《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第24話「罠」

 宿屋を出る。



透明化トランスパレント》の2人の背中は、まだ捕えられる距離にあった。ヴィルザはケネスにも《透明化トランスパレント》の魔法をかけてくれた。これで、透明人間を透明人間が追いかけるという構図の出来上がりである。



 ケネスから相手が見えるが、相手からはケネスが見えないはずだ。王国魔術師たちは、町を出て丘陵を歩いて行く。そっちの方向は帝都のほうだ。



「ヤバいなぁ。帝都に近づいちゃってるよ」



 殺人罪で追われている身としては、あまり近づきたくはない。帝都に戻るにつれて、ベルモンド・ゴーランを殺してしまったことが思い出された。陰鬱な気分になる。



「透明になっておるから、気づかれはせんだろう」
「それはそうだけど」



 薬草を摘むためにずっと丘陵を走り回っていただけあって、ケネスは足腰だけは自信がある。走るのが速いわけではない。だが、長距離歩くぐらいなら苦にもならない。



 しばし、丘陵を歩いていると、洞窟が見えてきた。洞窟じたいはそれほど珍しいものではない。モンスターたちの巣穴になっているのだ。冒険者たちが駆除しているが、巣穴は残る。その1つだろう。王国魔術師の2人は洞窟に入って行った。



「入っていったようだが?」
 追いかけるのか、どうするのかという目をヴィルザが向けてくる。



「もう少しだけ、追いかけてみよう」
 ここまでついて来たのに、引き返すのは惜しい気もする。何を企んでいるのかつかんでから、引き返したかった。



 ケネスは今まで、モンスターのなかで最弱の部類に入るゴブリンすら倒せなかった。モンスターの巣穴に入るのは抵抗がある。しかし、すでに冒険者たちが駆除してくれた、空き巣である可能性も大きい。



 そもそも王国魔術師が先に入って行ったのだ。モンスターがいたとしても、彼らが倒してくれるだろう。



 洞窟の入口に近寄る。入口は、そこそこの大きさがある。人が手を広げたぐらいの直径だった。《可視化》。暗闇を見通す。見通すといっても限界がある。これは下着を覗けても、さらにその内側まで見えないのと同じ理屈だ。つまり、熟練度が足りない。半径3メートルほどの視界は確保することが出来た。



 おそるおそる、足を踏み入れる。



「コゾウ」
 と、ヴィルザが話しかけてくる。



「?」
 と、目だけでケネスは応じる。



 ヴィルザはしゃべっても、その声はケネスにしか届かない。だが、ケネスがしゃべればそれは肉声となり、洞窟内に響くことになる。声をおさえても、王国魔術師に聞きつけられる可能性は大きい。



「罠には気をつけろよ。王国魔術師がここに潜んでいるということは、侵入者にたいする罠を張ってる可能性はあるからな」



「ん」
 首をタテに振った。



 それに関しては大丈夫だろうという慢心があった。ケネスには《可視化》がある。罠なんか張られていたら、すぐに見つけられるはずだ。それにヴィルザもいる。チカラに頼りたくないとは言っても、魔神が味方にいると思うと油断してしまうのだった。



 で。
 その慢心ゆえだったのかもしれない。ケネスの足元が薄く発光した。



「あ……」



 そこには、仄青く灯る魔法陣が光っていた。ケネスにも見えなかったのは、ただの見落としである。いくら《可視化》があるとはいえ、はじめから視界に入っていないものまでは、視認できない。



「いかんッ。離れろッ」



 今まで聞いたことのないほど、鬼気迫るヴィルザの声がケネスの声に届いた。しかし、次の瞬間にはケネスの近くから、ヴィルザの姿は消えていた。



 かわりに、ケネスの周囲には大量の青いローブの連中がいた。10人……いや、20人はいる。王国魔術師だ。ケネス自身は鉄檻の中に入れられていた。

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