《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第2-11話「魔術実践学」
次の講義は、グラトン先生の魔術実践学だった。グラトン先生は、恰幅の良い白髪の先生だった。しかもその白髪が爆発でもおこしたみたく、盛り上がっている。インクを一滴だけ垂らしたような小さな目をしていた。先生の名前をおぼえるのも大変だ。
さきほどのような机に座ってやるような講義ではないらしく、外に出て行うことになった。練兵場のような場が広がっていた。足元にはちゃんと芝が刈りそろえられている。緑の湖の上にでも立っているような心地だった。
講義は選択性になっており、魔術実践学を選択しているのは、おおよそ100人ほどいるようだった。
「この学校の1年生だって、何人ぐらいいるんだ?」
隣に立っているヨナに尋ねた。
「だいたい150人ぐらいかな。マホ教は種族で差別しないから、中にはエルフもいるし、獣人族もいるよ」
たしかに、長く垂れた耳の者もいたし、トンガリ帽子から獣のような耳をのぞかせている者もいた。
「じゃあ、だいたいはみんな、この講義を選択してるってことか」
「まあ、魔術師になりたいなら、実践は欠かせないしね」
「それもそっか」
なかには、ロレンスもいた。
ロレンスはさっきの一件により、完全にケネスのことを敵とみなしたらしく、あからさまに敵意のこもった目を送りつけてきた。ロレンスの両脇には、ゆで卵を巨大化したようなトリマキがいた。ロレンスの右手にいるのがハンプティ。左手にいるのがダンプティで、双子なのだとヨナが教えてくれた。
「はーい。それじゃあ、魔術実践学を、はじめていきまーす」
と、グラトン先生がノンビリとした語調で切り出した。
「それではみなさん。まずは魔法陣を展開していきましょう。念を込めるんですよ」
とグラトン先生の声はノンビリとしているのに、広々とした校庭に良く響いた。周囲には本校舎やら寮やら城壁があるので、声が反響しているのかもしれない。
「ふぅ」
と、ケネスは緊張して息を吐きだした。
もし自分だけ、魔法が使えなかったらどうしようかと言う不安にかられたのだ。ケネスは最近になってようやく、《灯》と言われる基礎魔法を使えるようになった。他に使える魔法はない。
不安がっていても仕方がない。
他の生徒たちが、魔法陣を展開しはじめているので、ケネスもいつものように魔法陣を展開した。
ヨナは魔法陣を展開することも出来ないようだった。魔法陣らしき青白い光が、ヨナの手の前でモヤッと現われるのだが、形とならずに消えてしまうのだった。そしてそれは、ヨナだけではなかった。
「ケネスはすごいなぁ。もう魔法陣を展開することができるのか」
ヨナは感心したように言った。
「これは、すごいって言えるのか?」
「ボクたちはまだ1年生だから、魔法陣を展開できない生徒もすくなくないよ」
なるほど、と納得した。
魔術師学校とはいえ、ここにいるのは全員1年生だ。つまり、これから魔術を学ぼうと決意して、やって来た生徒の集まりなのだ。使いこなせるなら、わざわざ学校にも来ていない。
(これはオレにとっては、チョウド良いレベルかもしれない)
今まで冒険者の中ではFランクとして、バカにされてきた。しかし、冒険者は実戦のなかで鍛えられてきた猛者の集まりだ。魔術師学校のなかでは、もしかするとオレも月並みレベルではあるのかもしれない――とケネスは期待した。ヴィルザは至極つまらなさそうに宙に漂っているが、この学校に来たのは間違いのなかった選択だったと思った。
「いいですか。来週までに魔法陣を完璧に作り、基礎魔法である《発火》を扱えるようになることを目標としますよ」
1年生はまだ誰も、魔法を発現するところまでは出来ないようだった。《灯》を扱えるケネスも、この中では、それなりに優秀な部類ということだ。もっとも、見せびらかそうとは思わなかったが。
しかし――。
1人だけズバ抜けて優秀な生徒がいた。
それが、ロレンスだ。
「1週間かけて《発火》かよ。レベル低すぎるぜ先生。オレはもう《火球》を扱えるようになったぜ」
ロレンスはそう吠えると、ホントウに《火球》を放ってみせた。人の顔ほどもある大きさの火の球が放たれて、校庭に焦げ跡をつくった。
おおっ……と生徒たちが感嘆の声をあげていた。
しかしケネスは、声をあげる気にはならなかった。意地を張っているわけではない。その程度で威張られても、なんとも思わないのだ。王国軍が帝都を襲撃したさいには、もっとスゴイ魔法が飛び交っていた。
「みなさんも、ロレンスくんを見習って、魔術に磨きをかけるように」
と、グラトン先生は燃えた校庭の芝を、魔法でもとに戻していた。
「どれ、ケネスも一発かましてやるか? 私の魔法を見せてやれば、度肝を抜かしよるぞ」
ヴィルザがそう言う。
「いいって」
ここで、ヴィルザの実力を見せれば、それはもう、驚天動地の事態に陥るだろう。ロレンスも、あるいは、先生だって腰を抜かすに違いない。それそれで、面白い気がするけれど、ここは我慢だ。
ヴィルザの能力を使うと、本来のケネスの実力との差異に、周囲が戸惑うことになるはずだ。トツゼン強くなったり、弱くなったりすると、説明がつかない。
