《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第29話「孤児院」
孤児院は貧乏だ。
戦時中だからというのが、その最たる理由だろう。資金は基本的に軍人にまわされる。孤児院のような弱者に回る分は少ないのだ。だからこそ『孤独の放浪者』は、冒険者として小銭稼ぎをしているのだ。
パン屋で、パンを買った。
町や村で製粉された小麦粉が、帝都内に運ばれてくる。それを、焼きあげてパンにするという仕組みだ。焼いてすぐ食べないと、人が食べられないほど固くなってしまう。実際、酒場などでは、硬くなったパンを皿として使うことが多い。
帝都の出口である城門棟の付近に、石造りの塀がある。城壁ほどの大きさはない、高さ1メートルほどの塀だ。その塀の向こうが孤児院になっている。
「おにーちゃん」
「おねーちゃん」
と、まだ年端もいかぬ子供たちが、テイラたちの姿を認めると無邪気に駆け寄ってくる。子供たちはみんな貧相なブリオーを着ており、ガリガリに痩せている。それはかつてのテイラたちの姿でもあった。
「よしよし。良い子にしてたか」
と、ガルが子供の1人と抱き上げた。子供たちが「ボクも」「私も」と抱き上げられることを求めてくる。
みんな愛に飢えているのかもしれない。でも、ちゃんと親の代わりの愛情を供給してくれる者が、孤児院にはいる。
「みなさん、いつもありがとうございます」
そう言って頭を下げたのは、孤児院のシスターだ。シスター・マリアと言われている。30手前になる女性だ。が、ぜんぜん年齢を感じさせない。むしろ歳を経るごとに、若々しくなっている。テイラの憧れであり、愛しい女性だった。かつてはテイラの親でもあったのだ。
いや。
(今でも、私たちのお母さんか)
マリアは、ガル、マスク、テイラの3人を順番に抱きしめていく。ゆたかな乳房は、充分な包容力があった。
「これ、多くはないですけど」
と、ガルがパンを詰めた布袋を広げた。
マリアは申し訳なさそうに頭を下げる。もう何度もパンやお金を持ってきている。けれど、マリアはいつだって恐縮の態を忘れない。
「オレたちが好きでやっていることです。気にしないでくださいよぉ」
マスクが言う。
「そうですか。では、セッカク持ってきていただいたのです。さっそくみんなで頂きましょう」
子供たちが、パンにわーっと群がった。
その時。
ゴーンッ。
と、帝都全体に響くような振動が走った。
「な、なんだ?」
ガルが、テイラとマスクをかばうように前に出る。そしてさらにその全員を守るかのように、マリアが前に立った。
帝都の城壁からは、ものものしい砂塵があがっていた。帝都の城壁には大穴が開き、そこからは紅色の甲冑を着た騎士たちが入ってきた。
「あれは、王国軍の甲冑じゃないか!」
どうしてこんなところに王国軍がいるのか。
これは敵襲だ。
冒険者は基本的に戦争には加勢しない。冒険者という立場は、あくまで冒険者組合に属しているからだ。そして、冒険者組合は王国帝国どちらにも属していない。冒険者個人の判断で、戦争に加わるのは自由だが、あくまで軍属ではない。
(どうする?)
