うちのばあちゃんがダンジョンを攻略しつつ有効に活用しているんだが、一応違法であると伝えた方がいいのだろうか?

慈桜

90話


 東京にて即日踏破を敢行して即帰還と相成った。

 俺としてはアパートの解約なども済ませたかったが、バールさん達は体力の限界っぽかったので、即帰還を選択。

 偽神宝具の回収もしたかったが、全て自衛隊のガードが入っていたので残念の限りである。

「あー、あしかゆい」

 全員後部座席で爆睡してるのだが、隣ではドロリッチがニヤニヤしながらに太ももを見せつけてくる。

 俺は照れたりしない。

 事故る勢いでガン見してる。

 見るだけはタダである。
 見せてやろうとしてくれるなら見なければ嘘である。

「でもさ、山神陣営なのになんで白黒にちょっかいかけてるんだい?」

「よくわからん。そのうち攻めてくるなら育つ前に潰しておこうってだけだ」

「無理だよ。どっちみちオセロでカドとるみたいな立ち位置なんだしさ」

「そんな立ち位置なら尚更カド独占しときたいけどな。てか、色々教えてくれ。何がどうなってるんだ?」

 帰りの道中、ドロリッチは本当に色々な事を教えてくれた。

 山神が廃れ行く山地区を憂いて界門を作った話、バレてしまったついでに普通に罰するだけではつまらないからと白と黒に分かれて土地取りゲームをしようと決まった事、山神陣営は白と黒で世界を二分した時にパイを奪い合う形のボーナスゲーム的な立ち位置であることなど、知りたかったが聞きたくなかった内容を全て教えてくれた。

「だからどれだけ頑張っても結局飲まれるよ」 

「数は力か……どうにかならんもんかねぇ」

 理由はどうあれ、ただヤられるだけを座して待つなんて事はしたくない。

 山神陣営は15年間の猶予のおかげで、ややこしい取り決めはあるものの一枚岩と言っても過言ではない結束がある。

 だが、やるなら今しかないとしても他の年寄連中は高い確率で動かないだろう。

 平山だけで全てを滅ぼして丸く収めるなんてのは無理だとしても、白黒陣営の神々が力を得る前に可能な限り潰しておきたいって想いはより一層強まった。

 ……できるだけ最短コースでトキヤクラスの人員を多数育てるしかないな。

 土台無理な話であるが、やらねばならん。

 でもネトゲじゃ疎まれるが養殖的な事をすれば能力の底上げはできるだろ。

 トキヤやキョウコちゃんクラスの人員がいれば、今回の俺とテツミチのように何もせずとも神層到達はできる。

 三兄が単独で動いてくれたらありがたいが無い物ねだりをしても意味がないので、キョウコちゃん三兄セットとトキヤがががって、そうか……トキヤはしばらくアタック禁止なのか。

 ままならん。

「何考えたって無駄だよ。山神陣営は数が揃ってるって言ったって結局は地方の土着の神の集まりでしょ? 世界各国の神々が結集して駒を送り込んだら一巻の終わりって考えなくてもわかるくないか?」

「うっせ太もも。よく喋る太ももだな」

「太ももじゃねーわ! でもいいだろ? メスドワーフ見た瞬間に決めたんだよね。これっきゃないって」

「……?どゆ意味? 見た目とか自分で決めれんの?」

「そりゃ決めれるだろ。神なんだから」

 神ね、便利な言葉だこと。
 適当すぎる返事なのに説得力がある不思議。

「お前ら人間はアニメとか作るだろ?」

「まぁ、一部の人間は」

「そのアニメのキャラクターは自分が創造物であると知らないわけだ」

「たまにメタい奴もいるけどな」

「茶化すなての。つまりそういう事だよ。単純に二次元からして三次元のお前らが創造主であるように、神は何次元も高みにある高次元生命体だ。形なんて好き好みで決められて当然だと思わないかい?」

 俺の疑問に答えてくれたようだ。
 太ももはラノベ等の定番の如く、心を読んだりできるのだろうか?

