《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第30話「危機!」

 ケネスは依然として、檻の中に捕えられていた。



 殺されなかっただけでも、ありがたい。ケネスに人質の価値などない。さっさと殺せば良いのだが、「事を起こす前に、感知されると困るでな。帝都には血の伯爵なる人物がいるらしいしの」と、ゲヘナが言っていた。そのゲヘナは王国騎士と魔術師を引き連れて、洞窟を出て行った。見張りが2人残されている。



 洞窟の中は暗くなっていた。



 魔術師たちがいたときは、魔法でつくられた火の球が光源として漂っていた。今は、それがない。ロウソクが一本。ケネスの手前で灯されているだけだ。小さな灯は、風もないのに、不気味にたゆたっている。


(なんとか脱出できないものか)



 殺されなかったとは言っても、いつまでも身の保障がされているとは限らない。鉄格子を前後に揺すってみたり、左右に広げようとしてみる。ビクともしない。ケネスの筋力でどうにかなるような檻であるはずがない。



「よし」
 と、ケネスを見張っていた魔術師の1人が言った。



 何が、よし、なのか。
 不安で仕方がない。



 魔術師がケネスの檻を覗きこんで、残酷な笑みを浮かべた。



「どうやら帝都への奇襲には成功したらしい。これで、お前を生かしておく意味もなくなった」



「え……でも、血の伯爵が」



「血の伯爵は、血の臭いをかぎわけるそうだから、お前を殺せば感知される恐れがあったのだ。だから殺さなかった。しかし、奇襲が成功すれば、感知されても問題はない」



「い、いいんですか。オレを殺したら大変なことになりますよ」



 もちろん、デマカセだ。
 ウソでも何でも良いから1秒でも時間を稼ぎたかった。ヴィルザが見つけてくれさえすれば、何とかなりそうだ。はじめは、ヴィルザを危険だとみなしていた。なのに、結局頼っている。



 神に祈るとか、神に頼るという言葉がある。まさしくその通りだ。ヴィルザは魔神という神さまなのだから。



「ウソを吐いてもムダだ。さっさと死ね」



 魔術師は手に持っていた槍を、鉄格子の隙間から突き入れてきた。



「ひっ」



 槍は頬をかすった。
 熱い痛みがよぎった。



「ちッ。逃げるんじゃねェ」



 檻の中は狭い。顔を動かすのがセイイッパイだ。今度は避けられない。穂先が眼前に迫ってくる。ダメだ! 恐怖のあまり目を閉ざした。最後の抵抗として、せめて魔法陣を発した。

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