《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第2-6話「魔術学院へ」
「待っておったぞ」
城がそびえ建っていた。6つの月下にて、無数の石の塔が建っている。その様は、無数のランスが天に向けられているかのようだった。
その城を背にひとりの老人が立っていた。アド・ブルンダと名乗った老人だった。白銀の髪を真ん中分けにして、口髭とアゴヒゲをキレイに刈りそろえている。メガネをかけてあり、その奥には聡明そうな、見ようによっては狡猾そうな瞳があった。もうかなりの御高齢だとはわかるが、その老いをマッタク感じさせない威厳があった。
「オレのことを、待ってたんですか」
「うむ」
「でも、いつ来るかわからないのに」
「すぐに来るという予感があった。魔法の才を感じた。君はこのハーディアル魔術学院で学ぶべき人材だ。君が来なければ、この世が間違えているとさえ思った」
そこまで言われると、照れ臭い。
照れ臭いのだが、それは感情の空振りでしかなかった。わかっているのだ。このブルンダという老人を心酔させている魔法は、ケネスの魔法ではない。背後にいるヴィルザの魔法なのだ。
みんな、魔神の魔法に惚れるのだ。
そこにケネスはいない。
急な暗雲がたちこめて空を覆った。ケネスの立っているところだけ曇った。月光はブルンダを照らし、ケネスの背後にいるヴィルザを照らしていた。
「オレ、魔法を学びたいです。強く、なりたいです」
そうつぶやいた。
切実なつぶやきだった。
目の前にいるブルンダに言ったわけでもなく、ヴィルザに言ったわけでもない。自分自身へのつぶやきだった。
突風のようにミジメな過去が、脳裏に去来した。Fランク冒険者だとバカにされていた。他の冒険者たちが前に進んで行く背中を見ていることしかできなかった。ゴブリンにさえ勝てなかった。冒険者として上京したのに、結局、冒険者らしいことはなにひとつできなかった。実力が、なかったからだ。
暗雲の隙間から、朧月が一縷の光をケネスの頭上に落とした。その光は弱弱しいものだったが、それでもたしかにケネスを照らしていた。
「君は充分に強い。あとは学問をおさめて、その魔法をさらなる高みへ昇華させればよいだけだ」
「はい」
「ついて来なさい。寮がある。案内しよう」
ブルンダはそう言うと、学校の中に入っていった。寮があるのは、うれしい誤算だった。宿で部屋をとる必要もないわけだ。ブルンダの後ろからついて行くケネスの隣に、ヴィルザが並んだ。
「案ずることはない。私がついておる」
「……」
前にブルンダがいる。変にセンサクされたくなかったので、返事をすることはできなかった。
ヴィルザはそれ以上話しかけては来なかった。
城がそびえ建っていた。6つの月下にて、無数の石の塔が建っている。その様は、無数のランスが天に向けられているかのようだった。
その城を背にひとりの老人が立っていた。アド・ブルンダと名乗った老人だった。白銀の髪を真ん中分けにして、口髭とアゴヒゲをキレイに刈りそろえている。メガネをかけてあり、その奥には聡明そうな、見ようによっては狡猾そうな瞳があった。もうかなりの御高齢だとはわかるが、その老いをマッタク感じさせない威厳があった。
「オレのことを、待ってたんですか」
「うむ」
「でも、いつ来るかわからないのに」
「すぐに来るという予感があった。魔法の才を感じた。君はこのハーディアル魔術学院で学ぶべき人材だ。君が来なければ、この世が間違えているとさえ思った」
そこまで言われると、照れ臭い。
照れ臭いのだが、それは感情の空振りでしかなかった。わかっているのだ。このブルンダという老人を心酔させている魔法は、ケネスの魔法ではない。背後にいるヴィルザの魔法なのだ。
みんな、魔神の魔法に惚れるのだ。
そこにケネスはいない。
急な暗雲がたちこめて空を覆った。ケネスの立っているところだけ曇った。月光はブルンダを照らし、ケネスの背後にいるヴィルザを照らしていた。
「オレ、魔法を学びたいです。強く、なりたいです」
そうつぶやいた。
切実なつぶやきだった。
目の前にいるブルンダに言ったわけでもなく、ヴィルザに言ったわけでもない。自分自身へのつぶやきだった。
突風のようにミジメな過去が、脳裏に去来した。Fランク冒険者だとバカにされていた。他の冒険者たちが前に進んで行く背中を見ていることしかできなかった。ゴブリンにさえ勝てなかった。冒険者として上京したのに、結局、冒険者らしいことはなにひとつできなかった。実力が、なかったからだ。
暗雲の隙間から、朧月が一縷の光をケネスの頭上に落とした。その光は弱弱しいものだったが、それでもたしかにケネスを照らしていた。
「君は充分に強い。あとは学問をおさめて、その魔法をさらなる高みへ昇華させればよいだけだ」
「はい」
「ついて来なさい。寮がある。案内しよう」
ブルンダはそう言うと、学校の中に入っていった。寮があるのは、うれしい誤算だった。宿で部屋をとる必要もないわけだ。ブルンダの後ろからついて行くケネスの隣に、ヴィルザが並んだ。
「案ずることはない。私がついておる」
「……」
前にブルンダがいる。変にセンサクされたくなかったので、返事をすることはできなかった。
ヴィルザはそれ以上話しかけては来なかった。
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