリ終わった。渡された薬は、さらに細かく分けられて闇のルートに流されてゆくのだろう。
薬を受け取った男3人からは、妙に粘り気のある視線が向けられていた。
「合言葉は?」
木造の薄汚れたトビラの向こうから、地獄の底から響くような薄暗い声音が聞こえた。
「光を浴びて生きられる者が、闇を覗くべきではない」
ミファがよどみなく答えると、しばしの間を開けて、キィ、とトビラが開いた。トビラの向こうからはまるでダンジョンのような血なまぐさい臭いがした。ミファが物怖じすることなく入って行くので、ケネスも後に続いた。
「さっきの合言葉は?」
と、尋ねる。
「別に意味なんてないわ。ここをナワバリにしてる暗黒組合の連中が、合言葉にしてるのよ」
ということだった。
酒場のようだ。
薄暗いなかには巨木を輪切りにしたテーブルがいくつも並べられていた。カウンターテーブルもある。座っているのは、みんな人相の悪い連中だった。ケネスたちと同じように、何かしらの方法で顔を隠している連中もいる。
「なんなんだ、ここ」
ウッカリ誰かの足でも踏みつけると、一悶着起こりそうなので、足元には気を付けていた。
「冒険者組合にも、各地に支部があるでしょう。暗黒組合もところどころに、こういう支部があるの。人殺しや、強盗。窃盗なんかを依頼しに来るヤツがいるのよ」
「厭な組合だ」
死臭が漂っている。
『それでオレが女を押さえつけてよ。犯してやったわけ。依頼者が女の弱味を握ってくれって言うからよ。そしたら、その女、犯されてんのに、すげぇ濡れてやがってよ』
ヘラヘラと悪人どもが笑っている。
飛び交う会話もクソみたいな内容だった。
「お前にお似合いの場所だな」
公爵令嬢だとか、ミファといった本人を特定されるような言葉は使わないほうが良いと判断して、ケネスはそう言った。もちろん皮肉だ。
「そうでしょ」
と、ミファは仮面ごしに、クスクス、と笑っていた。
壁沿いにあるひとつの席にミファが座る。ケネスはミファの後ろに立つことにした。その席には、他にも男たちが3人座っていた。3人の男がいっせいにミファを見つめた。
「薬は持ってきたか?」
「ええ」
と、ミファはミノタウロスの革でできたと思われるカバンを机上に置いた。そのカバンはケネスにはゼッタイに持たせようとせず、ミファが大事に抱えていたものだった。カバンが開く。中から出てきたのは、小瓶に入れられた粉末のカタマリだった。おそらくそれが、魔力覚醒剤なのだろう。
「確認させてもらうぞ」
「その前に、お金のほうを確認させて」
「いいだろう」
なんの前触れもなく、なんの合図もなく、薬と金の取引がはじまっていた。こういう世界もあるのか――とケネスは唖然と見つめていた。ミファがお金を受けとり、代わりに薬が男たちに渡された。
ミファが立ちあがる。
「帰るわよ」
と、耳打ちしてきた。
「そうか」
意外とアッサリ終わった。渡された薬は、さらに細かく分けられて闇のルートに流されてゆくのだろう。
薬を受け取った男3人からは、妙に粘り気のある視線が向けられていた。
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