 ぺろぺろ。

 ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろ。

「ええいやめろ鬱陶しい! 界門の中ならまだしも、ここでは心なんて読めないからな? ただ! お前は顔にですぎる。れろれろするな」

「残念。ぺろぺろでした」

「似たような物だろ!」

「全然違う。ズンドコベロンチョって知ってる?」

「なんじゃそれ。えっちい奴か?」

「へぇ……知らないんだぁ。ズンドコベロンチョ知らないかぁ、そうかぁ」

「ぐぬぬ……鬱陶しい! 早く教えておくれよ!」

 ぐぬぬ、頂きました。
 神すらグヌらせるズンドコベロンチョ恐るべし。
 俺もズンドコベロンチョが何かは知らない。

「てか、さっきの話に戻るけど、つまりお前らが人間を作ったって事?」

「似て異なる。言ってもわからんから気にするな」

「ぐぬぬ、気になる」

「ふんっ、これでおあいこだな」

 理解できなくとも普通に教えて欲しいけど……ズンドコベロンチョが何かと問われても答えられないしな。

 つまりドロリッチもよく理解してない? そんなわけないか。

「せいぜい抗えよ。神器体を用意して手伝ってやってもいいしな」

「じんぎたい?」

「お前は本当に何も知らないんだな。まぁ、知っていても意味はないか」

 よくわからないままにドロリッチを連れたまま平山へ到着すると、ドロリッチは気持ちよさそうに平山の空気を目一杯吸い込みながら伸びをした。

「もし妹がいるとしたら、どんな名前がいいと思う?」

「いきなり言われてもなぁ」

「じゃあ娘に名前をつけるとしたら?」

「それも直ぐにきめられないだろ」

 ドロリッチが意味深な質問をした後に軽く頷いて笑った。
 意味がわからんが、俺も笑顔を返した。

「じゃあこの辺にしよかな」

「おう、好きなとこにやったれ」

 彼女はそれ以上の質問はせず、淡々と界門の鍵たる斧をばあちゃん家の左隣にぶっ刺すと見慣れたカマクラ的な界門の入り口と共に姿を消した。

 意外と呆気ないものである。

「お兄ちゃん、みんな起こさなあかんよっ」

「ごめん莉子りこ。起こしてきて」

「んもー、しゃーないなぁ」

 #妹のいる生活

 素晴らしいな。
 莉子はいつ見ても可愛い。
 やっぱり歳の離れた妹に懐かれてるってのはいい。
 兄としての自信が漲ってくるしな。

 でも、お兄ちゃんは心配です。

 莉子が俺を追いかけて平山に来てくれたのはいいけど、19歳の小娘が真冬なのに色黒ってのはどうかと思う。

 一昔前にオシャレは我慢とは言ってたけど、もっとあったかい格好をした方がいいと思うんだ。
 後、俺の真似して虫ブリーチで白髪にしてるのも辞めてほしい。

 妹がコギャルってのはどうにも刺さるものがある。
 簡単にやれそうだと悪い虫が寄ってこないか心底不安である。

 しかし何故俺は最愛の妹の太ももを舐めるように見てしまうのだろう。

 近親相姦ものはあまり好きではないし興味の欠片も無いのに、莉子の太ももはやたらと見てしまう。

 …………俺って妹いたっけか?

 いや、待て待て、何を言ってる。

 確かに俺が小学生の頃に莉子が生まれて、何をするにも俺にくっついてくる妹がいた。

 自転車が乗れるように練習にも付き合ったし、ピアノのコンクールにも何度も行った。

 俺が達也とスケボーにハマってた時も、莉子は小さいながらにキックボードで必死に追いかけて来てた。

 そう、確かに莉子は存在した。

 なんだろう、涙が出てきた。

 ずっと大切な存在だったのに、ずっと忘れてたような変な感覚だ。

 俺が一念発起して東京に出た時、まだ小学生だった莉子が泣きながらについて行くと駄々をこねた日が懐かしい。

 お兄ちゃん離れができなかった莉子は高校を卒業してから親元を離れて上京して俺を探してたんだ。

 そうだ、大宴祭で達也が連れて来て久々に再開した。

 なんで自分に妹がいたかなんて疑いを持ったんだ。

 莉子は確かに存在してるのに。

「なに泣いてんの? お風呂沸かしたあるから、みなで入っておいでよ」

「莉子、その黒ギャルみたいなのやめろ。女の子は白い方が可愛いぞ」

「嫌やし。日サロ行っとー方が肌綺麗に見えるやん」

「それが将来シミになったらどうする」

「オカンみたいな事言わんでええねん。ほら、さっさお風呂入っておいで」

 妹が風呂を沸かして帰りを待ってくれてるとか幸せでしかない。

「フゴッ」

 早速荒川初期メンと共に風呂に入ろうとゾロゾロ向かうと、キョウコちゃんが俺の鳩尾に軽く裏拳を入れてニヤケながらに見上げてくる。

「リコはザコいし、わしが鍛えてやるからなー」

「あぁ、頼む。でも鳩尾やめて、苦しい」

「あはははー」

 何も今じゃなくていいのに、どうにも掴みどころがないイトコ様である。

コメント

  • 慈桜

    飲み会拉致られて二日酔いでぶっ倒れてました。
    更新遅れてごめんね

    6
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品