《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第40話「ポーションの使い道」
ゲヘナを殺したことで、瘴気は消えた。しかし、それで事態が良好へと向かったわけではない。
「うわぁぁぁ」
「キャァァッ」
帝都は苦痛悶絶のルツボと化した。あちこちから悲鳴が聞こえる。ケネスのすぐ近くにいた親子も、苦痛にもだえていた。脂汗を流しているからよほど辛いのだろう。
「どうかしたんですか?」
「お、お腹が痛い……」
子供のほうがそう言ってカラダを丸めている。ケネスは子供の着ていたブリオーをまくりあげて、お腹の様子を確認した。なんということか。そこには不気味な六芒星が、黒いアザのように浮き出ていたのだった。
「これは?」
ケネスはヴィルザに問うた。
ヴィルザは子供のお腹をのぞきこみながら応じた。
「おそらくだが、あのゲヘナとかいうコゾウの最後っ屁であろうな。呪術的な何かであろう」
「じゃあ、ホントウに殺したらマズかったんじゃ……」
後悔してももう遅い。
鉄の槍で貫かれたゲヘナは、背中にポッカリと大穴を開けて、倒れ伏している。
「殺さなくとも、いずれはこうなっておったであろう」
「どうすれば良いんだ?」
「呪術者が死んでも発動しているということは、おそらくこの世界のどこかに呪痕が存在してあるはずだ。ほれ、この私が永遠に封印されているのと同じようにな。以前にも、この話はしたっけな」
ケネスの焦燥とはウラハラに、ヴィルザは平然としている。ヴィルザからしてみれば、人が何人死のうが、気にならないのかもしれない。
「まさか、それを探せっていうのか?」
帝都の人たちが悶絶しているのに、この世界のどこかにある呪痕を探している暇なんて、ありはしない。
「まぁ、呪いを解く薬とかあるなら別だがな」
そんな話をしている間に、子供のお腹のアザはますます濃厚になっている。しかも、その腹が妙にうごめいている。
「な、なんだ?」
腹の内側からなにか――。
キシャァァァ。
腹を食い破って、スライムのようなものが出てきた。ケネスはあわてて飛び退いた。
「ほぉ。これは珍しい呪術であるなぁ。時間が経てば、人間の腹から人食いスライムの子供が羽化するらしいぞ」
ヴィルザは興味深そうに見ているが、ノンキに構えている場合ではない。
「薬だ」
「ん?」
「たしか、無効化のポーションを注文していたはずだ。それを使えば、帝都の人たちを救えるんじゃないか?」
はじめてヴィルザの顔に、焦りが見られた。
「待て待て待て。それは困る。そのポーションは私が使う予定だったではないか!」
ヴィルザはそのつもりだったのだろう。
ケネスは、そのポーションを自分に使って、ヴィルザのことを見えないようにしようと考えていたのだが、今はもうそのつもりはない。ヴィルザには助けられているし、少々さびしがりなところもある。魔神のチカラは怖いけれど、ケネスが魔法陣を出さなければ良いだけのことだ。
「我慢してくれよ。人助けだと思って」
「厭だ。人が何人死のうが私には関係ない。私は無効化のポーションのために、この帝都に戻ってきたんじゃないか」
ご機嫌斜めのようだ。
「でも、神様がほどこした呪術なんだろう。前にも言ったけど、キノコでつくったポーションなんかで治せるのか?」
「やってみる価値はあるだろう」
「呪痕だっけ? それを探し出して壊せば良いんだろ。将来的にはオレがそれを見つけて、壊してやるから、今は我慢してくれよ」
《可視化》が使えるケネスには、可能であるはずだ。
「ホントウであろうな?」
「……たぶん」
ヴィルザを復活させたくはない――というのがケネスの本音だ。世界を蹂躙した魔神を復活させたいなんて、逆に誰が思うのか。
「あーッ。ウソだな。ウソであろう。私は、その無効化のポーションを使いたいのだ!」
ただの、駄々っ子である。
数千年生きているとは思えない。
「そんなワガママ言うなら、無効化のポーション、オレが飲むぞ」
「へ?」
「もしもオレが飲んだら、オレはスキルを失うことになる。《可視化》がなくなれば、もうヴィルザのことは見えなくなるわけだろ」
急にヴィルザの表情が歪んだ。
ケネスの着ているブリオーの顔をうずめてくると、そのまま動かなくなった。
「お、おい。どうした?」
ヴィルザが顔を離したときには、鼻水と涙でぐっしょりと濡れていた。
「この私をまた1人にするつもりか。おそろしいことを言う。お前は悪魔か」
「悪魔はお前だ」
「ぐぅ」
と、またケネスの服に顔を伏せてしまった。
「将来的には呪痕とやらを壊してやるから、無効化のポーションは諦めてくれ。だいたい、キノコから作れるんだから、また作れるかもしれないだろ」
「……わかった」
妥協してくれたようだ。
しかし、数千年の孤独というのは、並大抵の寂しさではないのだろう。最強の魔神ヴィルザハードをこんなに子供っぽくしてしまうのだから。
「そうと決まれば、すぐにマスクに連絡をとろう。無効化のポーションが今どこにあるのか、聞きださなくちゃいけない」
「仕方がない。よかろう」
ヴィルザはしぶしぶうなずいた。
