うちのばあちゃんがダンジョンを攻略しつつ有効に活用しているんだが、一応違法であると伝えた方がいいのだろうか?

慈桜

89話


 感動した。

 十七層チーター、十八層ライオン、十九層ゴリラと来て、二十層に重武装の銀髪キョウコちゃんが復活した。

 カササギさんたる謎カラスが合体しまくった巨大な翼を装着して、両脚にチーター、ゴリラの腕、そして頭部からボディを守るライオンアーマー。

 まさに聖騎士キョウコたんである。

 フロアボス扱いなのか単独での登場であるが、これがまた強い。

 高速で飛び回るだけでも厄介だが、走っても馬鹿っ速であるし、コアの部分はスキル対策がしっかりされているだけでなく、腕力もゴリラバリでバチバチの肉弾戦を仕掛けてくる。

 三兄は役立たずで、俺とテツミチは満を持して参戦ってノリで立ち上がったが、感動も束の間。

「おいー、なんでわしなんだよー、おらー」

 現在ダラリと脱力した銀髪キョウコちゃんが本物のキョウコちゃんに首を掴まれてボコボコに殴られています。

 相手は金属だってのに、素手の拳を叩きこむ度に、ギョエン、バゴキとえげつない音を立てながらに顔面をグチャグチャにされています。

「あのアーマー良さそうだな」

「鶏狩りとかに便利かもしれやせんね」

 俺とテツミチは一服タイムである。
 前の姫ロリ界門の山羊煙草がうますぎて困る。
 三十八層のうまさたるや筆舌にし難い。

 ばあちゃん家に大量にストックしてるが、これが無くなった時の事を考えると恐ろしい。

 ヤニカス卒業かぁ……できたらいいけどセブンスターに戻るんだろうな。

 合金合体してた銀髪キョウコちゃんの生命活動が停止すると後方の門が開く。

 すわ神層かと意気込んで門をくぐり抜けては階段を降りて行くと、城下の鍛冶場街に出る。

 中世ヨーロッパ風の石畳の街並みの中で煙突があちこちに立っていてトンテンカントンテンカンと槌を振るう音が聞こえてくる。

「これはドワーフの予感!」

 逸る気持ちを抑えられずに工房を覗き込むと、普通にゴーレム的な鎧さんがハンマーを振るっている光景が飛び込んでくる。

 ガッカリである。

 でも岩の定番ゴーレムではなく、発光ダイオード的な赤紫の人工的な光を放つ大きな全身鎧の姿であるのはカッコいい。

 ファンタジーの定番たるドワーフを見られなかったのは残念だが、黙々と鍛冶仕事をするゴーレムさんも胸熱だ。

 白と金の塗装が剥がれて鈍色の素体が見えていたり、背中が苔むしているところも熱い。

 連れて帰りたい。

「敵意はないようで御座いやすねぇ」

「命令された仕事をこなしてるんだろな。儚く美しい、いや、素晴らしい」

「興奮してるところアレでやすが納品に行くようで御座いやす」

 日緋色の大剣を完成させたゴーレムは工場から出て城の門に行って納品しては戻って行く。

 流石にここでは戦闘になるかと思ったが、門で剣を受け取ったゴーレムは俺たちを見向きもせずに城へ歩き出した。

 じゃあ俺たちもと城門を潜ると、階層が変わった感覚に襲われる。

 またもや城下街もとい鍛冶屋街であるが、次はゴーレムさんが盾を作っている。
 頑張れ頑張れゴーレムさん、大量生産だ!