テイラは考える。
今は大切なポーションを持っている。これはケネスさんに渡さなければならない。すぐにここから逃げるべきだろう。
でも、孤児院のみんなを放っては逃げれない。
「ここはオレたちに任せろ。テイラは逃げろ」
ガルがそう指示してきた。
「だけど……」
「その無効化のポーションは、ケネスさんに渡さなくてはいけないものだ。子供はオレたちで何とかする」
王国騎士がどれほどの強さなのか、まるでわからない。でも、ガルとマスクの2人なら、子供たちを守るぐらいは出来るかもしれない。
テイラはそう思って、この場から離脱しようとした。
「うっ……」
逃げようと思ったのだが、何故だか足が動かない。つまずいてしまった。ガルやマスクもその場に倒れ伏した。起きあがろうにもカラダがしびれてしまう。亡くさないように抱いていた無効化のポーションが、転がって行ってしまった。
「どうなっているんですか?」
「わからん。とにかく、ケネスさんに連絡を」
ガルがマスクにそう言った。
マスクは魔法陣を展開した。《通話》を行っているのだろう。ポーションを届けるために、連絡をするのではない。なんだかよくわからないが、帝都が襲撃されている。この非常事態を打破できる人間として、テイラの脳裏に浮かんだのがケネスだったのだ。ガルやマスクも同じ気持だろう。
つまりこの連絡は、救援要請である。
戦時中だからというのが、その最たる理由だろう。資金は基本的に軍人にまわされる。孤児院のような弱者に回る分は少ないのだ。だからこそ『孤独の放浪者』は、冒険者として小銭稼ぎをしているのだ。
パン屋で、パンを買った。
町や村で製粉された小麦粉が、帝都内に運ばれてくる。それを、焼きあげてパンにするという仕組みだ。焼いてすぐ食べないと、人が食べられないほど固くなってしまう。実際、酒場などでは、硬くなったパンを皿として使うことが多い。
帝都の出口である城門棟の付近に、石造りの塀がある。城壁ほどの大きさはない、高さ1メートルほどの塀だ。その塀の向こうが孤児院になっている。
「おにーちゃん」
「おねーちゃん」
と、まだ年端もいかぬ子供たちが、テイラたちの姿を認めると無邪気に駆け寄ってくる。子供たちはみんな貧相なブリオーを着ており、ガリガリに痩せている。それはかつてのテイラたちの姿でもあった。
「よしよし。良い子にしてたか」
と、ガルが子供の1人と抱き上げた。子供たちが「ボクも」「私も」と抱き上げられることを求めてくる。
みんな愛に飢えているのかもしれない。でも、ちゃんと親の代わりの愛情を供給してくれる者が、孤児院にはいる。
「みなさん、いつもありがとうございます」
そう言って頭を下げたのは、孤児院のシスターだ。シスター・マリアと言われている。30手前になる女性だ。が、ぜんぜん年齢を感じさせない。むしろ歳を経るごとに、若々しくなっている。テイラの憧れであり、愛しい女性だった。かつてはテイラの親でもあったのだ。
いや。
(今でも、私たちのお母さんか)
マリアは、ガル、マスク、テイラの3人を順番に抱きしめていく。ゆたかな乳房は、充分な包容力があった。
「これ、多くはないですけど」
と、ガルがパンを詰めた布袋を広げた。
マリアは申し訳なさそうに頭を下げる。もう何度もパンやお金を持ってきている。けれど、マリアはいつだって恐縮の態を忘れない。
「オレたちが好きでやっていることです。気にしないでくださいよぉ」
マスクが言う。
「そうですか。では、セッカク持ってきていただいたのです。さっそくみんなで頂きましょう」
子供たちが、パンにわーっと群がった。
その時。
ゴーンッ。
と、帝都全体に響くような振動が走った。
「な、なんだ?」
ガルが、テイラとマスクをかばうように前に出る。そしてさらにその全員を守るかのように、マリアが前に立った。
帝都の城壁からは、ものものしい砂塵があがっていた。帝都の城壁には大穴が開き、そこからは紅色の甲冑を着た騎士たちが入ってきた。
「あれは、王国軍の甲冑じゃないか!」
どうしてこんなところに王国軍がいるのか。
これは敵襲だ。
冒険者は基本的に戦争には加勢しない。冒険者という立場は、あくまで冒険者組合に属しているからだ。そして、冒険者組合は王国帝国どちらにも属していない。冒険者個人の判断で、戦争に加わるのは自由だが、あくまで軍属ではない。
(どうする?)
テイラは考える。
今は大切なポーションを持っている。これはケネスさんに渡さなければならない。すぐにここから逃げるべきだろう。
でも、孤児院のみんなを放っては逃げれない。
「ここはオレたちに任せろ。テイラは逃げろ」
ガルがそう指示してきた。
「だけど……」
「その無効化のポーションは、ケネスさんに渡さなくてはいけないものだ。子供はオレたちで何とかする」
王国騎士がどれほどの強さなのか、まるでわからない。でも、ガルとマスクの2人なら、子供たちを守るぐらいは出来るかもしれない。
テイラはそう思って、この場から離脱しようとした。
「うっ……」
逃げようと思ったのだが、何故だか足が動かない。つまずいてしまった。ガルやマスクもその場に倒れ伏した。起きあがろうにもカラダがしびれてしまう。亡くさないように抱いていた無効化のポーションが、転がって行ってしまった。
「どうなっているんですか?」
「わからん。とにかく、ケネスさんに連絡を」
ガルがマスクにそう言った。
マスクは魔法陣を展開した。《通話》を行っているのだろう。ポーションを届けるために、連絡をするのではない。なんだかよくわからないが、帝都が襲撃されている。この非常事態を打破できる人間として、テイラの脳裏に浮かんだのがケネスだったのだ。ガルやマスクも同じ気持だろう。
つまりこの連絡は、救援要請である。
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