そんなヴィルザが少しだけ、愛おしく感ぜられた。
「うわぁぁぁ」
「キャァァッ」
帝都は苦痛悶絶のルツボと化した。あちこちから悲鳴が聞こえる。ケネスのすぐ近くにいた親子も、苦痛にもだえていた。脂汗を流しているからよほど辛いのだろう。
「どうかしたんですか?」
「お、お腹が痛い……」
子供のほうがそう言ってカラダを丸めている。ケネスは子供の着ていたブリオーをまくりあげて、お腹の様子を確認した。なんということか。そこには不気味な六芒星が、黒いアザのように浮き出ていたのだった。
「これは?」
ケネスはヴィルザに問うた。
ヴィルザは子供のお腹をのぞきこみながら応じた。
「おそらくだが、あのゲヘナとかいうコゾウの最後っ屁であろうな。呪術的な何かであろう」
「じゃあ、ホントウに殺したらマズかったんじゃ……」
後悔してももう遅い。
鉄の槍で貫かれたゲヘナは、背中にポッカリと大穴を開けて、倒れ伏している。
「殺さなくとも、いずれはこうなっておったであろう」
「どうすれば良いんだ?」
「呪術者が死んでも発動しているということは、おそらくこの世界のどこかに呪痕が存在してあるはずだ。ほれ、この私が永遠に封印されているのと同じようにな。以前にも、この話はしたっけな」
ケネスの焦燥とはウラハラに、ヴィルザは平然としている。ヴィルザからしてみれば、人が何人死のうが、気にならないのかもしれない。
「まさか、それを探せっていうのか?」
帝都の人たちが悶絶しているのに、この世界のどこかにある呪痕を探している暇なんて、ありはしない。
「まぁ、呪いを解く薬とかあるなら別だがな」
そんな話をしている間に、子供のお腹のアザはますます濃厚になっている。しかも、その腹が妙にうごめいている。
「な、なんだ?」
腹の内側からなにか――。
キシャァァァ。
腹を食い破って、スライムのようなものが出てきた。ケネスはあわてて飛び退いた。
「ほぉ。これは珍しい呪術であるなぁ。時間が経てば、人間の腹から人食いスライムの子供が羽化するらしいぞ」
ヴィルザは興味深そうに見ているが、ノンキに構えている場合ではない。
「薬だ」
「ん?」
「たしか、無効化のポーションを注文していたはずだ。それを使えば、帝都の人たちを救えるんじゃないか?」
はじめてヴィルザの顔に、焦りが見られた。
「待て待て待て。それは困る。そのポーションは私が使う予定だったではないか!」
ヴィルザはそのつもりだったのだろう。
ケネスは、そのポーションを自分に使って、ヴィルザのことを見えないようにしようと考えていたのだが、今はもうそのつもりはない。ヴィルザには助けられているし、少々さびしがりなところもある。魔神のチカラは怖いけれど、ケネスが魔法陣を出さなければ良いだけのことだ。
「我慢してくれよ。人助けだと思って」
「厭だ。人が何人死のうが私には関係ない。私は無効化のポーションのために、この帝都に戻ってきたんじゃないか」
ご機嫌斜めのようだ。
「でも、神様がほどこした呪術なんだろう。前にも言ったけど、キノコでつくったポーションなんかで治せるのか?」
「やってみる価値はあるだろう」
「呪痕だっけ? それを探し出して壊せば良いんだろ。将来的にはオレがそれを見つけて、壊してやるから、今は我慢してくれよ」
《可視化》が使えるケネスには、可能であるはずだ。
「ホントウであろうな?」
「……たぶん」
ヴィルザを復活させたくはない――というのがケネスの本音だ。世界を蹂躙した魔神を復活させたいなんて、逆に誰が思うのか。
「あーッ。ウソだな。ウソであろう。私は、その無効化のポーションを使いたいのだ!」
ただの、駄々っ子である。
数千年生きているとは思えない。
「そんなワガママ言うなら、無効化のポーション、オレが飲むぞ」
「へ?」
「もしもオレが飲んだら、オレはスキルを失うことになる。《可視化》がなくなれば、もうヴィルザのことは見えなくなるわけだろ」
急にヴィルザの表情が歪んだ。
ケネスの着ているブリオーの顔をうずめてくると、そのまま動かなくなった。
「お、おい。どうした?」
ヴィルザが顔を離したときには、鼻水と涙でぐっしょりと濡れていた。
「この私をまた1人にするつもりか。おそろしいことを言う。お前は悪魔か」
「悪魔はお前だ」
「ぐぅ」
と、またケネスの服に顔を伏せてしまった。
「将来的には呪痕とやらを壊してやるから、無効化のポーションは諦めてくれ。だいたい、キノコから作れるんだから、また作れるかもしれないだろ」
「……わかった」
妥協してくれたようだ。
しかし、数千年の孤独というのは、並大抵の寂しさではないのだろう。最強の魔神ヴィルザハードをこんなに子供っぽくしてしまうのだから。
「そうと決まれば、すぐにマスクに連絡をとろう。無効化のポーションが今どこにあるのか、聞きださなくちゃいけない」
「仕方がない。よかろう」
ヴィルザはしぶしぶうなずいた。
そんなヴィルザが少しだけ、愛おしく感ぜられた。
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