《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第4-6話「指名手配」
外――。
ケネスは帝国の人間としても、そして昨晩、治安維持騎士部隊の人間としても顔が知られているため、顔を隠す必要があった。黒い外套で全身をつつみ、顔はフードですっぽりと覆った。
治安維持騎士部隊を吹き飛ばしたせいかもしれない。ケネス・カートルドの人相書きが都市には、いくつも張られていた。あれ? オレってこんなに悪人面だったっけ? 憎悪とか困憊が、ケネスの顔つきを少し変えたのかもしれない。
「有名人じゃん」
と、ミファはこの状況を面白がるように言った。
「そう言うミファは、顔をさらしても大丈夫なのかよ。昨日は、魔法覚醒剤の罪とかで追われてたじゃないか」
「顔を隠してたもの。大丈夫よ。それにヤバくなったら、守ってくれるんでしょ?」
「そういう契約だったな」
都市の騎士たちは、何かに追われるようにケネス・カートルドのことを捜索しているようだった。
都市の広場の給水泉に水をくみに来ている人たちが列をつくっていた。騎士はその列にいる人一人一人に尋ねて回っていた。
「いつか見つかりそうだな、オレ」
不思議と恐怖心はなかった。やけに心が冷めている。自分のことなのに、自分のことでないような感覚。
「心配ないわよ。見つからない」
ミファはやけに断定的に言った。
「なぜ、そう言えるんだ?」
「だって私がついてるもの。私の付き人だって言っておけば問題ないわ。私の身分を忘れたのかしら」
そう言えば、公爵令嬢だった。しかし、護衛もなしに都市を歩き回る公爵令嬢がいるものだろうかと怪訝に思った。そう言えば、自分がその護衛役なのだった――とケネスは思い出した。
「このストリートの先のほう、右手に大きな屋敷が見えるでしょ」
「ああ」
石畳の立派なストリートだった。石と木で組み上げられた建物が、いくつも建ち並んでいたが、たしかにひとつだけ大きな屋敷があった。小高い位置にあって、周囲を見下ろしているようだった。ミファの屋敷とは正反対の、不健康なまでに白い屋敷だった。陽光を反射するチカラが強くて、直視することはできなかった。
「あの屋敷が、ココルの都市の領主館。城もあるけど、領主のソルトはおもに、こっちにいるわ」
「あそこに……」
《可視化》
目をこらして、屋敷を見つめることにした。外壁を透けて見てしまえば、白い眩さは邪魔にはならなかった。
屋敷の中を、くまなく探す。ケネスの《可視化》もこのところ、ずいぶんと熟練度が上がっている。視線が、屋敷中を駆け巡る。
「いた……」
バートリーと、連れて行かれたもう一人の少女。地下牢で捕まっているようだ。手足を拘束されているさまが、遠目に見えた。
「え? 何か見えた?」
「見つけた。おかげで助かったよ」
この広い都市のなかから、バートリーを探し出すのに苦労していた。ミファのおかげで、探す手間がはぶけた。
「役に立てたのなら、良かった。けど、自分の目的だけ果たそうとしないでね。私の護衛を忘れないでよ」
「わかってる」
これはこれで、ミファさま――と正面から、いかにもだらしのない調子で歩いて来る男がいた。
真っ赤な髪を無造作に乱しており、そり残された無精ヒゲが目立つ。
「彼が、ソルト・ドラグニルよ」
と、ミファが耳打ちで教えてくれたのだった。
ケネスは帝国の人間としても、そして昨晩、治安維持騎士部隊の人間としても顔が知られているため、顔を隠す必要があった。黒い外套で全身をつつみ、顔はフードですっぽりと覆った。
治安維持騎士部隊を吹き飛ばしたせいかもしれない。ケネス・カートルドの人相書きが都市には、いくつも張られていた。あれ? オレってこんなに悪人面だったっけ? 憎悪とか困憊が、ケネスの顔つきを少し変えたのかもしれない。
「有名人じゃん」
と、ミファはこの状況を面白がるように言った。
「そう言うミファは、顔をさらしても大丈夫なのかよ。昨日は、魔法覚醒剤の罪とかで追われてたじゃないか」
「顔を隠してたもの。大丈夫よ。それにヤバくなったら、守ってくれるんでしょ?」
「そういう契約だったな」
都市の騎士たちは、何かに追われるようにケネス・カートルドのことを捜索しているようだった。
都市の広場の給水泉に水をくみに来ている人たちが列をつくっていた。騎士はその列にいる人一人一人に尋ねて回っていた。
「いつか見つかりそうだな、オレ」
不思議と恐怖心はなかった。やけに心が冷めている。自分のことなのに、自分のことでないような感覚。
「心配ないわよ。見つからない」
ミファはやけに断定的に言った。
「なぜ、そう言えるんだ?」
「だって私がついてるもの。私の付き人だって言っておけば問題ないわ。私の身分を忘れたのかしら」
そう言えば、公爵令嬢だった。しかし、護衛もなしに都市を歩き回る公爵令嬢がいるものだろうかと怪訝に思った。そう言えば、自分がその護衛役なのだった――とケネスは思い出した。
「このストリートの先のほう、右手に大きな屋敷が見えるでしょ」
「ああ」
石畳の立派なストリートだった。石と木で組み上げられた建物が、いくつも建ち並んでいたが、たしかにひとつだけ大きな屋敷があった。小高い位置にあって、周囲を見下ろしているようだった。ミファの屋敷とは正反対の、不健康なまでに白い屋敷だった。陽光を反射するチカラが強くて、直視することはできなかった。
「あの屋敷が、ココルの都市の領主館。城もあるけど、領主のソルトはおもに、こっちにいるわ」
「あそこに……」
《可視化》
目をこらして、屋敷を見つめることにした。外壁を透けて見てしまえば、白い眩さは邪魔にはならなかった。
屋敷の中を、くまなく探す。ケネスの《可視化》もこのところ、ずいぶんと熟練度が上がっている。視線が、屋敷中を駆け巡る。
「いた……」
バートリーと、連れて行かれたもう一人の少女。地下牢で捕まっているようだ。手足を拘束されているさまが、遠目に見えた。
「え? 何か見えた?」
「見つけた。おかげで助かったよ」
この広い都市のなかから、バートリーを探し出すのに苦労していた。ミファのおかげで、探す手間がはぶけた。
「役に立てたのなら、良かった。けど、自分の目的だけ果たそうとしないでね。私の護衛を忘れないでよ」
「わかってる」
これはこれで、ミファさま――と正面から、いかにもだらしのない調子で歩いて来る男がいた。
真っ赤な髪を無造作に乱しており、そり残された無精ヒゲが目立つ。
「彼が、ソルト・ドラグニルよ」
と、ミファが耳打ちで教えてくれたのだった。
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