 応援しながらにも門をくぐるとまたもや鍛冶場街の入り口に戻る。
 当然のようにゴーレムさんは鎧を作っている。

 二十四層ではアクセサリーを作っている。
 手先が器用なのも意外性があってかわいいが、二十五層に至ってはチマチマと服を作っている。

 これは暫く生産ラッシュではないかと城門を潜って二十六層になると普通に城の敷地に入れてしまった。

「方向性がないよな。スチームパンクかと思えばサイバー、近未来、アニマルメカからいきなりファンタジーだぞ」

「一貫して金属を扱ってはいやすが、確かに遡り過ぎている気はしやすね」

 全身鎧の兵隊達が立ち並んでいるが、攻撃をしてくる気配はないので、そのまま場内へ入る。

 金属の壺や金属で描かれた絵画、石の質感ではあるが壁もよくよく見れば金属である事が見てとれる。

 だだっ広い城を隈なく探し、城がゴーレムに変身するような事もなく、ちか法を発見したので進むと、階層が切り替わる感覚が襲ってくる。

 ステージは地下牢のままであるが、牢屋の中には金銀財宝が溢れかえっている。

「罠だなー」

「だろうな」

 見て明らかに罠っぽいので放置して奥へ進む。

「なんか安っぽいな……パイライトか?」

「パイライト?」

「愚か者の金、黄鉄鉱って知らないか?」

 ヒョロ兄が牢屋の中から金貨を拾いあげて俺に弾いてくるが。
 確かに色が薄いし、着色したゲーセンのコインみたいな色合いだ。

「これだけ売れば貴金属としてそれなりの価値にはなるが、黄金だと勘違いしていたらガッカリするだろうな」

 黄金は金ピカ鶏から採取できるがリスクが大きいからノータッチにしていたので、これが黄金であったとしても重たい思いをしてまで運ぼうとは思えない。

 もう色々国には嗅ぎつけられているだろうけど、一応の偽装工作はしてるからな。
 あからさまに操作の手立てを与える必要はない。

 牛売ってる方が銭になるってもんだ。

 地下牢の最奥に行くとあからさまな階段があったので降りる。
 階層変換が起こりステージは地下水道へ。

 王族の逃げ道的な演出かな?
 多少凝っているのは認めんでもないが、二十八層であるのに敵が出てこない。

「これガス欠だなー」

「ガス欠?」

「アホな神だー」

 アホな言い方すぎて全くわからん。
 助けてヒョロ兄。

「前半に詰め込み過ぎて力の割り振りが中途半端なまま階層だけ作ってる。存在因子を設定する余力を残さずに無駄に階層伸ばしたと言うか、捨て層を後に回したと言うべきか」

「初見殺しを狙った的な?」

「まさにそれだな。実際一般人なら二層で即死するだろうから、因子は後で集められと考えたんだろう」

 そして地下水路で何もないままに二十九層も過ぎ去り三十層。

 地下水路の最奥で武器防具屋を営んでいるトンガリ耳のツインテ少女がいる。

 栗色の柔らかそうな質感の髪を高い位置でツインテールにして赤リボンで止めてるトンガリ耳。

 幼いながらに成人しているような成熟感もある。
 これぞまさに合法ロリではないか?

「いらっしゃい。ゆっくり見ていっておくれ」

「これゴーレムが作ってたやつ?」

「お、見てきたのかい? そうだよ。ドワーフのオレッちがお墨付きをあげちゃう日緋色金の武器だからね、値は張るけど後悔はさせないよ」

「ドワーフ……だと?!」

 合法ドワーフロリ、俺っち。

 もう、ドロリッチとしか呼べない。

「じゃあ、適当に買って帰りますね。あらどうしよう、お金を持ってきてないわん」

「ここに来るまでにコアとかをかっぱらって来なかったのかい? 金目の物を集めるのがダンジョンってモノだろう」

「そうですよねぇ……本当ねぇ。で、いつまでこの猿芝居やる?」

「はは……ははは、だよねぇ」

 流石の俺でもコイツが髪だってぐらいはわかる。
 ドロリッチさんに感動して暫し悪ノリに付き合ったが、神層は長居する場所では無いと以前に聞いたのでサクサク終わらせる。

「降らなきゃ、ダメかい?」

「一応降しに来てるからな。嫌なら横で今にも爆発しそうなキョウコちゃんにGOサイン出すけど」

「いや、わかった。それなら降るよ」

 コピーで裸体を晒し続ける散々な目にあったキョウコちゃんはフシャーと威嚇しながらに終始飛びかかりそうであるが、三兄が遠くに離してくれている。

「じゃあうちにおいで」

「おう……よろしくな」

 おろ? 聞いた話によれば俺の異力で平山の神様が出てきて降してくれるはずだが、何の問題も無く繋がった感じがする。

 一応俺は二代目に認定されてるから働き手が降すのとはワケが違うのかな?

「じゃあ閉じるけど、アレ、本当なんとかしてね」

「大丈夫だよ。もう君は平山の神の一柱になったんだし」

 威嚇し続けるキョウコちゃんをチラチラ見ながらにドロリッチは鍵をはめ込んだ大きな斧を掲げると視界がグニャグニャになりながらに吸い込まれ、次の瞬間には鉄くず屋に戻る。

「ティーさん! 」

 バールさんを筆頭に荒川初期メンが駆けつけてくれたが、ドロリッチが気まずそうなので肩車をしてあげる。

 斧のせいで重いが【怪力】があるので問題なしである。
 太ももが冷たくて気持ちいいのは内緒。

「じゃあとりあえず帰りましょう。鉄パイプさんの、いや、ナオシさんのお爺ちゃんもいつでも来てくださいね」

 社交辞令で挨拶をしておきながらにも駆け足で車に戻ってガラスに映る自分の姿を確認する。

 初の神層到達で降しもやったんだから多少イケメンになってるだろうと期待して見たが、そこには28年間見続けたいつもの俺がいた。

「解せぬ」

 この後めちゃくちゃ運転した。



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