《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第2-30話「残り7つ」
やりすぎだ。
そう思って魔法陣を消したときには、もう遅かった。すべてがマグマに呑み込まれていた。
魔法陣を消したせいで、発生させていたマグマが消えていた。薄暗い石造りの廊下だったはずの場所には、大穴が開いていた。マグマが溶かしてしまったのだ。
「ヨナは……ロレンスも……」
「案ずるな。2人とも無事だ」
「でも、マグマに呑み込まれたじゃないか」
「私もそうバカではない。ケネスがダメだと言ったことは、ちゃんと守る。人は殺さんようにしたつもりだ」
たしかにロレンスは無事だった。ただ、またしても気絶しているようだ。ただ、ヨナの姿はどこにもなかった。
「マグマで溶けちゃったんじゃないだろうな?」
「逃げられた」
「逃げたって、あの状況からどうやって?」
マディシャンの杖がある部屋は、行きどまりになっていた。マディシャンの石像と、杖があるだけの部屋だった。その石像も――いや、むしろ部屋ごと溶けて消えてしまっている。石が泥のようになって、ツララのように垂れていた。
「転移石だな。ケリュアル王国のスパイと言っておったから、あらかじめ逃げる準備はしていたんだろう。杖を、持って逃げられなくて良かった」
転移石。
ケネスがこの学院に来るときに使ったものと、同じようなものを持っていたのだろう。
「杖は?」
「シッカリと焼ききった」
「……そっか」
セッカクの《神の遺物》だ。モッタイなかったような気がしないでもない。でも、人が扱うと大変なことになると言っていたし、消し去ってしまったほうが良かったのかもしれない。戦争に利用されるよりかは、良かったのだろう。
「それで、ヴィルザの封印はどうなったんだ?」
「ふふふふっ」
と、ヴィルザはケネスの正面に立つと、肩を揺らせて笑っていた。
「なんだよ、その不気味な笑いは」
「ほれ、見てわからんか。封印ひとつ分、チッとばかり色気が増したであろう。八角封魔術の1つが解けたおかげだ」
「え……」
赤い髪を長く伸ばしており、瞳にはあどけなさと凛然さが混在している。相変わらず背丈は低くて、胸もペッタンコだ。頭の異様な巻き角も、変わったようには見えない。
「ほれ、どうだ? 私にメロメロであろう」
「ゴメン。どこが変わったのかよくわからないんだけど」
満面の笑みだったヴィルザは、眉間にシワを寄せて、口先をとがらせはじめた。
「胸が、すこし大きくなったであろうが! このポンコツめッ。女心がぜんぜんわかっとらん!」
ヴィルザはそう言って、ふんっ、と胸を張りだしている。
「ゴメン」
そう言われてもなお、ヴィルザの胸が大きくなったようには見えなかった。
それはさておき、八角封魔術が1つ、解けてしまった。過去の神々が苦労して封じた存在が、一歩、世界に向かって足を進めたのだ。ケネスは強くなるために前へ進もうとしている。ヴィルザは存在を取り戻すために前へ……前へ……二人三脚。この道の先には、いずれ大きな不幸が待ち受けているような予感がした。
「なんの騒ぎじゃ!」
声がした。
振り向くと、ブルンダ学院長が他の教師たちとともに、やって来るところだった。
「ヤバっ」
ヴィルザのチカラを持っていることは、秘密にしておきたい。秘密にしておきたいから、騎士のヘルムをかぶっているのだ。教師たちに見つかっては、顔を隠した意味がない。……ブルンダ学院長だけは、感づいてるかもしれないが。
ヴィルザが《透明化》の魔法をかけてくれた。ケネスはヒッソリとその場から、退散することにした。
そう思って魔法陣を消したときには、もう遅かった。すべてがマグマに呑み込まれていた。
魔法陣を消したせいで、発生させていたマグマが消えていた。薄暗い石造りの廊下だったはずの場所には、大穴が開いていた。マグマが溶かしてしまったのだ。
「ヨナは……ロレンスも……」
「案ずるな。2人とも無事だ」
「でも、マグマに呑み込まれたじゃないか」
「私もそうバカではない。ケネスがダメだと言ったことは、ちゃんと守る。人は殺さんようにしたつもりだ」
たしかにロレンスは無事だった。ただ、またしても気絶しているようだ。ただ、ヨナの姿はどこにもなかった。
「マグマで溶けちゃったんじゃないだろうな?」
「逃げられた」
「逃げたって、あの状況からどうやって?」
マディシャンの杖がある部屋は、行きどまりになっていた。マディシャンの石像と、杖があるだけの部屋だった。その石像も――いや、むしろ部屋ごと溶けて消えてしまっている。石が泥のようになって、ツララのように垂れていた。
「転移石だな。ケリュアル王国のスパイと言っておったから、あらかじめ逃げる準備はしていたんだろう。杖を、持って逃げられなくて良かった」
転移石。
ケネスがこの学院に来るときに使ったものと、同じようなものを持っていたのだろう。
「杖は?」
「シッカリと焼ききった」
「……そっか」
セッカクの《神の遺物》だ。モッタイなかったような気がしないでもない。でも、人が扱うと大変なことになると言っていたし、消し去ってしまったほうが良かったのかもしれない。戦争に利用されるよりかは、良かったのだろう。
「それで、ヴィルザの封印はどうなったんだ?」
「ふふふふっ」
と、ヴィルザはケネスの正面に立つと、肩を揺らせて笑っていた。
「なんだよ、その不気味な笑いは」
「ほれ、見てわからんか。封印ひとつ分、チッとばかり色気が増したであろう。八角封魔術の1つが解けたおかげだ」
「え……」
赤い髪を長く伸ばしており、瞳にはあどけなさと凛然さが混在している。相変わらず背丈は低くて、胸もペッタンコだ。頭の異様な巻き角も、変わったようには見えない。
「ほれ、どうだ? 私にメロメロであろう」
「ゴメン。どこが変わったのかよくわからないんだけど」
満面の笑みだったヴィルザは、眉間にシワを寄せて、口先をとがらせはじめた。
「胸が、すこし大きくなったであろうが! このポンコツめッ。女心がぜんぜんわかっとらん!」
ヴィルザはそう言って、ふんっ、と胸を張りだしている。
「ゴメン」
そう言われてもなお、ヴィルザの胸が大きくなったようには見えなかった。
それはさておき、八角封魔術が1つ、解けてしまった。過去の神々が苦労して封じた存在が、一歩、世界に向かって足を進めたのだ。ケネスは強くなるために前へ進もうとしている。ヴィルザは存在を取り戻すために前へ……前へ……二人三脚。この道の先には、いずれ大きな不幸が待ち受けているような予感がした。
「なんの騒ぎじゃ!」
声がした。
振り向くと、ブルンダ学院長が他の教師たちとともに、やって来るところだった。
「ヤバっ」
ヴィルザのチカラを持っていることは、秘密にしておきたい。秘密にしておきたいから、騎士のヘルムをかぶっているのだ。教師たちに見つかっては、顔を隠した意味がない。……ブルンダ学院長だけは、感づいてるかもしれないが。
ヴィルザが《透明化》の魔法をかけてくれた。ケネスはヒッソリとその場から、退散することにした。
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