《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第21話「孤独の放浪者 通話」

「せめて、風系基礎魔法で《通話》できるように、魔力をつないでもらえませんか?」



 マスクがマスクを外してまで、頼み込んだ。



 マスクの顔はそれほど酷くはないが、ヤケドで爛れている。さすがにその誠意を見せられてケネスも折れたようだ。



 ケネスとマスクは、2人とも魔法陣を展開させた。こうして互いの魔力を流し合う。そうすることで以後、風系基礎魔法を使って通信が可能になる。



「では、まずオレから魔力を流しますね」



 マスクの描いた魔法陣から、靄のようなものが出てくる。これが魔力の素だ。無事にケネスの魔法陣に流れ込んだ。今度はケネスの番だ。ケネスは魔力の素を発生させる前に、「ヴィルザ」という単語を呟いた。その意味はテイラにはわからなかった。呪術か何かかもしれない。



 すると――。
 ゴッと暴風が吹き荒れた。



 物理的な影響はない。酒場のテーブルに置かれていたコップも、微動だにしていない。しかし、荒れ狂う風に叩きつけられたような感覚があった。これがケネスの魔力の素なのだ。



 ベルジュラックにはかつて、竜がいたと言われている。8大神の1人。戦争の神カヌスも竜の姿をしていたと言われている。その竜の翼が生み出す狂風を受けている気分だ。



「す、すみません。上手く制御できないみたいで。いちおう最小限にとどめてるみたいなんですけど」
 と、ケネスは謝った。



 ケネスの今のセリフに小さな違和感があったが、そんなことを気にしている場合ではない。



 最小限におさえて、この魔力!
 信じられない。



「い、いえ。ともかくこれで、以後、風系魔法の通話ができるようになりました。薬が完成しだい、連絡させていただきます」



 マスクはなかば怯えるように言った。



 しかしその声音に、怯えよりも感嘆が強くふくまれているのは、誰が聞いてもあきらかだ。



「はい。じゃあ、オレはこの町の宿屋にいると思うので、もし何かあれば、直接声をかけてくださっても、けっこうです」



「ありがとうございます」



 口裏を合わせていたわけではないが、3人とも同時に頭を下げていた。



 ケネスは酒場を出て、宿屋のほうに戻って言った。テイラはジッとその後ろ姿に魅入られていた。ホントウに上手くチカラを隠している。言い方は悪いかもしれないが、一挙手一投足がザコなのだ。どう見ても強いとは思えない。けれど、ホントウはとんでもなく強い。その事実を知っていることが、少し誇らしい。



「すごい青年だったな。16歳だとか言ってたか」
 ガルが呟いた。



「16歳だと、オレとテイラの中間ですねぇ」
 マスクが言った。



「もしかして、《血の伯爵》に匹敵するぐらいの実力者だったりするんじゃないですか?」



 テイラがマスクにそう尋ねた。



《血の伯爵》
 もともとはテイラたちと同じ、孤児院の子供だった。だが、その類まれなる魔法の才を見出されて、今は帝国12魔術師の1人に入っている。伯爵と冠されているものの、年齢はまだ16歳のはずだ。



 今の魔力の波動をもっとも強く受けたのは、マスクだ。そのマスクはケネスのことをどう考えているのか、知りたかった。



「ははっ。《血の伯爵》ですか。いや。そんなもんじゃないですよぉ。あれは。あの年でこれだけの魔力。まさに神童の一言です」



 マスクのカラダは小刻みに震えていた。
 興奮でたかぶっているのだろう。



「そんなにすごかったのですか?」
 マスクは返答しなかった。
 ガルが茶化すように口をはさんだ。



「テイラ。お付き合いを申し込んでみたらどうだ? 年も近いし、テイラは顔が良いし、もしかしたらオッケーしてくれ……ごふっ」



 殴っておいた。



 ケネスといつでも連絡がとれるマスクのことが、すこし――いや、かなり羨ましかった。テイラは癒術しか使えない。



 これを機会に、魔法のほうも勉強してみようかしら?

「《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く