この学園では、ヴィルザに頼らずに、自分のチカラでやっていこうと決めていた。
「ちぇー。つまらん」
と、ヴィルザはふてくされていた。
今は、我慢の時期だ。
さきほどのような机に座ってやるような講義ではないらしく、外に出て行うことになった。練兵場のような場が広がっていた。足元にはちゃんと芝が刈りそろえられている。緑の湖の上にでも立っているような心地だった。
講義は選択性になっており、魔術実践学を選択しているのは、おおよそ100人ほどいるようだった。
「この学校の1年生だって、何人ぐらいいるんだ?」
隣に立っているヨナに尋ねた。
「だいたい150人ぐらいかな。マホ教は種族で差別しないから、中にはエルフもいるし、獣人族もいるよ」
たしかに、長く垂れた耳の者もいたし、トンガリ帽子から獣のような耳をのぞかせている者もいた。
「じゃあ、だいたいはみんな、この講義を選択してるってことか」
「まあ、魔術師になりたいなら、実践は欠かせないしね」
「それもそっか」
なかには、ロレンスもいた。
ロレンスはさっきの一件により、完全にケネスのことを敵とみなしたらしく、あからさまに敵意のこもった目を送りつけてきた。ロレンスの両脇には、ゆで卵を巨大化したようなトリマキがいた。ロレンスの右手にいるのがハンプティ。左手にいるのがダンプティで、双子なのだとヨナが教えてくれた。
「はーい。それじゃあ、魔術実践学を、はじめていきまーす」
と、グラトン先生がノンビリとした語調で切り出した。
「それではみなさん。まずは魔法陣を展開していきましょう。念を込めるんですよ」
とグラトン先生の声はノンビリとしているのに、広々とした校庭に良く響いた。周囲には本校舎やら寮やら城壁があるので、声が反響しているのかもしれない。
「ふぅ」
と、ケネスは緊張して息を吐きだした。
もし自分だけ、魔法が使えなかったらどうしようかと言う不安にかられたのだ。ケネスは最近になってようやく、《灯》と言われる基礎魔法を使えるようになった。他に使える魔法はない。
不安がっていても仕方がない。
他の生徒たちが、魔法陣を展開しはじめているので、ケネスもいつものように魔法陣を展開した。
ヨナは魔法陣を展開することも出来ないようだった。魔法陣らしき青白い光が、ヨナの手の前でモヤッと現われるのだが、形とならずに消えてしまうのだった。そしてそれは、ヨナだけではなかった。
「ケネスはすごいなぁ。もう魔法陣を展開することができるのか」
ヨナは感心したように言った。
「これは、すごいって言えるのか?」
「ボクたちはまだ1年生だから、魔法陣を展開できない生徒もすくなくないよ」
なるほど、と納得した。
魔術師学校とはいえ、ここにいるのは全員1年生だ。つまり、これから魔術を学ぼうと決意して、やって来た生徒の集まりなのだ。使いこなせるなら、わざわざ学校にも来ていない。
(これはオレにとっては、チョウド良いレベルかもしれない)
今まで冒険者の中ではFランクとして、バカにされてきた。しかし、冒険者は実戦のなかで鍛えられてきた猛者の集まりだ。魔術師学校のなかでは、もしかするとオレも月並みレベルではあるのかもしれない――とケネスは期待した。ヴィルザは至極つまらなさそうに宙に漂っているが、この学校に来たのは間違いのなかった選択だったと思った。
「いいですか。来週までに魔法陣を完璧に作り、基礎魔法である《発火》を扱えるようになることを目標としますよ」
1年生はまだ誰も、魔法を発現するところまでは出来ないようだった。《灯》を扱えるケネスも、この中では、それなりに優秀な部類ということだ。もっとも、見せびらかそうとは思わなかったが。
しかし――。
1人だけズバ抜けて優秀な生徒がいた。
それが、ロレンスだ。
「1週間かけて《発火》かよ。レベル低すぎるぜ先生。オレはもう《火球》を扱えるようになったぜ」
ロレンスはそう吠えると、ホントウに《火球》を放ってみせた。人の顔ほどもある大きさの火の球が放たれて、校庭に焦げ跡をつくった。
おおっ……と生徒たちが感嘆の声をあげていた。
しかしケネスは、声をあげる気にはならなかった。意地を張っているわけではない。その程度で威張られても、なんとも思わないのだ。王国軍が帝都を襲撃したさいには、もっとスゴイ魔法が飛び交っていた。
「みなさんも、ロレンスくんを見習って、魔術に磨きをかけるように」
と、グラトン先生は燃えた校庭の芝を、魔法でもとに戻していた。
「どれ、ケネスも一発かましてやるか? 私の魔法を見せてやれば、度肝を抜かしよるぞ」
ヴィルザがそう言う。
「いいって」
ここで、ヴィルザの実力を見せれば、それはもう、驚天動地の事態に陥るだろう。ロレンスも、あるいは、先生だって腰を抜かすに違いない。それそれで、面白い気がするけれど、ここは我慢だ。
ヴィルザの能力を使うと、本来のケネスの実力との差異に、周囲が戸惑うことになるはずだ。トツゼン強くなったり、弱くなったりすると、説明がつかない。
この学園では、ヴィルザに頼らずに、自分のチカラでやっていこうと決めていた。
「ちぇー。つまらん」
と、ヴィルザはふてくされていた。
今は、我慢の時期だ。
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