悪魔の指輪

ノベルバユーザー279470

1話


ーーイタリア・ローマーー

古い教会の地下で事件が起こっていた。

「なんということだ……」

神父の日課は毎日二回地下室を訪れることだ。
それがこの教会の神父の掟でありどんなことよりも大切なことだった。
今日もいつも通り地下室へ訪れると昨日と違うことに気づく。
神父の目に映ったのはドリルのようなもので穴を開けられ破壊された扉だった。
なんだこれは、まずいことになったと心臓がバクバクと激しく鼓動して痛い。
恐る恐る地下室の中へ入ると物が大量に散乱していた。
まるで何かを探したかのような跡だ。

「いかん。早くあれがあるかどうかを確認せねば」

とにかくあれが無事ならば何が盗まれていてもいい。
他の何よりも、それこそ自分の命よりも大事なものがここに封印されていたのだ。
しかしあれがあったはずの場所には何もなかった。
必死に地下室中を探すがあれは見つからない。

「ない……ないぞ……」

神父は目眩を覚えてその場に倒れこんでしまう。
大変なことになった。
そもそもこの教会はあれを封印するために作られ2000年もの間守り続けていた。
それがまさか盗まれてしまうのは……

「とにかくこの事を早く伝えねば……世界が……世界が大変なことになる……」









ーー日本・東京ーー

キーンコーンカーンコーン

起立!  例!  ありがどうございましたー

「よっしゃー!  今日の授業終わったぜぇぇえ!」

授業が終わった途端叫んだ彼の名は中西なかにし春樹はるき、髪は見てると痛くなってきそうなほど明るい金髪、耳にはピアスをつけていて身体中にアクセサリーをジャラジャラつけている。
そして彼の周りには常に取り巻きが付いていた。
いわゆる不良のボス的な存在だ。

「よお!  俊太しゅんたく〜ん!  今月小遣いピンチでさー5000円貸してくんね?」

「え、で、でも昨日だって……」

春樹に話しかけられたのは大場おおば俊太。こちらは春樹と正反対で短めの短髪に分厚いメガネのTHEガリ勉といった風貌だ。

ドガッ

突然大きな音がして周りの注目を集めた。
どうやら春樹が俊太の机を蹴り飛ばしたらしい。

「あ゛ぁ゛?  俊太く〜ん?  俺一瞬耳遠くなっちまったみたいでさ、もう一回言ってくんね?」

「ヒッ!  わかった!  貸す!  貸すよ!  でも今3000円しか持ち合わせが……」

「チッ!」

春樹は舌打ちをしながら俊太から3000円を奪い取る。

「嘘じゃねえだろうな?」

「ほんと!  本当だよ!  嘘じゃない!」

「チッ次はちゃんと用意しとけよ?  おーいカラオケいこーぜ!  ボーリングでもいいぞ!」

相変わらずのクズだ。
これで教師はなんの問題にもしないというのが救いようがない。
春樹は教師に対する態度は非常にいいからである。
春樹の見た目だって問題にはならない。
実はこの学校はかなり勉強ができる進学校だ。
偏差値が高い高校ほど校則は緩い。
だから染髪もピアス、アクセサリーを身につけることだって認められている。
更に春樹は学年で2位という成績の良さを納めている。
教師達は春樹が何をしてようが自分たちに対する態度は良くて今の成績を維持してくれれば何も言わないのである。

全くどいつもこいつもクズばかり、裁かれるべき悪だ。
……と言っても僕にはこの現状を変える力がない。
それを理解してるからこそ傍観しているだけ。
そんな僕も悪なのかもしれない。
春樹は自分より下の人間しか狙わない……と言っても春樹より下の人間なんて学年1位である髙木たかぎ音夜おとや、つまり僕だけだ。

ピーンポーン
ガチャッ

「ただいま母さん」

「あら音夜おかえりなさい」

「父さんは?」

「今日も帰ってこれないらしいわ。何か事件かしらねぇ……物騒だわ」

春樹、教師達も許せない悪だがもっと許せない悪がいる。
僕の父は警察官だ。それも詳しくは教えてくれないがかなり上の方の凶悪犯罪者を捕まえる特殊捜査官らしい。
僕はそんな父を誇りに思っていたし憧れていた。将来は父のような立派な警察官になるという夢を持っていたよ。
これを見るまでは。
父の部屋にあるパソコン、この中身を僕は高1の時に覗いてしまった。
どうしても父の仕事が気になったからだ。
パスワードがかかっていたがハッキングして簡単に破ることができた。
正直警察官のパソコンがこんな簡単に破られてしまってセキュリティは大丈夫なのかと思った。
中身は素晴らしいものだった。
やはり僕が目指す正義の警察官そのものの活躍ぶりだ。
しかし一つ厳重にロックがかけられたファイルがあった。
なんとか中身を見ようと試みたが信じられないほどのセキュリティの固さだ。
だが僕の手にかかれば破れないほどではない。
しかしどうしても越えられない壁にぶち当たった。
最後の仕上げである演算ができないのだ。
僕が今使ってるものなら10年、いや20年はかかってしまう。
スパコンが必要だったがそんなもの持っているはずがない。
諦めようとした時僕は思いついてしまった。
スパコンの仕組みはいくつものコンピュータを繋げて個々の負担を軽くし処理を高速化するものだ。
つまりはそこらじゅうの家のパソコンを繋げてしまえばいいのでは?
そう思い至りすぐに作業に取り掛かった。
だが流石の僕でも難しく必要なだけのパソコンをハッキングするには1ヶ月を要した。
しかしこれでファイルを覗ける。
きっと超極悪で極秘に捜査された犯罪者を父達が捕まえた記録なんだろうなとワクワクしながら開いた。

「なんだよ……これ……」

思わずそう口に出してしまったのを覚えている。
ファイルの中身は正義ではなかった。
政治家の息子が起こした殺人事件、政治家に多額の金を支払って黙認されている臓器売買など……
全てが凶悪犯罪者ではあるが警察が証拠を握りつぶしているといった記録だった。
父は面では凶悪犯罪者を逮捕しつつ裏では政治家と繋がった凶悪犯罪者をもみ消していたのだ。
まさしく悪だ。
絶対に許してはいけない。
だがこの凶悪犯罪者、そして父は法で裁かれることはない。
法では裁けぬ悪達。
何度僕がこの手で殺しに行きたいと思っただろうか。
何度父を殺そうと思っただろうか。
だがそんなことが成功するはずがない。
僕は無力だ。傍観を決め込むしかできないんだ……
この世は酷く醜い世界だ……

「悪魔の指輪」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「現代アクション」の人気作品

コメント

コメントを書く