《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第3-16話「シュネイ戦線 Ⅱ」

 新たに斥候部隊を編制して、敵部隊の捜索に向かわせているところだった。バートリーは野営地で腰をおろしている。おそらく周囲からは、冷静な人間だと思われているだろう。バートリーは滅多に表情を動かすことがないのだ。自分でも、その原因は良くわからない。物心ついたときから、顔を動かすことが不得意だった。しかし、その能面の中身は、普通の人間のそれだ。



 焦りもすれば、狼狽えもする。



(まだ――でしょうか)



 新しく編成した斥候部隊を行かせてから、もう1時間は経つ。まだ連絡は来ない。つい片メガネに手が伸びる。動揺したときに、この片メガネをこする癖があるようだ。自分のことながら、いまさら気づいた。



『ご報告します』
 声。



《通話》が入ったので、激しく動悸していた心臓が、わずかながら正常なリズムを取り戻した。



「はい」



『ソルト・ドラグニルが率いる王国軍は、国境砦を制圧。本体はそのまま砦に籠っております』



「動きは?」



『本体に動きはありませんが、騎馬隊の500が西の森へ移動をはじめました』



 西?
 砦から見ればシュネイの村は、南西にある。西には森があるだけで、特にこれといったものはないはずだ。



「斥候部隊は二手にわかれてください。チームAは、国境砦をそのまま監視。チームBは、騎馬隊の追跡を可能なかぎりお願いします」



『了解』



 斥候部隊に選び出したのは、風系A級基礎魔法の《浮遊》を使える者たちだ。浮いて、追尾することができる。それでも、馬の足に追いつくのは難しい。ましてや見晴らしの良い平原では、尾行がむずかしくなる。



 しばらく待った。
 連絡が入る。



『こちら、チームB。騎馬隊はどうやら、森のなかに野営地をつくるようです』



 シュネイの村を制圧して、そこを野営地にするものだと思っていた。わざわざ森に入るのは、何か理由があるのだろうか? ひとつ考えられるのは、すでにバートリーの部隊が、ここに陣取っているのがバレているということだ。こちらが斥候を放ってるように、相手もどこかしらに斥候を放っているだろうから、バレていても不思議な話ではない。



(私の部隊がいる場所を避けてる?)



 森の位置は、国境砦から見ると西。
 バートリーから見ると、北になる。



 将来的にどういう働きをしてくるのか、想像してみる。



 北東の国境砦から王国軍本体が攻め込んできたとき、バートリーの部隊はマトモに衝突することになる。すぐには決着はつかないだろう。しばしの膠着状態になるはずだ。



 そのとき――。



 北の森にいる遊撃隊が厄介な存在になる。バートリーたちが膠着しているあいだに、シュネイの村を襲われるかもしれない。背中を突かれることになるかもしれない。機動力のある騎馬隊だけあって、自在に動き回ることができる。



「邪魔……ですね」
『いかがいたしましょう?』



「その騎馬隊を叩きます。私が出ましょう。斥候部隊は続けて見張っておいてください。何か動きがあれば、すぐに伝えるように」



 もう戦ははじまっているのだ。
 相手の動きを傍観しているだけでは、呑み込まれてしまう。



 バートリーは馬にまたがった。
 馬は、今でもあまり慣れない。アブミも鞍もどことなくシックリ来ない。揺れればお尻が痛い。

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