《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第22話「宿屋のロビー」

「あの小娘。ウザいな。この私のケネスに色目を使っておる」
 ヴィルザがそう言った。



 私のケネスってなんだよ――と思ったが、突っ込むのはやめた。



「テイラさんのことか?」
 ガル。テイラ。マスクの3人組。


『孤独の放浪者』
 冒険者チームだ。



 思い出すと、胸が高揚すると同時に、チクリとした痛みを覚える。ケネスはああいった冒険者たちに憧れていた。仲間がいるというのも、羨ましいことだった。でも、自分には仲間と加わり、みんなでモンスターを倒す実力がなかったのだ。



「ガキの分際で、ケネスに手を出そうとするとは良い度胸だ。今度会ったら、八つ裂きにしてやる」



 可憐な姿をしていながら、物騒なことを言う
 しかし、冗談とも思えない。



「やめてくれよ。そんなことしたら、また罪が重くなるんだから」



「それもそうか」



 無効化のキノコは手に入った。あとは、薬になるのを待つだけだ。とりあえず、これで一段落といったところだ。



 宿屋のロビー。巨木を輪切りにしたようなテーブルとイスが並んでいる。エルフから買い取った木材を、加工したものだろう。部屋全体はあばら家といった感じで、整った宿屋ではない。奥には大広間があり、雑魚寝部屋となっている。



「どうぞ」
 と、メイドが水を出してくれた。



「ありがとうございます」
 と受け取る。



 宿屋といっても、飲食のサービスはやっているようだ。ケネスの他にも、食事をとっている人たちがいる。



 魔術師がいれば水なども自在に出すことが出来る。もちろん、この水も魔法で出現させたものなら、一定時間すると消えてしまう。つまり、「飲んだ気分になる」というだけで、しばらくするとノドが乾く。



 ホントウにノドを潤わせようと思うなら、水売りから買った水を飲む必要がある。水売りから買う水はだいたい有料だ。無料で出してくれるということは、魔法水だろう。



「無効化のキノコが薬になるまでは、捕まるわけにはいかないな」



 この場所にも、帝国騎士の捜索が伸びてくる可能性は充分ある。



「うむ。なんとしても、この私の呪いをとかなくてはな」



 ヴィルザはすっかりその気のようだが、ケネスは別のことを考えている。自分に使って《可視化》を消してしまおうという腹だ。



『孤独の放浪者』たちが、人食いスライムに食われそうになったときは、仕方なくヴィルザのチカラを借りた。ケネスが頼ると、ヴィルザは惜しげもなくチカラを貸してくれる。むしろ、チカラを発現することに、喜びすら感じているようだ。



 今まで誰にも存在を認知されなかったから、魔法だけでも他人から見てもらえるのが嬉しいのかもしれない。



 さりとて。



 容易に、ヴィルザのチカラを借りて良いものでもない。また人を殺すような間違いを起こすかもしれないのだから。



「っていうか、そもそも無効化のキノコなんかで、ホントウに8大神の呪いが解けるものなのか?」


 キノコは、あくまでキノコだ。



 稀少なものとはいえ、効果に限界はあるだろう。すべての魔力や呪術やスキルを打ち消すことが出来るというが、デマや誇張という可能性だってある。



「可能性があるものは、試しておいて損はなかろう」
 と、ヴィルザは言った。

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