ダークエルフ姉妹と召喚人間

山鳥心士

輝く星の魂



 「嬢ちゃん達の鍛錬を始める前に、もう一つの神界器デュ・レザムスを見せなきゃなんねぇな」


 「そうっスね〜。約束はちゃんと守らないとダメっスから〜」


 「約束、遵守」


 呑気にストレッチを始めるヴェンデ。イルザはさらっと言ったヴェンデの一言に疑問を抱いた。


 「ちょっと待って。いま、もう一つの神界器デュ・レザムスって言った?」


 「ん?  ああ、言ったと思うが?」


 「つまり、あなたはアウラの神界器デュ・レザムスとコルテの神界器デュ・レザムス、両方扱えるということ?」


 「なんだ知らねぇのか。模擬戦で剣しか使わなかったのは隠すためと思ってたが、とんだ勘違いしちまったなぁ」


 ハッハッハと大笑いするヴェンデ。また馬鹿にされているみたいで怒りが込み上げてきそうだが、グッと堪えて冷静になる努力をする。


 「まぁ見てな!  もう一つの神界器デュ・レザムス、"天道の陽銃ヘリオス"だッ!」


 ヴェンデの両手にとぐろを巻く様に白と黒の光がL字を形作る。現れたのは両手に一つずつ、白と黒の回転式拳銃リボルバーが現れた。


 銃という存在は物語の中でしか登場しない架空兵器という認識のイルザとエルザは本物を目の当たりにして二丁の銃に注視する。


 「これが、コルテの神界器デュ・レザムス。銃なんてフィクションだと思っていたけど、実在していたことに驚きだわ」


 「実際の所この世に銃は出回ってねぇしな。嬢ちゃん達が物珍しそうに見るのもわかる。ただこいつはアウラの鎧と違ってちょいと面倒でな・・・」


 銃をくるくると回転させたり、ジャグリングのように遊びながら説明を続ける。グレンはその動作に釘付けで話を聞いていなさそうだった。


 「こいつを武器として扱うには、この回転する部分に込める弾丸が必要でな。幸いにもコルテの元主、まぁ訳あってその辺は省略するが、そいつが作った分しか撃てないってぇいうデメリットがあるわけだ」


 二丁の銃を空中に放り出し、粒子となり消えていく。


 「・・・どうしてデメリットを教えるの?  約束は見せるだけで果たせる」


 エルザの質問は極々当たり前のことだ。神界器デュ・レザムスを狙う可能性がある者に対して手の内を見せるのは自殺行為である。


 「あ?  嬢ちゃん達は神界器デュ・レザムスを奪う気更々無ぇ癖になぁに言ってんだ」


 ヴェンデの言うとおり、イルザ達にその意思はない。その事すらも見抜かれていた。


 「安心するっスよ〜。ボク達は神界器デュ・レザムスにはそれほど興味は無いっスから。まぁ、神蝕しんしょくされそうな場合は除くっスけど」


 「それにだ、別に手の内は神界器デュ・レザムスだけじゃねぇぜ?」


 にやりと笑みを浮かべるヴェンデ。"躍進する者エボブラー"、ヴェンデは能力を持っている、イルザはそう確信した。


 「その様子だと能力の存在を知ってるみてぇだな。なら話は早い。嬢ちゃんら四人には能力を取得してもらう、それが鍛錬だ」


 「いやいやいや、魔術が使えるイルザとエルザはともかく、俺とスミレは魔術が一切使えないんだぜ?  確か"躍進する者エボブラー"の前提条件は全属性の魔術を極めることだから人間の俺達には難しいんじゃあないか?」


 グレンの言う通り魔力の存在は感知できても、魔術として魔力を扱うことはできない。スミレもそれを肯定するように後ろで首を縦にふる。


 「それも問題無いっスよ〜。ボクとコルテも能力を取得してるっス」


 「前提、表面。事実、裏面」


 「・・・つまり、正規でない方法で能力を得ることができるということ?」


 「そういうことっス!  あんまり知られていない方法なもんで、他言無用でよろしくっスよ〜」


 エルザはイルザを見る。今まで努力してきた時間が全て無駄になってしまう、そんな虚無感。それに、裏技とかの類の大概は何かとリスクがついてまわるのが相場である。ヴェンデの鍛錬を受けるかどうか、判断をイルザに求める。


 「どうだ?  やるか?  やらないか?」


 ヴェンデの最後の問い。


 目の前の圧倒的な力を持つ鬼。


 種族の差を抜きにしても今のイルザには到底敵わない。そんな大きな穴を埋める大きなチャンスは二度と来ないだろう。


 確かな意思を込めて、声を出す。


 「やるわ。今のままでは何も守れない、強くなりたいの」


 「いいねぇ。輝く星のような魂、嬢ちゃんにはそれがある。確実に強くしてやるよ。そうと決まりゃ四人とも俺に背中を向けて座りな、鍛錬第一段階だ」


 言われるがままイルザ達は横一列に背を向けて地面に座る。


 「今から俺の魔力を体内に流していく。一日馴染むまで耐えろ」


 「それだけでいいのか?  なんかこう、どんパチやるもんかと思ったぜ」


 拍子抜けしたようにグレンが体をゆらゆら動かす。


 「魔力をある程度扱える魔族は苦しくねぇが、魔力を扱えねぇ人間はまる一日苦痛に耐える必要があるんだよ。先にダークエルフの嬢ちゃん達からいくぜ」


 ヴェンデは自分の左手で右手首を掴み、イルザの背中に手の平を当て神経を集中する。イルザの背中にヴェンデの魔力が入り込む。全身の血管に電撃が走るようなピリピリとした感覚、イルザ自身の魔力と送られてくるヴェンデの魔力が溶け合い反発を繰り返し、やがて静まり返る。


 ほんの数秒の出来事だったがイルザの全身は息が乱れ、汗でびっしょりになっていた。


 「上手くいったな、次いくぞ」


 続いてエルザ。


 「・・・ッッ」


 イルザと同じように苦悶の表情を浮かべる。そして、数秒。


 「さすがダークエルフ。注ぎ込む魔力量がえげつねぇ・・・。さて、残りのお二人さんだが確実に寝込むから絶対安静だ」


 「ボクとコルテの時もまる一日寝込んだっス。二度とやるもんかって夢の中で誓ったっスよ〜」


 「二度と、御免」


 同じ人間であるアウラとコルテは思い出すと同時に青ざめている。


 「そんなにキツイのか・・・?」


 「ちょっとこわい・・です」


 そんな二人の様子を見て、グレンとスミレは連鎖するように青ざめていく。


 「おいバカ、怯えさせんじゃねぇよ。お前ら人間は魔力を生成する器官がねぇんだ、それを無理やり俺の魔力で作り出し、魔族同様に扱えるようする所から始めなきゃなんねぇ。裏技の代償って考えりゃ安いもんだ。それともやめるか?」


 「いや、覚悟は出来ている。やってくれ」


 「私もです。お願いしますです」


 ふっ、と笑みを零すヴェンデ。イルザ同様に強い意志を感じ取った。グレンの背中に手を当てて、大きく呼吸をする。


 「いくぞ」





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